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次世代抗体の論文を読む Comparative study of the developability of full-length antibodies, fragments, and bispecific formats reveals higher stability risks for engineered constructs

今日読む論文は、”A comparative study of the developability of full-length antibodies, fragments, and bispecific formats reveals higher stability risks for engineered constructs”です。和訳すると「フルレングス抗体、フラグメント、二重特異性フォーマットの開発可能性に関する比較研究:エンジニアリングされた構造における高い安定性リスクが明らかに」となります。 著者と出典は画像をご確認ください。

まず、この論文の要約です。

この研究では、従来のフルレングス抗体(mAbs)、抗体フラグメント、および二重特異性抗体(bispecific formats)の開発可能性(developability)を比較した結果、エンジニアリングされた抗体フォーマットが安定性のリスクを抱えることが明らかになりました。

【背景と目的】
フルレングス抗体に比べ、抗体フラグメントや二重特異性抗体は、治療効果やコスト効率の向上、組織浸透性の改善が期待されますが、自然進化していないため安定性の課題が存在します。
本研究では、64種類の抗体フォーマットを分析し、15の生物物理的特性を測定することで、これらのフォーマットの開発可能性を評価しました。

【主な結果】
1. フルレングス抗体の優位性
  - フルレングス抗体は全体的に安定性が高く、フラグメントや二重特異性抗体と比べてフラグメント化や凝集のリスクが低い。
2. フォーマット間の差異
  - 単鎖可変領域抗体(scFv)や二重特異性抗体は中程度の開発可能性を示し、一部の複雑なフォーマット(scFv-scFv、二重特異性抗体の一部など)は特に問題が多い。
3. 長期安定性
  - 40°Cでの1年間の保存では、フルレングス抗体が他のフォーマットよりも優れた安定性を示しました。
4. 開発可能性の指標
  - 生物物理的特性や長期安定性試験を基に、フォーマットごとの「フラグ」リスクアプローチでランキングを実施。
  - 二重特異性抗体や一部のフラグメントはリスクが高い一方で、設計を最適化することで安定性を改善可能な例もある。

【今後の課題】
- 現在のシリコ(in silico)ツールはフルレングス抗体向けに開発されており、新しいフォーマットに対する予測精度は限定的。
- フォーマット間の特性の違いを理解し、開発可能性を予測するための標準化が必要。

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この研究は、抗体フォーマット選定における安定性リスクを理解する一助となり、新しい治療法の開発に向けた指針を提供します。

なるほど。この論文の主旨は分かりました。それでは、図や表を一つずつ見ていきましょう。

まずは図 1

図1. 本研究で使用された73種類の抗体構造の概略図。本抗体ライブラリーは、フル長IgG、フラグメント、二重特異性抗体、そして二重特異性フラグメントで構成されています。HzATNPバリアント(Var1–Var9)は以前に記載されており、本研究ではコントロール抗体セットとして使用されています。二重特異性抗体(IgG/biAb)のサブセットには、3種類のIgG(Var21、Var22、Var23)が含まれていますが、これらは技術的には二重特異性抗体ではなく、単一エピトープをターゲットとする制御用抗体です。HzATNP以外のバリアントはTNF-αをターゲットとしています。注: PDFファイル内の一部の画像は低解像度に見えましたが、オンラインシステム上では問題ありませんでした。必要に応じて、より高解像度の画像を提供することが可能です。

Q)図 1は何を主張していますか?
図1は、この研究で評価された73種類の抗体フォーマットを視覚的に示し、これらのフォーマットがいかに多様であるかを強調しています。この図の主張は以下の通りです:

1. 抗体フォーマットの多様性
  - フルレングスIgG、抗体フラグメント、二重特異性抗体(二重特異性フラグメントを含む)といった異なるフォーマットを網羅しています。
  - 各フォーマットの具体的な構造やバリエーションが提示され、それぞれの特性が実験で評価されていることを示しています。

2. コントロール抗体の使用
  - 研究には既知の特性を持つHzATNPバリアント(Var1–Var9)が含まれており、これがコントロールとして利用され、他のフォーマットとの比較が可能であることを示しています。

3. ターゲット分子の特定
  - ほとんどのフォーマットが腫瘍壊死因子(TNF-α)を標的としていることが明確にされ、標準化されたターゲットを用いてフォーマット間の直接的な比較を行う意図が示されています。

【メッセージ】
図1は、抗体フォーマットの多様性とその設計の詳細を明確に示すことで、この研究がどのようにしてフルレングス抗体、フラグメント、二重特異性抗体の開発可能性を包括的に比較しているのかを伝えています。特に、これらのフォーマットが異なる構造的特徴を持ちながらも、同じ標的(TNF-α)をターゲットにしている点が、結果の信頼性と比較可能性を支えています。

図 1の主張は分かったので、次は図 2です。

図2. 抗体の生物物理的特性。この図は、探索研究の非常に初期段階で評価された重要な特性を示しています。線はセット内の分子の平均値を表し、破線は全分子の平均値を表します。緑、黄、赤の背景は、それぞれ良好、中程度、悪い挙動を示しており、表1に記載されたカットオフに基づいています。活性に関して大きな違いは観察されませんでした。二重特異性抗体は低純度が特徴です。


Q)図 2は何を主張していますか?
図2は、研究初期段階で評価された抗体フォーマットの主要な生物物理的特性を比較し、それらの特性がどのように異なるかを示しています。具体的には以下の点を主張しています:

【主な主張】
1. 各フォーマットの特性の違い
  - 異なる抗体フォーマット間で、生物物理的特性(活性、純度など)に顕著な違いが見られる。
  - 二重特異性抗体は特に低純度が課題であることを強調しており、これは追加の精製プロセスが必要になる可能性があることを示唆しています。

2. 全体的な傾向
  - 緑(良好)、黄(中程度)、赤(問題あり)という視覚的なリスク評価により、各フォーマットがどれだけ開発可能性に優れているかを示しています。
  - 活性に関しては、大きな違いがないことが確認されており、異なるフォーマット間で目的の機能は維持されていることが分かります。

3. 基準値との比較
  - 破線で示される全体の平均値と比較することで、各フォーマットがどの程度基準を満たしているかを評価可能です。
  - これは、開発初期における候補選定のための重要な情報を提供しています。

【メッセージ】
図2は、抗体フォーマット間の差異を理解し、それぞれのフォーマットが直面する可能性のある課題を特定するための基礎的なデータを提供しています。特に、二重特異性抗体が他のフォーマットに比べて製造上の問題(低純度)があることを示し、これが開発の障害となり得ることを示唆しています。この図は、開発可能性を評価する上での指針を与えています。

次はTable 1です。

表1. 本研究で使用した抗体ライブラリーに対応する73種類のサンプルに基づいて導出された生物物理的特性の閾値。赤と黄色の値は、それぞれリスクを示すフラグとしてマークされています。

表1は何を主張していますか?

Table 1は、抗体の開発可能性を評価するために使用された生物物理的特性の評価基準を示しており、以下のポイントを主張しています:

【主な主張】

1. 基準値(閾値)の設定
  - 各生物物理的特性に対して「低リスク(緑)」「中リスク(黄)」「高リスク(赤)」を示す具体的な閾値を設定しています。これにより、抗体フォーマットの特性を客観的に評価する指標を提供しています。
  - 例えば、熱安定性(Tm)は60°C以上で「低リスク」、55°Cから60°Cの間で「中リスク」、55°C未満で「高リスク」と分類されています。

2. 評価項目の網羅性
  - 表には、以下のような開発可能性に関連する多岐にわたる項目が含まれています:
    - Fc受容体への親和性(hFcRnとの結合能力)
    - 純度(モノマーの割合)
    - 熱安定性(Tm、Tagg)
    - 凝集性(自己相互作用パラメータ kd)
    - ストレス耐性(撹拌ストレスや界面ストレス下でのモノマー損失)
    - 長期安定性(30°Cおよび40°Cでの凝集や断片化)

3. 開発リスクの評価フレームワーク
  - 各特性に基づき、抗体フォーマットがどの程度開発可能性に優れているかを評価するフレームワークを提供しています。
  - このフラグシステムにより、抗体フォーマットの弱点を特定し、開発プロセスでの課題解決に役立てることができます。

4. 特性間の相関性を探る基盤
  - この表に記載された閾値は、短期的な物理的特性と長期的な安定性との間の相関性を調査する基盤となっています。

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【メッセージ】
Table 1は、抗体フォーマットの開発可能性を評価するための標準化された基準を提供し、どのフォーマットが開発に適しているか、または改善が必要であるかを判断するための指針を示しています。この基準に基づいて、研究者は抗体の選定や設計をより効率的に行うことができます。

次は図 3です。

図3. 物理的安定性の特性。熱安定性は融解温度(Tm)および凝集開始温度(Tagg)で表され、コロイド安定性は自己相互作用パラメータ(kd)によって示されています。すべての抗体バリアントについて、最初の融解温度を使用しています。これは、熱的な変性が始まる最初の時点で製品の望ましくない変化が発生し始めるためです。界面安定性は、古典的な撹拌試験中のモノマー損失および異なる表面化学特性を考慮したナノ粒子試験で測定されました。線はセット内の分子の平均値を表し、破線はすべての分子の平均値を表します。緑、黄、赤の背景は、それぞれ良好、中程度、悪い挙動を示しており、表1に記載されたカットオフに基づいています。全体として、フラグメントは界面ストレス試験で低い性能を示しています。


Q)図 3の主張を教えてください

**図3**の主張は、抗体フォーマットごとの物理的安定性の違いを示し、開発可能性における課題を特定することにあります。以下に主なポイントを挙げます。

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【主な主張】

1. **フォーマット間の物理的安定性の違い**
  - **熱安定性(TmおよびTagg)**:  
    フルレングス抗体(IgG)は、融解温度(Tm)および凝集開始温度(Tagg)で最も高い安定性を示し、抗体フラグメントや二重特異性抗体に比べて優れています。
  - **コロイド安定性(kd)**:  
    フルレングス抗体は、自己相互作用パラメータ(kd)の値が高く、他のフォーマットよりも自己集合や凝集のリスクが低いことを示しています。

2. **界面ストレス耐性の差異**
  - 撹拌試験やナノ粒子試験による界面ストレス耐性の評価では、抗体フラグメント(特にscFv)や二重特異性抗体が、フルレングス抗体に比べて著しく低い性能を示しています。
  - 特にナノ粒子試験では、異なる表面化学特性が安定性に与える影響を測定しており、フラグメントの界面安定性が課題であることが明らかです。

3. **フォーマットごとのパフォーマンスの可視化**
  - 各フォーマット内の分子ごとのばらつきが観察される一方、フルレングス抗体は全体的に均一で安定したパフォーマンスを示しています。
  - 抗体フラグメントや複雑なフォーマット(scFv-scFvなど)は、大きなばらつきと低い平均値を持つことが特徴です。

4. **リスク評価**
  - 緑、黄、赤で示されるリスクレベルは、フルレングス抗体が「低リスク」であるのに対し、抗体フラグメントや二重特異性抗体は「中〜高リスク」であることを明示しています。

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図3のメッセージ
図3は、異なる抗体フォーマットの物理的安定性を包括的に比較し、フルレングス抗体が他のフォーマットに比べて開発可能性が高い理由を示しています。同時に、抗体フラグメントや二重特異性抗体の安定性リスクを明確にし、これらのフォーマットの設計や開発における課題を強調しています。この情報は、抗体フォーマットの選定や最適化において重要な指針となります。

続いて図4です。

図4. 長期安定性データ。30°Cおよび40°Cで1年間インキュベーション後に測定された、凝集体(HMWP)、断片(LMWP)、および完全なモノマー(Mon)の割合を示しています。線はセット内の分子の平均値を表し、破線は全分子の平均値を表します。緑、黄、赤の背景は、それぞれ良好、中程度、悪い挙動を示しており、表1に記載されたカットオフに基づいています。diAb(ダイアボディ)バリアントは非常に低い収率のため、すべての試験で特性評価されているわけではありません。フラグメントは特に問題を抱えることが明らかです。


**図4**は、抗体フォーマットの長期安定性を比較し、それぞれのフォーマットが持つ課題を特定することを目的としています。以下が図4の主張です。

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【主な主張】

1. **フルレングス抗体の優れた長期安定性**
  - フルレングス抗体は、30°Cおよび40°Cでの1年間の保存後も、他のフォーマットよりもモノマーの割合が高く、凝集や断片化が少ないことを示しています。
  - これは、フルレングス抗体が他のフォーマットに比べて長期保存に適していることを意味します。

2. **フラグメントや二重特異性抗体の課題**
  - フラグメント(特にscFv-scFvやdiAbなど)は、40°Cでの保存条件下で顕著に高い断片化と凝集を示し、長期安定性が低いことが明らかです。
  - 特に高温条件(40°C)では、フラグメントや二重特異性抗体の多くが望ましくない物理的変化を起こしやすいことが示唆されています。

3. **異なるフォーマット間のリスク比較**
  - 緑、黄、赤で色分けされたリスク評価により、各フォーマットがどの程度安定性の課題を抱えているかを可視化しています。
  - 全体として、フルレングス抗体は「低リスク」とされ、フラグメントや二重特異性抗体は「中〜高リスク」と分類されています。

4. **特定の要因による安定性の低下**
  - フラグメントで観察された断片化の主な原因として、GSリンカー(グリシン-セリンリンカー)の設計が挙げられています。リンカーの長さや構造を最適化することで、この課題を克服できる可能性が示唆されています。

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図4のメッセージ
図4は、抗体フォーマットの長期安定性における違いを明らかにし、フルレングス抗体が最も優れた安定性を持つ一方で、フラグメントや二重特異性抗体が安定性の面で課題を抱えていることを示しています。また、設計や最適化を通じて安定性の向上が可能であることを提案しており、新しいフォーマットの開発における課題と改善の方向性を示しています。

次は図 5です。

図5. 各抗体フォーマット内のフラグ付けされたバリアントの分布。緑、黄、赤の枠は、それぞれのバリアントセットに対する全体的な開発可能性リスクを示しています。


**図5**は、異なる抗体フォーマットの開発可能性(developability)に関連するリスクを比較し、フォーマットごとの課題を特定することを目的としています。以下が図5の主張です。

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【主な主張】

1. **フルレングス抗体の開発可能性の優位性**  
  - フルレングス抗体(IgG)は、フラグ(リスク)が非常に少ないことを示しており、開発可能性が高いフォーマットであることを強調しています。
  - フラグの少なさは、均一で安定した特性を持ち、製造プロセスにおいて問題が少ないことを反映しています。

2. **フォーマットごとのリスクの違い**
  - 抗体フラグメント(特にscFv-scFv)や二重特異性抗体(biscFv/biscFv-Fc)は、フルレングス抗体に比べて多くのリスクフラグが付けられています。
  - これらのフォーマットは、設計上の複雑さや物理的安定性の課題が原因で、開発プロセスにおいて困難が予想されます。

3. **フラグの分布の可視化**
  - フラグの分布は、フォーマット内での個々のバリアントの特性のばらつきを示しています。
  - フルレングス抗体はリスクが少なく均一性が高い一方、フラグメントや二重特異性抗体ではリスクのばらつきが大きいことが分かります。

4. **リスク評価の総合的な概要**
  - 各フォーマット内のリスク特性を緑(低リスク)、黄(中リスク)、赤(高リスク)で色分けして可視化しています。
  - これにより、どのフォーマットが開発の課題を抱え、改良の必要があるかを一目で判断できるようになっています。

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図5のメッセージ
図5は、異なる抗体フォーマットの開発可能性を体系的に比較し、フルレングス抗体が最も安定で開発に適していることを示しています。一方で、抗体フラグメントや二重特異性抗体はリスクが高く、設計やプロセスの最適化が必要であることを強調しています。この情報は、抗体開発プロジェクトにおいてフォーマット選定や課題解決の方向性を決定するための重要な指針となります。

次は図6

図6. 生物物理的特性に基づく開発可能性のリスク評価。開発可能性リスク全体に最も大きな影響を与える試験は、長期安定性研究、およびコロイド安定性と界面安定性です。二重特異性フラグメントおよびフラグメントは、最も不利な開発可能性プロファイルを示しています。


**図6**は、抗体フォーマットごとの開発可能性リスクを総合的に評価し、どの特性がリスクに最も影響を与えるかを示しています。以下が主な主張です。

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【主な主張】

1. **開発可能性リスクの総合評価**
  - 長期安定性(特に凝集や断片化)、コロイド安定性(自己相互作用パラメータ)、および界面安定性が、抗体フォーマットの開発可能性リスクに大きく影響を与えていることを示しています。
  - これらの特性は、抗体の実用性や製造プロセスでの安定性に直結する重要な要因です。

2. **フルレングス抗体の優位性**
  - フルレングス抗体(IgG)は、全体的に低いリスクプロファイルを持ち、開発可能性が最も高いフォーマットであることを示しています。
  - 他のフォーマットと比べて、緑(低リスク)の割合が圧倒的に多いです。

3. **フラグメントと二重特異性抗体の課題**
  - 二重特異性フラグメント(biscFv/biscFv-Fc)やフラグメント(scFv-scFv)は、最も多くのリスクフラグを持ち、開発可能性が低いことが明らかです。
  - これらのフォーマットは、設計や安定性の面で改良が必要であることを示唆しています。

4. **リスク分布の明確化**
  - 各フォーマットのリスク分布が視覚化されており、フォーマットごとにどの特性が最も課題となっているかを比較できるようになっています。
  - 二重特異性抗体やフラグメントは、特定の安定性試験で特に低いスコアを示していることが分かります。

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図6のメッセージ
図6は、抗体フォーマットの開発可能性を総合的に評価し、どのフォーマットが最も開発に適しているかを明らかにしています。同時に、リスク要因となる特性を特定し、特に二重特異性フラグメントやフラグメントでの改良の必要性を強調しています。この情報は、新しいフォーマットの設計や選択における重要な指針となります。

全体のまとめ:
フルレングス抗体、フラグメント、および二重特異性抗体の開発可能性比較

この研究は、フルレングス抗体(IgG)、抗体フラグメント、および二重特異性抗体(bispecific formats)の開発可能性(developability)を多角的に評価し、それぞれの安定性リスクを明らかにしました。以下、各図表を引用しながら研究の全体像をまとめます。

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#### 1. **研究の背景と目的**
- フルレングス抗体は高い安定性を持ちますが、抗体フラグメントや二重特異性抗体は小型化や多機能性の可能性を提供する一方で、安定性や製造の課題が存在します【図1】。
- 本研究では、64種類の抗体フォーマットを対象に、15の生物物理的特性を測定して比較しました【表1】。

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#### 2. **抗体フォーマットの特性の概要(図1, 表1)**
- **図1**では、73種類の抗体フォーマットを視覚的に分類し、フルレングス抗体が標準的な構造である一方、抗体フラグメントや二重特異性抗体は複雑な設計を持つことを示しました。
- **表1**では、各特性(例: 熱安定性、凝集リスク、長期安定性)に対するリスク閾値を設定し、フォーマット間の比較基準を提供しました。

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#### 3. **物理的安定性の比較(図2, 図3)**
- **図2**では、各フォーマットの初期段階の特性(活性、純度など)を比較し、二重特異性抗体が低純度で課題を抱えていることを示しました。
- **図3**では、物理的安定性(熱安定性、凝集開始温度、界面ストレス耐性)を評価し、フルレングス抗体が最も安定しており、抗体フラグメントや二重特異性抗体が課題を抱えることを明らかにしました。

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#### 4. **長期安定性の課題(図4)**
- **図4**は、30°Cおよび40°Cで1年間保存した後の凝集や断片化の傾向を示し、フルレングス抗体が安定性で優れている一方、フラグメントや二重特異性抗体が顕著にリスクが高いことを示しています。

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#### 5. **リスク評価の総合比較(図5, 図6)**
- **図5**は、各フォーマットにおけるリスクの分布を示し、フルレングス抗体が最も低リスクで均一な特性を持つことを強調しました。
- **図6**では、長期安定性や界面安定性が開発可能性リスクに与える影響を明らかにし、特に二重特異性フラグメントやフラグメントが高いリスクを抱えていることを示しました。

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#### 6. **結論と提言**
- フルレングス抗体は開発可能性が最も高く、リスクが少ない一方で、抗体フラグメントや二重特異性抗体は安定性や製造上の課題が多いことが分かりました。
- 特に、フラグメントや二重特異性抗体の設計(例: GSリンカーの改良)を最適化することで、安定性の向上が期待されます【図4】。
- 本研究の結果は、抗体フォーマットの選定や設計、改良のための重要な指針を提供します。

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### メッセージ
この研究は、フルレングス抗体の優位性を明確にしつつ、新しいフォーマット(抗体フラグメントや二重特異性抗体)の課題を特定しました。これにより、抗体の安定性向上と開発可能性の評価に貢献し、次世代の治療法の基盤を構築するための重要なデータを提供しています。

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