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はじめての一人旅(復路編)
往路があれば復路もある。この復路は往路よりも過酷なものとなった。
往路編はこちらから💁🏻♀️
新幹線のホームに祖母と到着した私は、祖母と従姉妹との楽しい日々が終わってしまう実感を大いに受けていた。
そして私が乗り込む新幹線の停車時間は短く、祖母との別れの時間は本当に短いものだった。窓から、祖母の姿をずっと見ていたのを今でも覚えている。
さて、今回もこの旅のキーとなる人物、お隣の席の方を紹介しよう。
これがなんと、驚くことに、
小娘より少し大きいぐらいの男の子だったのである。おそらく小学校中学年ぐらいの子。
つまり隣同士2人とも若干10歳の子供な訳である。これは安心できない。今回は行きの時のような周りからの温かい言葉も何もない。もう出発早々不安で仕方がなかったのである。
さて、小娘は行きの子連れの女性とのお話が楽しかった記憶から、男の子に話しかけようかずっと迷っていた。だが人見知りの小娘は、なかなか声をかけられずにいた。そして先に言ってしまうと、小娘はこの男の子と一言も会話をせずに、東京駅に到着してしまうのである。
なぜなら、私が話しかけようとチラチラと視線を送るも、全く私の合図に気づかなかったのだ。それもそのはず、彼も不安と戦っていたのだ。頼れる大人でなく、よりにもよって自分よりも歳下の小娘が隣の席だ。不安でいっぱいのはずだ。
お互いの緊張感は高まり、ついに男の子が不安に耐えられなくなってしまった。
そう、彼が泣きはじめてしまったのだ。
それを悟った歳下の小娘、最初は吃驚のあまり、あわあわしてしまった。ティッシュを渡したらいいのだろうか?それともお菓子?どうしたら、元気になってくれるだろうと、我ながらぐるぐると考えた。しかし、彼の涙にそそられるように不安が押し寄せ、余計何もできなくなってしまった…
すると鼻をすすりながら、男の子が徐ろにリュックサックからモノを取り出し始めた。あ、良かった、気を紛らせるものを持ってきているだなと思う小娘をよそに、彼が取り出すものに私は唖然としてしまった。
彼が取り出したのは…
ペン、メモ帳、筆箱…文房具をやたらと出し始めるではないか。そしてその文房具、全てがターミネーターグッズだったのである。
え?どういうこと?
彼は特に何をする訳でもなく、泣きながら、強面なシュワルツネッガーをただ眺めているのである。それを理解に追いつけずに眺める小娘。なんともシュールな光景だ。
彼は東京駅までシュワルツネッガーと睨めっこをしていた。私は自分が不安な時にシュワちゃんの顔を見ても、これっぽっちも癒されない(シュワちゃんごめん😂)。彼はあれを精神安定剤にしていたのだろうか?
そんなこんなで無事東京駅に到着して、私たちはそれぞれ両親の待つ場所へ走っていった。
その後、小娘は両親の顔を見た瞬間に安堵が訪れ、ホームで号泣するのである。
泣きじゃくる小娘と、必死になだめる母親。
二人で、新幹線の顔の前で撮った写真は今でも、家に残っている。そして、この物語は、夏の自由研究として、原稿用紙に出発から到着までの出来事を書き、提出した。きっとだから今この年齢になっても鮮明に覚えているのだろう。
こうして小娘の小学2年生の夏は終わった。
たくさんの人から見守られ、応援され、私の今がある。この時代に生まれ育って、本当に良かった。将来もし自分に子どもができたら、同じような経験をさせてあげたい。それまで、どうか平和で愛に満ち溢れた世界でありますように。
写真は最近京都の天橋立を見に行ったときのもの。残雪の白と海の青がよく映えた一枚。