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気候変動と環境危機 Vol. 005 【転換点とフィードバックループ】

皆さま、こんばんは。
『気候変動と環境危機』というあのグレタさん編著の書籍を読み続けています。
今日は、1部の8章 転換点とフィードバックループについて読んだので、要点をまとめてみました。著者はヨハン・ロックストローム氏で、ポツダム気候影響研究所所長で、ポツダム大学の教授です。なお、要点をまとめる際にはChatGPTを利用しています。

まず、タイトルにもある転換点とフィードバックループを気候変動の観点から述べると以下のようになります。

気候変動における転換点

気候変動の問題における「転換点(tipping point)」とは、気候システムの中である臨界値を超えると、その後急速かつ不可逆的な変化が起こるポイントを指します。これらの転換点は、気候の安定性が失われ、一度発動すると元に戻すことが非常に難しい、あるいは不可能な変化を引き起こすため、気候変動の中で特に注目されるリスク要因です。

### 転換点の主な特徴

1. **臨界値の存在**
  - 転換点には、気候システムが現在の状態から急激に変化するための「しきい値」が存在します。このしきい値を超えると、システムはもはや元の状態には戻らず、新たな安定状態に向かって急速に変化します。

2. **不可逆的な変化**
  - 転換点が発動すると、その変化は不可逆的で、たとえ温室効果ガスの排出を減らしても、元の状態に戻すことが困難です。たとえば、氷床の融解が進行すると、冷却しても氷は元の規模には戻らない可能性があります。

3. **加速度的な影響**
  - 転換点の変化は徐々に進行するのではなく、一度しきい値を超えると急速に進み、広範囲にわたる影響をもたらします。これにより、地域的な気候や生態系が大きく変わるだけでなく、地球規模での気候システム全体に影響を及ぼすこともあります。

### 主な気候の転換点の例

1. **グリーンランド氷床の融解**
  - グリーンランドの氷床が急速に融解すると、海面が大幅に上昇し、沿岸地域への洪水リスクが増大します。

2. **大西洋熱塩循環(AMOC)の弱体化**
  - 大西洋の海洋循環が弱体化すると、ヨーロッパの気候が急激に冷え込み、地域的な気候パターンが大きく変化する可能性があります。

3. **アマゾン熱帯雨林の枯渇**
  - アマゾンの熱帯雨林が大規模に失われると、炭素吸収能力が低下し、さらなる温暖化を促進するだけでなく、地域の降水パターンにも悪影響を及ぼします。

4. **永久凍土の融解**
  - 永久凍土の融解により、メタンや二酸化炭素などの強力な温室効果ガスが大量に放出され、温暖化がさらに加速します。

5. **北極海の海氷の消失**
  - 北極海の海氷が消失すると、地球の反射率が低下し、太陽の熱が海水に吸収されやすくなり、温暖化が加速します。

6. **サンゴ礁の白化**
  - 温暖化により海水温が上昇すると、サンゴ礁が白化し、死滅するリスクが高まります。これが海洋生態系に深刻な影響を与えます。

### 転換点の重要性

- **予防の難しさ**: 転換点は、しきい値を超えた後で気づくことが多く、事前に発動を予測して防ぐのが困難です。そのため、しきい値に近づかないよう、予防的な対策が求められます。
- **連鎖反応のリスク**: 一つの転換点が発動すると、それが他の転換点を引き起こす連鎖反応が起こるリスクがあります。このため、単一の変化ではなく、複数の転換点が相互に作用し、地球全体の気候が急変する可能性があるのです。
- **持続可能性への影響**: 転換点の発動は、人類の社会・経済システムにも大きな影響を及ぼし、持続可能な発展を妨げる要因となります。

### まとめ

気候の転換点は、地球の気候システムの安定性を脅かす重大なリスクを示しており、これを防ぐためには、温室効果ガスの排出削減をはじめとする緊急かつ包括的な対策が求められています。気候変動を抑制し、転換点に到達しないような行動が、未来の環境を守る鍵となります。

気候変動におけるフィードバックループ

気候変動における「フィードバックループ(feedback loop)」とは、気候システムの中で発生する自己増強的なプロセスを指し、一度始まるとその効果がさらに強まり、気候変動を加速させる現象です。フィードバックループは、正のフィードバック(自己増強)と負のフィードバック(自己抑制)に分けられますが、気候変動の文脈では、主に気候をさらに不安定化させる正のフィードバックが問題視されています。

### フィードバックループのメカニズム

1. **正のフィードバック(自己増強)**
  - 正のフィードバックとは、気候変動がある要因を強化し、その結果がさらに気候変動を加速させるループを形成することです。これにより、温暖化が進むほどその影響が大きくなり、制御が難しくなります。

2. **負のフィードバック(自己抑制)**
  - 負のフィードバックとは、気候変動の進行がシステム内で抑制されるプロセスです。例えば、温暖化が進むと植物の成長が促進され、二酸化炭素を吸収する量が増えることで温暖化を一部抑える効果が見られることがあります。

### 気候変動における主な正のフィードバックループ

1. **北極海の海氷の融解**
  - 温暖化によって北極海の海氷が溶けると、白い氷が減少し、暗い海水が露出します。氷は太陽光を反射していたため、海水が露出すると太陽光の吸収が増え、さらに温暖化が進みます。これが「氷–アルベドフィードバック」と呼ばれる現象です。

2. **永久凍土の融解**
  - 温暖化により永久凍土が融けると、凍結していた有機物が分解され、メタンや二酸化炭素が大気中に放出されます。これらの温室効果ガスは地球の温暖化をさらに進め、さらなる永久凍土の融解を引き起こします。

3. **森林火災の増加**
  - 気温が上昇すると乾燥した森林で火災が増えます。火災は大量の二酸化炭素を放出し、さらに温暖化を促進します。火災で失われた森林が炭素吸収源としての役割を果たせなくなるため、このフィードバックは温暖化を強化します。

4. **氷床の融解**
  - グリーンランドや南極の氷床が融解すると、海水面が上昇し、氷床の下の温かい海水との接触面が増え、さらに氷の融解が加速します。これにより海面上昇が進み、気候変動の影響が増大します。

5. **海洋の温暖化と炭素吸収の低下**
  - 海洋が温暖化すると、その炭素吸収能力が低下し、大気中の二酸化炭素濃度が上昇します。これがさらに温暖化を加速させるフィードバックを形成します。

### フィードバックループの重要性とリスク

- **気候の不安定化**: フィードバックループは、温暖化の進行を加速させるため、気候システムが予測よりも急激に変化する可能性があります。
- **制御の難しさ**: 一度始まるとフィードバックループを止めるのは非常に難しく、転換点に達すると急速な変化を引き起こすリスクがあります。
- **長期的な影響**: これらのフィードバックが働くと、短期間での対策だけでは不十分であり、長期的な温暖化の影響が避けられなくなる可能性があります。

### まとめ

フィードバックループは気候変動の複雑さと危険性を象徴する現象であり、温暖化を加速させるメカニズムとして重要視されています。このループを抑制するためには、温室効果ガスの削減や森林保護などの取り組みを強化し、気候システムの安定性を維持することが求められます。

次に人新世という言葉が出てきます。これは地質の年代の意味合いで使われています。

人新世(ひとしんせい、Anthropocene)」とは、地質学的な年代区分の一つとして提案されている用語で、人間の活動が地球の気候や生態系に顕著な影響を与え、地質学的に新たな時代が始まったと考えられる時期を指します。この概念は正式に地質年代として認定されてはいませんが、科学者や研究者の間で広く議論されています。

### 人新世の概要

1. **人新世の起源と定義**
  - 人新世は、人類の活動が地球環境に大きな変化をもたらし、その影響が地質学的な記録として残るほどの規模に達した時期を指します。産業革命(18世紀後半)以降の急速な経済成長、都市化、資源の消費、環境汚染などがその始まりとされることが多いですが、起源については諸説あり、核実験が頻繁に行われた1940年代から1950年代を開始点とする意見もあります。

2. **主な特徴**
  - **大気中の二酸化炭素濃度の急増**: 化石燃料の大量消費によって温室効果ガスが増加し、地球の気温が上昇しています。
  - **生物多様性の喪失**: 人間の活動による森林伐採、農業の拡大、乱獲などが生態系に大きな影響を与え、多くの動植物種が絶滅の危機に瀕しています。
  - **地球表面の改変**: 土地の開発や都市化によって、地表の自然状態が劇的に変化しました。これには、ダム建設による河川の変化や、鉱山採掘による地形の改変なども含まれます。
  - **プラスチックや放射性物質の堆積**: プラスチックごみや核実験による放射性降下物は、地層に残る人新世の特徴的な痕跡とされています。
  - **海洋の酸性化**: 二酸化炭素の吸収により、海洋が酸性化し、サンゴ礁や貝類に悪影響を及ぼしています。

3. **人新世の認定に向けた議論**
  - 正式に地質学的な年代として「人新世」を認定するには、明確な地層の証拠が必要です。国際地質科学連合(IUGS)によってその認定が進められていますが、まだ決定には至っていません。しかし、プラスチックやコンクリート、人工放射性物質などの人為的な痕跡が地層に明瞭に残るため、多くの科学者が人新世の概念を支持しています。

4. **人新世の意義**
  - 人新世は、単なる地質学的な区分にとどまらず、環境問題に対する人類の影響を強調する概念として社会的にも注目されています。気候変動、生物多様性の危機、持続可能な発展の必要性を考える上で、重要なフレームワークとなっています。

### まとめ

人新世は、人間活動が地球規模で環境に与える影響を反映した時代の概念です。この時代を正式に認定するかどうかは今後の科学的議論に委ねられますが、人新世という考え方は、私たちが地球の未来に対してどのように責任を持ち、行動するべきかを問いかける重要な視点を提供しています。


次は、グレート・アクセラレーションという言葉です。これは何を示すのでしょうか。

グレート・アクセラレーション(Great Acceleration)」とは、第二次世界大戦後の20世紀半ばから現在にかけて、地球上の人間活動が急速に増大し、それに伴って環境や社会に劇的な変化が生じた現象を指す言葉です。この現象は特に1950年代から急激に加速し、人類の経済活動、技術の進歩、人口増加、資源の消費、環境への影響などが著しく拡大したことを指しています

### グレート・アクセラレーションの主な特徴

1. **経済成長の急速な拡大**  
  世界経済は戦後の復興と技術革新によって急速に成長し、特に工業生産、エネルギー消費、輸送、通信などが飛躍的に発展しました。これにより、生活水準は向上しましたが、同時に環境への負荷も急増しました。

2. **人口の急増**  
  1950年代以降、世界人口は劇的に増加し、数十億人規模で増加しました。この人口爆発は、食料生産、都市化、土地開発などの圧力をもたらし、自然環境の変化を加速させました。

3. **技術と消費社会の拡大**  
  科学技術の進歩により、消費社会が形成され、人々の生活はより便利になりましたが、それに伴う資源の消費と廃棄物の増加が環境問題を引き起こしました。

4. **環境への影響の拡大**  
  大気中の二酸化炭素濃度の急増、海洋の酸性化、森林破壊、生物多様性の喪失など、環境への悪影響が顕著になりました。特に気候変動は、グレート・アクセラレーションの象徴的な課題です。

5. **都市化の進行**  
  都市への人口集中が進み、都市部でのエネルギー消費や廃棄物の問題が拡大しました。これにより、都市の環境問題も深刻化しています。

6. **グローバル化**  
  経済や文化が世界的に結びつき、国際的な貿易や通信が急速に発展しましたが、これもまた環境や資源への負担を増大させる要因となっています。

### グレート・アクセラレーションの影響

- **環境の変化**: 自然環境への圧力が増大し、気候変動、資源枯渇、生態系の崩壊などが深刻な問題となっています。
- **社会的影響**: 貧富の格差や資源の不平等な分配も拡大し、社会的な不安定要因となっています。
- **持続可能性の課題**: 現在の経済・社会システムが地球の持続可能性にどのように影響するかが問われており、持続可能な発展のための新たなモデルが必要とされています。

グレート・アクセラレーションは、人間活動が地球全体に及ぼす影響を理解するための重要な概念であり、持続可能な未来を築くための課題を示しています。

本文を読み進めていくと、「2008年に特定された気候に転換をもたらす要素」というフレーズが出てきます。これをはっきり理解したいのでChat GPTに聞いてみました。

2008年に特定された「気候に転換をもたらす要素(tipping elements)」は、地球の気候システムにおいてある閾値(しきい値)を超えると急激かつ不可逆的な変化を引き起こす可能性のある重要な要素を指します。これらの要素は、ある程度の変化までは緩やかであっても、その変化が一定のポイントを超えると、気候全体に大きな影響を及ぼす「転換点(tipping point)」に達することがあります。これらの要素は、2008年に科学者たちによって気候システムにおける重大なリスク要因として特定されました。

### 主な気候に転換をもたらす要素

1. **グリーンランド氷床の融解**
  - グリーンランド氷床が溶け続けると、海面上昇が加速し、気候システム全体に深刻な影響を与える可能性があります。

2. **西南極氷床の不安定化**
  - 西南極氷床の崩壊は、世界の海面を大幅に上昇させ、沿岸部の洪水リスクを高めます。

3. **北極海の海氷の消失**
  - 北極海の夏季の海氷が消失すると、地球全体の気候に影響を与えるだけでなく、海洋の熱吸収を増加させることでさらなる温暖化を引き起こします。

4. **アマゾン熱帯雨林の枯渇**
  - アマゾンの熱帯雨林が失われると、炭素の吸収源が失われるだけでなく、地域の降水パターンにも大きな影響を及ぼし、さらなる干ばつや火災リスクが増大します。

5. **サハラとサヘル地域の植生の変化**
  - サハラ砂漠の拡大やサヘル地域の乾燥化は、地元の生態系と住民の生活に重大な影響を与え、移民の増加を引き起こす可能性があります。

6. **大西洋熱塩循環の弱体化(AMOC)**
  - 大西洋熱塩循環(特に北大西洋の暖流であるメキシコ湾流)の減速は、ヨーロッパの気候に重大な影響を与え、地域的な冷却や異常気象を引き起こす恐れがあります。

7. **ペルマフロストの融解**
  - 永久凍土が溶けると、大量のメタンや二酸化炭素が放出され、地球温暖化をさらに加速させる「炭素の爆弾」となるリスクがあります。

8. **インドモンスーンの変化**
  - インドのモンスーンパターンの変化は、農業と水資源に大きな影響を及ぼし、食料安全保障に深刻な問題を引き起こす可能性があります。

9. **オーストラリアと南東アジアのサンゴ礁の白化**
  - サンゴ礁の白化は生態系に深刻な影響を及ぼし、漁業や沿岸防護にも悪影響をもたらします。

### 影響と重要性

これらの要素は単独でも気候システムに重大な変化をもたらしますが、相互に影響を及ぼし合うことで、さらに大規模で予測不可能な気候変動を引き起こすリスクがあります。科学者たちは、こうした転換点に到達するのを防ぐために、温暖化の抑制や適応策の強化が急務であると警鐘を鳴らしています。

続いて、2019年の報告書というフレーズが出てきますが、これがはっきり分からないので調べてみました。

2019年の報告書は、主に気候変動に関する科学者たちが発表した論文や報告書のことを指し、その中でも特に注目されたのが、**「Climate tipping points — too risky to bet against」**というタイトルの論文です。この論文は、科学誌「Nature」に2019年に掲載され、気候変動の転換点(tipping points)についてのリスクを強く警告したものです。

### 「Climate tipping points — too risky to bet against」の概要

1. **論文の著者**
  - この論文は、ティム・レンツィー(Tim Lenton)をはじめとする複数の気候科学者によって執筆されました。著者たちは、転換点のリスクがかつて考えられていたよりも高いことを主張しています。

2. **主な内容**
  - **気候システムの転換点が近づいている**: 著者たちは、グリーンランド氷床の融解、アマゾン熱帯雨林の枯渇、大西洋熱塩循環(AMOC)の弱体化など、複数の気候システムの転換点がすでに近づいている、または発動しつつあると警告しています。
 
  - **転換点の連鎖的な発動のリスク**: 転換点が単独で発動するだけでなく、連鎖的に発動するリスクがあり、これが気候システムを大規模に不安定化させる可能性があると述べています。例えば、氷床の融解が他の地域の海洋循環に影響を与え、その結果、さらなる温暖化を引き起こすなどの連鎖反応が考えられます。
 
  - **緊急対策の必要性**: 著者たちは、これらの転換点が発動しないようにするため、温室効果ガスの排出削減を含む積極的な気候変動対策が急務であると強調しています。

3. **報告書の影響**
  - この論文は、国際的な気候変動対策の議論に大きな影響を与え、気候システムの不安定化がもたらすリスクを再認識させました。また、各国政府や国際機関が気候変動対策の強化を求める根拠の一つとなり、より強力な行動を促進するための警鐘として機能しました。

4. **学術界と政策へのインパクト**
  - 2019年のこの報告書は、気候変動の理解を深め、政策立案者や一般市民に対して、転換点のリスクがどれほど現実的であるかを認識させる重要な役割を果たしました。その後の気候サミットや環境政策の強化にも影響を与えたとされています。

### まとめ

この報告書は、気候変動の転換点のリスクが高まりつつある現状を訴え、人類が迅速かつ大胆な対策を講じなければならないとする強いメッセージを伝えています。気候システムの安定性を守るための行動の緊急性を示す、極めて重要な報告書の一つです。


続いてIPCCの第6次評価報告書の概要

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(AR6)は、気候変動の現状と将来の影響についての最新の科学的知見をまとめたもので、主に2021年から2022年にかけて公表されました。この報告書は、科学者たちが収集した最新のデータを基に、人類の活動が気候システムに与える影響を包括的に分析し、気候変動への対応策を提示しています。以下は、報告書の主なポイントです。

### 第6次評価報告書の概要

1. **気候システムの現状**
  - 人間活動が気候システムを温暖化させていることは「明白である」と断言しており、現在の温暖化は19世紀後半からの産業革命以降のものであるとしています。
  - 2020年の平均気温は、産業革命前の水準と比較して約1.1℃上昇しており、特に近年の極端な気象現象(熱波、豪雨、干ばつなど)は、人為的な気候変動が主な原因とされています。

2. **将来の気温上昇予測**
  - 現在の排出削減目標を達成しても、21世紀中に温暖化が1.5℃を超える可能性が高いとされています。さらに、各国の政策が強化されない限り、温暖化は2℃以上に達するリスクがあると警告しています。
  - 各種シナリオに基づくと、今後数十年で気候変動の影響はさらに深刻化する見通しであり、緊急かつ大規模な排出削減が求められています

3. **海面上昇と氷床融解**
  - 地球温暖化により、氷床と氷河の融解が進行しており、21世紀末までに海面が大幅に上昇する見込みです。これにより、沿岸地域の洪水リスクが高まり、特に小島嶼国や低地の沿岸都市が脅威にさらされています。

4. **極端気象の頻発化**
  - 極端な気象現象の頻度と強度が増加しており、熱波、豪雨、干ばつ、暴風雨などがより頻繁に発生すると予測されています。これらの現象は、食料供給、インフラ、水資源、健康に深刻な影響を及ぼします。

5. **気候変動の影響を受けやすい地域**
  - 熱帯や乾燥地帯、北極地域などの気候変動の影響が特に顕著であり、これらの地域では生態系と人々の生活が大きく変わる可能性があります。また、貧困層や社会的に脆弱なコミュニティが最も深刻な影響を受けることが強調されています。

6. **緩和策と適応策の強化**
  - 温暖化を1.5℃以内に抑えるためには、2050年までに世界全体でネットゼロ(排出量実質ゼロ)を達成する必要がありますこれには、再生可能エネルギーの普及、エネルギー効率の改善、森林保護、炭素回収技術の導入などが含まれます。
  - また、適応策(例:防災インフラの整備、農業の気候適応など)の強化も必要とされていますが、適応には限界があり、早期の温暖化抑制が最優先であると指摘しています。

7. **気候変動の不可逆的な影響**
  - いくつかの気候変動の影響はすでに不可逆的であり、今後数世紀または数千年にわたって継続すると報告されています。たとえば、氷床の崩壊や深海の温暖化は長期的に続きます。

### 総括

IPCCの第6次評価報告書は、気候変動の科学的根拠を強化し、その影響の深刻さを改めて強調しています。報告書は、温暖化の進行を抑えるための緊急かつ協調的な行動が必要であると訴えており、各国政府、企業、市民社会の取り組みを強化するための指針となるべきものです。

最後に転換の連鎖反応というフレーズについてです。

「転換の連鎖反応(cascade of tipping points)」とは、気候システム内で一つの転換点が発動すると、それが他の転換点を引き起こし、連鎖的に複数の気候システムが急激かつ不可逆的に変化する現象を指します。この連鎖反応は、気候変動の悪化をさらに加速させる大きなリスクを伴い、気候システム全体が不安定化する恐れがあります。

### 転換の連鎖反応の仕組み

気候システムは複雑に相互作用しており、個々の転換点が影響し合うことで、さらなる転換点を誘発します。以下は、具体的な転換点とその連鎖反応の例です。

1. **グリーンランド氷床の融解**
  - グリーンランド氷床の融解が加速すると、大量の淡水が北大西洋に流れ込みます。これが海洋の塩分濃度を低下させ、**大西洋熱塩循環(AMOC)の弱体化**を引き起こす可能性があります。

2. **大西洋熱塩循環(AMOC)の弱体化**
  - AMOCが弱体化すると、北ヨーロッパの気温が低下し、さらなる気候異常を引き起こします。また、この弱体化はアマゾン熱帯雨林の乾燥化を促進し、**アマゾン熱帯雨林の枯渇**を引き起こす可能性があります。

3. **アマゾン熱帯雨林の枯渇**
  - アマゾン熱帯雨林が大規模に枯渇すると、炭素の吸収源が失われ、大量の二酸化炭素が大気中に放出されます。これがさらに温暖化を促進し、**永久凍土の融解**や**サンゴ礁の白化**などの転換点を引き起こすリスクが高まります。

4. **永久凍土の融解**
  - 永久凍土が融けると、メタンや二酸化炭素といった強力な温室効果ガスが大気中に放出されます。これにより、さらなる温暖化が進行し、他の転換点(例:西南極氷床の不安定化)を促進する可能性があります。

5. **西南極氷床の不安定化**
  - 西南極氷床が崩壊すると、海面が急速に上昇し、沿岸地域の洪水リスクが増大します。これにより、生態系や人々の生活に深刻な影響が及びます。

### 影響とリスク

- **加速的な気候変動**: 一つの転換点の発動が、次々と他の転換点を誘発することで、気候変動が加速するリスクが増大します。これにより、制御不能な温暖化や極端気象の頻発がさらに深刻化します。
 
- **不可逆的な変化**: 転換点が連鎖的に発動すると、元の状態に戻すことがほぼ不可能な変化が地球規模で起こり、生態系、農業、経済など多岐にわたる分野に長期的な悪影響が及びます。

- **社会的・経済的な影響**: 転換の連鎖反応による気候の激変は、食料供給の不安定化、住環境の喪失、移民の増加など、社会的・経済的な課題を引き起こし、各国の安全保障にも影響を与えます。

### まとめ

転換の連鎖反応は、地球の気候システムがひとたび不安定化すると、どれほど深刻な事態になるかを示すものであり、その発動を防ぐためには、温室効果ガスの排出削減と気候変動への適応策が緊急かつ包括的に求められています。科学者たちは、この連鎖反応を阻止するための行動が、気候変動対策の最重要課題であると訴えています。

以上です。かなりのボリュームになりますが、気候変動における転換点やフィードバックループが具体的に自然環境の何にどのように影響するのかが具体的に分かったと思います。すでに、日本では異常な暑さや豪雨として、気候変動の影響を目の当たりにしています。温暖化を1.5度以下の上昇に食い止めようという運動が始まりつつようですが、1.5度の上昇でもかなりリスクがあるのではないかと思います。この点について最後に調べてみました。

たとえ温暖化を1.5度以下に抑えたとしても、気候変動のリスクは依然として高く、深刻な影響が生じる可能性があります。IPCCの第6次評価報告書やその他の科学的研究によると、1.5度の温暖化であっても、気候システムに以下のようなリスクや影響が予測されています。

### 1.5度の温暖化でも高いリスク

1. **極端な気象現象の増加**
  - 1.5度の温暖化でも、熱波、豪雨、干ばつ、暴風雨などの極端な気象現象の発生頻度と強度が増加します。これにより、農業やインフラ、健康へのリスクが高まります。

2. **海面上昇**
  - 1.5度に抑えた場合でも、海面上昇は続きます。これにより、低地の沿岸地域や島嶼国が洪水や浸水のリスクにさらされ、長期的には移住を余儀なくされる可能性があります。

3. **サンゴ礁の白化と死滅**
  - 1.5度の温暖化でも、世界のサンゴ礁の70-90%が白化し、深刻な生態系の損失が予測されています。サンゴ礁は海洋生物の多様性にとって重要な役割を果たしているため、その影響は広範囲に及びます。

4. **生物多様性の喪失**
  - 多くの動植物が1.5度の温暖化に適応できず、絶滅リスクが高まります。特に高山地域や北極など、限られた環境に生息する種が大きな影響を受けます。

5. **北極海の氷の消失**
  - 1.5度に抑えた場合でも、夏の北極海の海氷が完全に消失する可能性があります。これにより、海洋循環が変化し、北極圏の生態系にも甚大な影響が及びます。

6. **食料と水資源への影響**
  - 1.5度の温暖化でも、農業生産性の低下や水資源の不足が発生し、食料安全保障が脅かされるリスクが高まります。特に干ばつが頻発する地域では影響が大きくなります。

7. **健康への影響**
  - 気温上昇に伴い、熱中症や心血管疾患のリスクが増加します。また、感染症の拡大も懸念され、特に熱帯地域ではデング熱やマラリアなどの病気が広がる可能性があります。

8. **経済的損失**
  - 1.5度の温暖化でも経済的損失は避けられず、特に途上国や気候変動に脆弱な地域での被害が甚大になると予測されています。これにより、社会的・経済的不平等がさらに広がるリスクがあります。

### まとめ

1.5度の温暖化は、より深刻な2度やそれ以上の温暖化と比べてリスクが低減されるための重要な目標ですが、それでも多くのリスクが残ることは明らかです。したがって、1.5度に抑えるための行動は極めて重要ですが、それと並行して、適応策の強化やコミュニティのレジリエンス向上も急務です。

温暖化を1.5度に抑えることは、被害を最小限に抑えるための最低限の目標であり、それでもなお環境・社会・経済への深刻な影響があるため、これ以上の温暖化を避けるための努力が求められています。


以上です。

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