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気候変動と環境危機 Vol. 007 大気汚染とエアロゾル

グレタさん編著の『気候変動と環境危機』の第2部の4章は、「大気汚染とエアロゾル」がテーマです。著者はビヨルン・H・サムセット氏、CICERO国際機構研究センターの上級研究員でIPCC報告書の筆頭著者です。

エアロゾルが大気汚染に与える影響は想像つくと思いますが、気候変動にも影響を与えるようです。以下はそのまとめになります。

エアロゾルとは?

エアロゾルは、気候変動に対して複雑な影響を与える微小な固体や液体の粒子で、大気中に浮遊しています。これらの粒子は自然由来のもの(火山噴火、海塩、砂塵など)と人為的なもの(工場の排出ガス、車の排気、農業など)があります。エアロゾルが地球の気候に与える影響は、主に2つのメカニズムを通じて起こります。

エアロゾルが気候変動に与える直接的な影響

エアロゾルは太陽光を吸収したり、反射したりします。これにより地表への放射エネルギーが変化し、地球のエネルギーバランスに影響を与えます。エアロゾルが太陽光を反射すると、地表に到達するエネルギーが減少し、地球の表面が冷える効果を持つことがあります。これを「冷却効果」といいます。

一方で、黒炭エアロゾル(すすなど)は太陽光を吸収し、大気を温める効果があります。これは「温暖化効果」につながる可能性があるため、エアロゾルの種類や性質によっては、冷却効果と温暖化効果の両方が考えられます。

エアロゾルが気候変動に与える間接的な影響

エアロゾルは雲の形成に影響を与えます。エアロゾル粒子は雲粒の核(雲凝結核)となり、これによって雲の反射率や寿命が変わります。エアロゾルが多い環境では、雲がより細かくなり、より多くの太陽光を反射することができるため、地表が冷える傾向があります。また、エアロゾルが多いと雲の寿命が長くなり、気候に与える影響がさらに複雑になります。

エアロゾルの気候変動への全体的な影響

エアロゾルの冷却効果は、温室効果ガスによる地球温暖化を一部打ち消す作用があると考えられています。しかし、エアロゾルの影響は局地的であり、大気中に長期間滞留しないため、温室効果ガスのような全球規模での持続的な影響を与えるわけではありません。

そのため、エアロゾルによる冷却効果が短期的に温暖化を緩和していても、長期的には温室効果ガスが地球温暖化の主要な原因となっています。また、エアロゾルの影響は非常に不確実性が高く、気候モデルにおいてもその正確な評価は困難とされています。

最後に、エアロゾルの健康への影響について

エアロゾルは気候変動だけでなく、健康にも悪影響を与えることが知られています。特に都市部や工業地帯ではエアロゾル濃度が高くなり、呼吸器疾患などの原因となります。したがって、エアロゾルを減らすことは、気候変動対策としてだけでなく、公衆衛生の観点からも重要です。エアロゾルは、気候変動に対する一時的な冷却効果を提供する一方で、健康や環境に負の影響を与えるため、長期的には温室効果ガスの削減がより優先されるべきです。

以上になります。

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