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バイオ医薬品のCDMO

皆様こんばんは。今日はバイオ医薬品のCDMOに関する話題です。何故、このトピックを取り上げたかというと、8月に入って今日まで、日経バイオテクにすでにCDMOに関する記事が4報も掲載されているからです。

CDMOとは

それで、まずはCDMOとは何か?ですが、正式名称は「Contract Development and Manufacturing Organization」です。製薬企業やバイオ系のスタートアップ企業などから委託されて、これらの企業の代わりに医薬品の製造を行い、完成した医薬品を委託元の製薬企業やスタートアップ企業に納品してその対価を得ることをビジネスとしている企業を指します。この際、製造のみでなく、製造方法の開発まで請け負うこともあるのでmanufacturingのみでなく、developmentも記載されています。

特に抗体医薬品や遺伝子・細胞治療製品は製造工程が複雑ですから、製薬企業やスタートアップ企業は実験室の規模で薬を調製してその有効性を検証することは出来ても、さらなる臨床試験や商用生産に必要な大量の医薬品を製造する能力を持つとは限りません。製造や製造方法の開発に長けているCDMOに委託してしまった方が効率的と考えられる場合が多々あります。

激動の時代を迎えているCDMO

そのCDMOですが、下記の記事によると激動の時代を迎えていると言うのです。特に中国や韓国のCDMOの成長が著しい。CDMOの需要が世界的に拡大しているのは、創薬と製造の分業が浸透してきたこと、また抗体医薬品のみでなく、遺伝子治療、細胞治療、mRNA医薬品、核酸医薬品など新しいモダリティの開発が盛んになり、それに伴いM&Aが活発に行われて、大手のCDMOがそれまで対応出来ていなかった新しいモダリティを得意とする他のCDMOを買収するケースが目立つと言います。

AGCや富士フイルムは海外のCDMOを買収し、グローバルに事業展開を行なっています。ただ、この2社以外の国内のCDMOは、特に抗体医薬品の領域ではあまり育っていなかったようです(カルティべクスや癸巳化成による巻き返しを個人的には期待しています)。日本の特徴は、細胞医薬に特化したCDMOが多いところです。やはりiPS細胞の発明が日本における再生医療ビジネスの火付け役になったからだと思われます。

さらにこの記事では海外の10社のCDMO、国内の19社のCDMOについて、それぞれどのモダリティに対応できるのか、詳細な調査が行われ、リスト化されています。モダリティを具体的に述べると、抗体医薬、抗体薬物複合体(ADC)、多重特異性抗体、蛋白質医薬、プラスミドDNA、AAVベクター、レンチ・レトロウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルス、ex vivo遺伝子治療、多能性幹細胞由来分化細胞、mRNA医薬(原薬)、脂質ナノ粒子(LNP)、ペプチド医薬、アンチセンス薬、siRNA薬です。非常に貴重な情報です。

バイオリアクターが足りない

さらに読み続けると興味深いことが書いてありました。現在、世界中の製薬企業とCDMOのバイオリアクターの容量を合計すると800万リットルと推定されていますが、抗体医薬の市場が順調に成長すると、バイオリアクターの供給が間に合わなくなるというのです。例えば韓国のSumsung Biologicsは、2023年に新しいプラントを稼働させましたが、このプラントのバイオリアクターの総容量は24万リットルだそうです。さらに2025年にも新しい別のプラントを新設する計画で、そのプラントの総容量は18万リットルだそうです。バイオリアクターを製造・販売している業者にとっては大きな追い風になっているようです。

その他のトピックス

その他のトピックスとしては連続生産技術があげられます。これは抗体を産生するためにCHO細胞を培養する工程と、産生された抗体を精製する工程が連続的に一気通貫でなされる製造方法です。連続生産のメリットの一つに、設備が比較的小型で済むという点が挙げられます。日本でも、スタートアップCDMOのRenzoku Biologicsが2023年に設立されました。

2つ目のトピックとしては、ADC専用の製造施設についてです。ここ数年、ADCの開発パイプラインは勢いよく増えているので、この流れは必然的と思われますが、特に中国のWuXi Biologicsや韓国のSumsung Biologicsの動きが目立つようです。

そして最後は人材不足についてです。市場の大きな抗体医薬のCDMOビジネスは日本は海外に比べて遅れてしまっています。ここで海外イコール欧米であればいつものパターンのような気がしますが、ことバイオ医薬品の製造の観点では、欧米のみではなく、中国、韓国、インドなどアジアの国々と比べて大きく遅れています。そのため、国のプロジェクトの支援を受けて製造施設の建設が進んでいます。しかし、機械を動かすことができる人材は不足しているとのことです。次なる課題はその施設の中で活躍できる人材をどう育成するかだと思われます。この課題に日本がどう立ち向かうのか注視して行きたいと思っています。


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