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漂白花火感想 はるきコミュでありシャニPコミュでもある傑作

先日実装された、はるきのPSRカード「漂白花火」
傑作だったGRADがまだ記憶に新しい中、実装されましたが今回もまたとてつもない傑作でした。

遂に実装された待望のpSR

初出の情報や、今後の重大な伏線になるかもしれない要素も多く、未来の必須コミュになりうる存在でもあったと思います。

内容ははるきコミュらしく色々な解釈が出来る幅広さがありましたが、今回は自分の気になったいくつかの点を軸に考察をしていきたいと思います。


①GRADの先にあるもの


今回のコミュについては、明言はされていないものの時系列としてはGRAD終了後を匂わせている形です。

GARD編でシャニPがはるきに語った「スタッフがみんなが良いものを作りたいという意識を共有している」という点を更に掘り下げて、スタッフが一丸となって作り上げようとしているアイドルの撮影は、はるき自身が絵や歌で表現しようとしていることと同じことなのではないかと考え、はるきがそれをどのように表現していくかを色々と試しているところからお話が始まります。

個人的な考えですが、私はこの部分が今後のはるきコミュの「軸」になる部分なのではないかと思います。

はるきがそもそもアイドルを志したのはシャニPがアイドルのプロデューサを務めていたという要因が大きく、「連綿と、桜」で描かれたミュージシャンとの対談中にも「なぜアイドルを選んだのか」という問いに対しても、明確な答えが出せない様子が描かれていました。


しかしながら今回は答えこそまだ見つかっていないものの、自身が今後どんなアイドルになりたいか、アイドルとして何を表現したいかという事について目標が出来て、それを意識し始めたようにも思えます。

自身を作品の一部に見立てることで何かをつかめるかと模索しますが、はるきは自身が模倣した彫像と違い生きている存在であり本質的に全く違う存在の為、はるきの納得のいく表現にはならなかったように描かれています。

「桜花拾」でも、最後まで自身が作品内に出ないほうが良かったのではないかと悩んでいたシーンがありましたが、アイドルという自身を使って表現するアーティストでありながら、自分自身の存在が本当に表現したいことの妨げになっているのではないか?と考えてしまっているようにも見えます。

ここの目線好きです
「桜花拾」より
アイドルの仕事でこの発想が出るのも凄い

その矛盾点をどう乗り越えて自分の思いをどのように表現していくのか。
そこを描いていくのが今後のはるきコミュのテーマの一つになるのでは?と思っています。

はるき自身も言っていたように、それはあまりにも壮大で、とてつもない内容であり、一生かかっても答えが出ないものかもしれません。
実際のところ、今後のコミュでも明確な答えは描かないかもしれないと思っています。

と言うのも個人的な考えですが、はるきはこの答えをどうしても知りたいと思っているようには見えず、むしろ自分が表現したいと思っていることを追い求めるという経験そのものを大切にしているように見えるからです。

「連綿と、桜」でもアイドルを選んだ理由を勘という言葉で表現出来ず悩んでいたはるきに対しシャニPが「でも簡単にわかってしまっていたらはるきは違うことをしていたかもしれない」と語るシーンがありましたが、これは、はるきが結果よりも過程を大切にしたいと思っていることをシャニPが理解していたからこその言葉だと思っています。

「走った先に〜」が有名なコミュですが、
他にもたくさんの名場面がある重要コミュ。

簡単には答えが出ないからこそ心が惹かれるし、それを求めた結果が何も残らなかったとしても、それまでの過程で得たものまでなくなる訳ではなく、はるきにとっても、そしてそれを見守り、手助けするシャニPにとっても一生の財産として心に残るのではないでしょうか。

だからこそ二人は追い求めたその先に何も無かったとしても「無かったね」と一緒に笑い合える関係なのではないかと思うのです。

さらっとこういう言葉が出てくるところがはるきの凄さ
いい意味で10代の女の子の言葉とは思えない…


②今という一瞬


今回のコミュでは「時間」という部分もテーマとして取り上げられていたように感じます。

今までも「桜花拾」の永遠や「連綿と、桜」で過去の自分の夢をみたはるきなど、時間に関するお話はありましたが、今回取り上げられていたのは「いまこの瞬間」という部分だったと思います。

二つ目のコミュである「作品NO__」ではシャニPがはるきの絵のモデルになるシーンがあり、その際にはるきの「絵を描くことは時間を止めることみたい、でもわたしは時間を止めたいわけじゃなくて…」というセリフがあります。

芸術に関しては全くの素人なので不快な思いをさせてしまったら申し訳ないのですが、ただ対象をそのまま美しく描いたとしても、それはそれで凄いと思うのですが、写真や動画のような表現もある現代では心の底から感動するかと言われると難しいところもあるでしょう。

ではそういった発明があるから絵を描くという行為は無駄なのかと問われれば決してそんなことはありません。
その時の思いだったり、観た人の心をどう動かしたいか、様々な思いを込めたその人にしか出来ない表現があるからです。

GRAD編ではるきがかつての自分の描いた絵に勇気を貰ったように、はるきの目的はただ対象を克明に描くことではなく、その作品を通してそういった想いや目に見えない部分を描いて「自分を含めた誰かの心を動かすこと」こそを目標にしているからこそ、「時間を止めたいわけではない=ただ対象を克明に描きたい訳ではない」という言葉に繋がったのではないでしょうか。

また、アイドルというのは現実的には一生続けることは難しい職業です。
ライブで、トークで、撮影で、その一瞬一瞬で出来る精いっぱいを切り取って一つの作品として仕上げていくということに気づけたからこそ、はるきにとっての絵を描くことと、スタッフが一丸となって作品を作り上げるアイドルとしての撮影は共通するのでは?という発想に至ったのではないかと思います。

はるきの創作活動とアイドルの仕事の関係性についてここまではっきり明言されたのは初めてではないでしょうか?

③はるきが選んだのか、シャニPが選んだのか

今回のコミュはシャニPも存在感がありました。
はるきコミュにおけるシャニPと言えば、頼りになるパートナーとして存在感をあらわすことが多い印象ですが、今回はそういったサポート役ではなく、彼自身の内面についてもかなり踏み込んでいます。

とくに一つ目のコミュである「アンフォルメル」では選択肢ごとにはお話の展開が大きく変化し、どの選択肢にもシャニPの独白だったり、過去などのパーソナルな部分を示唆する部分があります。

シャニPは我々プレイヤーの分身というよりは一人のキャラクターとして独立している存在ですが、そうはいっても限界はあると思うので明確な過去だったりが描かれることはないと思うのですが、今回は割とギリギリの部分まで攻めていたように感じます。

今回自分にとって意外だったのが、シャニPからはるきに対しての感情が割と重めな部分も垣間見えたことです。

正直なところ、今までははるきからシャニPに対しての感情だったり、人生を変えた出会いだったことばかりが描かれていたので、シャニPからはるきに対してプロデューサーという立場ではなく、個人としてどうのような印象を持っているかはあまり描写されていませんでした。

そう感じる要因の一つとして、ルカや羽那に対してはシャニPがどう思っているかの描写が比較的多めだったことも影響していると思います。

ルカはそもそもの283プロの加入の経緯もあってか彼女自身の幸せについてその想いを語るシーンが多いですし、羽那に対しても少し重めの理想を抱えていそうな描写が見受けられます。

それに対してはるきは、あまり手のかからない性格であることもあってか、二人に比べるとシャニPの想いのようなものが描かれることは少ない印象があります。

はるきのプロフィールにもアイドルになった切っ掛けは「売り込み」と記入されていることもあり、どちらかと言えば「はるきがシャニPを選んだ」という印象が強かったのですが、今回のコミュを読むとまた印象が変わるような気がします。

特に印象に残っているのは、やはり一つ目のコミュ「アンフォルメル」で右の選択肢を選んだ際に「こういう考え方をする人がいるのか」とはるきを眩しく思うシーンです。

ここのシャニPのモノローグ、はるきへのリスペクトだったりを感じて心が動かされている様の描き方として凄く好きです

①の項目でも触れた自分がどのような事を表現していきたいかを模索するはるきを見て「まぶしいな」とシャニPが呟くのですが、ここは個人的な考えでは、シャニPがはるきをプロデュースしようと思った理由そのものなのではないかと感じました。

WING編では、シャニPの言葉に背中を押されたはるきが生き生きと演奏をする姿を見てシャニPが「スカウトすればよかったかな」と呟くシーンがあります。

誰かの心を動かすために、自身の心を動かすようなパフォーマンスを披露した彼女の姿に、そしてシャニPが「違うところをみつめているみたい」と表現したその意思の強さに、彼自身も惹かれていたのではないかと思います。

その直後の「私を連れて行ってください」の印象がどうして強いので「はるきがシャニPを選んだ」という印象になってしまいがちなのですが、この時にはるきの輝きをみて「シャニPもまたはるきを選んだ」のだと今回改めて気づかされたなと思います。

はるきの逆ナン?のインパクトで上書きされがちですが、
先にその気になっているのはシャニPなんですよね


④美しき物語


今回はSRカードということもありコミュの数は3つと限られています。
ここまで語ってきた通りどれも素晴らしい出来栄えなのですが、その中でも一番印象に残ったのはTRUE ENDコミュの「美しき時代」でした。

このコミュの素晴らしいと思う点は、ここまでこのコミュのテーマではないかと考察してきた「時間」だったり、「はるきとシャニPの関係」だったりをこのコミュ内のみで綺麗に描き切っているからです。

特に印象に残ってるのは、シャニPの「もしはるきの同級生だったらはるきのことを遠い存在と感じていたかもしれない」という言葉にはるきが「今だから私はアイドルで、プロデューサーさんはプロデューサーさんなんですね」と返すやり取りです。

シャニPは今回意味深に触れられながらも語られることは無かった過去の様々な経験を経て283プロのプロデューサーになり、その後WING編の描写からも、ある程度経験を重ねた状態ではるきと出会いました。

その積み重ねがあったからこそ、はるきの魅せた輝きに気づくことが出来て、それに対して物怖じすることなくプロデュースが行えたのではないでしょうか。

それこそ二つ目のコミュ「作品NO.___」で絵のモデルになった際に、アイドルの気持ちが少しわかったような気がすると思ったのも、彼がはるきに限らず、沢山のアイドルたちの輝きを一番近くで見てきた存在だからこそそう思えたのでしょう。

もしシャニPがはるきの年齢差が今と違ったら、出会うタイミングが少し早かったら、もしかしたら二人の道は交わることは無かったのかもしれません。

「あの時」に出会えたからこそ、今の関係なのだというまさに「縁」としか表現出来ないある種の奇跡を本当に綺麗に描いているやり取りだと思います。

ここの2人のやり取り凄く好きです

そんな二人の関係もGRAD編ではるきが一皮剥けたこともあってか、今回少しずつ変化をしていっている印象です。

シャニPは、今まで以上にはるきの言葉に心を動かされているように見えますし、このコミュ内ではるきもシャニPも「お互いが見ている世界を共有できれば良いのに」と思うシーンがあります。

今までは仕事のパートナー、理解者としての側面が強かったですが、今回は個人的な部分でのお互いに対する興味が深まり、より絆が深まっているようにも思えます。

今後二人がどういった道を歩むのかは本人達にもわかりません。
今現在の当たり前が未来でもそうであるという保証はどこにもなく、それこそ遠い未来になって初めて「いま思えばあの時は幸せだったんだ」と気づく貴重な時間なのかもしれません。

それを知っているからこそ、たとえそうなったとしても今という時間があったことを忘れないようにしたい。

はるきがシャニPの絵をまた描きたいと言った陰には、もしかしたらそんな思いも隠れていたのではないかと思います。

はるきコミュらしい余韻とほんの少しの寂しさを感じさせる、とても美しいラストだったと思います。

ラストの演出凄く好きです
GRADと編と同じ「あなた」という言葉で締めるのも良き!

⑤まとめ:はるきコミュであり、シャニPコミュでもある

毎回期待を上回る素晴らしさのはるきコミュでしたが、今回も本当に素晴らしいお話でした。

「連綿と、桜」「桜花拾」そしてGRAD編を思わせるような今までの積み重ねを感じさせつつも、はるきも、そしてシャニPも少しづつ変わっていく様子が描かれ、今後のお話がどのように展開していくのかとても楽しみになるお話でした。

GARD編は基本的にはるきの視点でお話が進み、はるきの心理描写もかなり細かく描かれていましたが、今回はそれと逆でシャニPの視点でお話が進む形でした。

そういった意味でも今回はGRAD編の対になる存在として意識されているように思えます。
その為はるきコミュでもあり、シャニPのコミュであるとも言える存在になっており、めぐるのコミュである「ふたり色クレオール」に少し似ているようにも感じました。

今回のコミュをシャニPコミュとして見た場合、印象的だったシーンがあります。

それはコミュ1「アンフォルメル」の選択肢で「幸せそうだ」を選ぶと、はるきから「今思えばあの時は幸せだったんだなと思うもの、ありますか?」と問いかけられるシーンです。

今回で一番心に残ったセリフかもしれません…

ここでシャニPは問いかけを肯定しつつも、具体的に何があったかは語らず、こちらの想像に任せる形となっています。

先ほども書いた通りシャニPはキャラクターとしての個性が明確に設定されているので、こういったゲームでありながら所謂自己投影をして楽しむのは少し難しい印象があり、普段は私もシャニPを一人のキャラクターとして見ています。

しかしながら、この問いかけを見た時にはまさに自分自身が「今思えば幸せだった時間」を思わず思い出してしまい、シャニPの「何故だか泣きそうになった」というモノローグが流れるシーンでは一瞬、まるで彼と自分の存在が重なりあったような感覚に陥りました。

だいたいのはるきコミュ、このモノローグで説明出来る説

シャニPの「一人のキャラクターとして設定はされているが、限りなくプレイヤーに近い存在」という個性があってこその現象だと思うのですが、正直なところ、自分は全くシャニPに自己投影はしていないタイプだったので、こんな感覚に陥るのは全く想像もしていませんでした。

こんな形で自分の感情がかき乱されるとは夢にも思わなかったですし、改めてシャニマスのコミュの素晴らしさを実感させられました。

あえて多くを語らず、読み手側の解釈にゆだねることはシャニマスの十八番だと思いますが、今回もそれをとても効果的に使っていたと思います。

これからのはるき、コメティック、シャニPがどうなっていくのか。
今後への期待が益々高まるコミュだったと思います。


まったく関係ないですが、
イラストはどちらも素晴らしくて大好きです!
今後のコメティック、はるきコミュにも期待大!


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