見出し画像

クセ強めのアマチュア野球観戦記【第1号】〜2024秋明治大学✕早稲田大学〜必殺「宗山シフト」で早稲田が先勝

東京六大学2024年秋季リーグ戦は、明治大学と早稲田大学が共に勝ち点3
で並び、直接対決を迎えることになった。当日は球場に行く前に、築地のOでチャーシューエッグ定食を食べる計画を立てていたが、1600円という値段に怯み、幸軒のチャーシュー・シウマイ合い盛り定食1100円に変更。隣のオジサンが注文したチャーシュー麺にも惹かれたが、これはこれで大満足。シュウマイやチャーシューはしっかり絶妙に味付けされており、ご飯も進む。店内の飾らない雰囲気もよい。腹も膨れ、いざ観戦と銀座線に乗り込み外苑前に向かう。

試合開始前。両校応援席はほぼ満員に膨れ上がっている。明治大学応援席からは「絶対勝つぞ」の大合唱、この試合に対する意気込みが伝わってくる。明治大学のグレー地のユニフォームを見るのは今日が初めてだが、引き締まった雰囲気でよいと思う。法政大学でも似合いそうである。

いよいよ試合開始。早稲田の先発はエースの伊藤、140~145キロのストレートにカーブやスライダーを混ぜ、的を絞らせない安定感のある投球を続ける。特に、追い込んでから左打者への内角に決まるストレートは凄みを感じさせた。
対する明治先発の藤江はゆったりしたモーションから、打者に「向かってくる」ようなボールだが、制球がばらつき、調子は良くないように感じた。2回裏、大阪桐蔭対決となった前田にヒットを許すと、この回5安打(いずれも単打)を集中され3点を失いマウンドを降りた。4年生最後のシーズンで11番を背負う藤江としては、この試合に懸ける気持ちが先行し、力が入ったのかもしれない。

早稲田の前田はこの後も打ち続け、気が付けば4安打を放っていた。同大OBの元ヤクルトスワローズ武内を彷彿させるフォームで、右に左に打ち分け、見事なバットコントロールを披露していた。その体格からパワーヒッターを連想させるが、しっかりした技術も兼ね備えている印象を受けた。
地味ではあるが、早稲田の下位打線小澤〜梅村〜石郷岡の進塁打の徹底や粘り強さが光っていたのに対し、明治の下位打線はやや淡白だったような気がした。(伊藤が付け入るスキを与えなかったとも言えるが…)

伊藤の前に1点を返すのがやっとの明治であったが、千葉〜山田〜菱川と投手に打順が回る度に継投して、早稲田に追加点を与えずに凌いだ。4人目の菱川(花巻東)は上から投げ下ろす150キロ超のストレートで押し込み、変化球の切れも良く、今日の明大投手陣の中では一番良かったのではないかと思われた。まだ3年生なので、来年が楽しみである。

注目のドラフト候補の宗山だが、この日は4打数無安打に終わった。うち一打席は完璧に捉えた打球だったが、二塁手梅村の好捕に遭いヒットにはならなかった。どうも宗山の打席だけ、ショートとセカンドがそれぞれ二塁ベース・一塁ベース寄りに守備位置を変え、その通りに打球が来るという「研究の成果」とも思えるような現象が見られた。シフトだけではなく、そのコースに投げ切る投手のコントロールも必要なので、早稲田のハイレベルな技術には思わず息をのんだ。宗山のみならず、明治打線全体をも困惑させる効果もあったと思う。

宗山は打撃ではいいところがなかったが、守備では安定感を見せ、特に「早くて正確な送球」が光っていた。併殺に絡む場面が複数あったが、一塁はセーフかというタイミングでもアウトにしていた。チームにとってはこのうえなく心強いし、よいムードに変える力がある。4回裏明治は、無死一塁で前進守備を見て強硬策に出た早稲田石郷岡の一塁線の打球をファースト杉崎がジャンプして気合の捕球、体制が悪く山なりの二塁送球となったが、ショート宗山が流れるような捕球と早い送球で併殺を完成させた。これが呼び水となって5回表の1点に繋がったと思っている。

それにしても、明治打線が全く伊藤を打てる気がしないまま回は進んでいった。

8回裏になり、漸く流れが変わりそうなプレーが生まれた。明治のファースト杉崎が小沢の放ったライナーを横っ飛びで好捕、併殺で早稲田の攻撃を終わらせた。9回表はその杉崎から明治の攻撃が始まった。杉崎、小島の連続ヒットで明治応援席のボルテージは最高潮となり、応援曲「狙い撃ち」が場内に響き渡った。このまま同点はおろか逆転してしまいそうな雰囲気ですらあった。9回から伊藤に代わり登板した早稲田2番手の田和にとっては酷な場面となった。続くバッター木本の初球にワイルドピッチで1点を献上してしまうが、意地を見せ木本を三振に打ち取った。明らかに明治打線が活気づいていただけに、この一死は大きかった。早稲田の田和はその長身から速球派を連想したが、独特のスリークオーターから動くボールを操る粘り強い投手だった。

その後の結末はネットニュースにも書かれていたように、早稲田のショート山縣が一塁から転送されたボールを絶妙な判断で三塁ランナーを封殺し、3対2で早稲田に軍配が上がった。両校の戦力は互角に見えたが、学生らしく真正面から勝負を挑んだ明治に対し、技術や工夫で対抗した早稲田がわずかに上回った。非常に見ごたえのある勝負であった。それにしても、「宗山シフト」はこの日が初だったのか、以前から取られていたのか、気にならずにはいられなかった。


いいなと思ったら応援しよう!