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気候変動と環境危機 Vol. 011【氷床、棚氷、氷河】
グレタさん編著の『気候変動と環境危機』を読み進めています。
今日は第2部10章 氷床、棚氷、氷河
リカーダ・ヴィンケルマン著(ポツダム気候影響研究所とポツダム大学の気候システム分析教授)を要約しました。
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要約:南極とグリーンランドの氷床が警告する気候変動の深刻さ**
1. **南極とグリーンランドの氷床の状況**
- 南極やグリーンランドの氷床は、過去数十年で急速に質量を失い続けています。1994年から2017年の間に失われた氷は合計で12兆8000億トンにのぼり、これはエベレスト山の高さを超える10km³の氷の立方体に匹敵します。氷床の融解により、世界中で海面水位が上昇し、沿岸地域が冠水するリスクが高まっています。この変化は社会や経済、環境に広範囲かつ深刻な影響をもたらす可能性があります。
2. **極地が示す気候変動の「早期警報」**
- 極地では、気候変動による影響が最も顕著に現れています。2020年には、南極半島で+18.3°C、北極では+38°Cという記録的な高温が観測され、2021年にはグリーンランドで大規模な融解現象が発生しました。南極では、世界最大の氷山が棚氷から分離し、さらに多くの氷が加速的に失われつつあります。これらの現象は極地が地球全体の気候変動に対して「早期警報システム」として機能していることを示しています。
3. **正のフィードバックと転換点の危険性**
- グリーンランドでは、表面の氷が融解することで標高が下がり、気温の上昇がさらに進むという「正のフィードバック」が発生しています。これにより、融解が加速し、最終的にはグリーンランドがほぼ氷のない状態になる可能性があります。一方、南極では表面融解よりも海底での温暖化が問題であり、温かい海水が棚氷を薄くすることで、内陸氷が海に流出しやすくなり、さらに大規模な氷の損失を引き起こします。これらのフィードバックは、氷床が地球の気候システムにおいて極めて重要な要素である理由とされています。
4. **転換点を超えるリスク**
- 氷床の転換点とは、わずかな変化が連鎖的に広範囲な氷の損失を引き起こす状態を指します。地球温暖化が1.5°C~2°Cを超えると、この転換点を超えるリスクが劇的に増加し、グリーンランドと南極の氷床の大部分が失われる可能性があります。これにより、数m規模の海面上昇が長期的に不可避となるでしょう。たとえ気温が将来的に下がったとしても、一度失われた氷床が現在の規模まで再形成されるには、現在よりも寒冷化した環境が長期間必要であり、実際には永久に回復しない可能性が高いのです。
5. **人類への警告と行動の必要性**
- 極地で進行している変化は、地球規模での気候変動の不可逆的な影響を明確に示しています。これらの「警報」に耳を傾けることが急務です。気候変動が抑制されなければ、氷床は均衡を失い、自己増幅的なプロセスが始まり、制御不能な状況に陥るかもしれません。人類は、温暖化を防ぐために温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの利用拡大などの取り組みを加速させる必要があります。氷床の変化が示す警告は、今後の地球環境と私たちの社会の存続に直結しているのです。
以上です。
深刻ですね。