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ZINE 『言葉の即興演奏』をつくりました


しばらくnoteで様々な地点、時間帯で行ってきた文字起こしの記録を発信させていただきました。多くの方々に見ていただき、とっても嬉しいです。

今回、これらの文字起こしの記録をZINEにまとめましたのでお知らせします。
noteの記録に加えて、いくつかのアイテムを詰め込んだ、内容豊かなものになりました。

自己紹介

これまでちゃんとした自己紹介をしていなかったので、初めての方、これまで見てくださった方へ、ここで少し自己紹介をさせてください。具体的に、どんなことをしてきたのかはこちらの記事を見ていただければ幸いです。

小林 楓太|Kobayashi Futa

2001年長野出身。中条村という小さな村に生まれました。
思えば、あの村での暮らしは、制作の原風景としてずっと息づいているような気がします。

その後、東京都立大学建築学科に入学し、建築を学びました。
しかし、建築ってそれはもうでっかいわけで、自分はそんな大層な人間じゃないと感じていました。空間という、体を覆ってしまうほど大きなものを提案できるほど、他人を知らないと思っていたのです。そこで、もっと身近で小さなものから始めて、人のことを知ろうと考えるようになりました。実際に手で触れられる1/1スケールのものなら、相手の表情もよく見えると思い、大学院はプロダクトデザインを学ぼうと思いました。

現在は、京都市立芸術大学大学院デザイン科に在籍中です。
ただ、プロダクトらしいことはあまりせずに、興味がひょいひょいと移り、今は「言葉」に魅せられています。建築から始まり、プロダクトへとスケールを縮め、かと思えば今は実体のない「言葉」です。それでも、どこか建築に戻っているような感覚があり、都市や周囲の環境について面白がっているという意味では、今やっていることと建築には近しいものを感じています。

今年度、卒業(かも)ですが、今やっていることがとても楽しくて、続けていこうと思っています。

ZINE 『言葉の即興演奏』

<ZINEの概要>
—街中のある一点に30分間立ち続け、音を録る。その音の中から言葉だけをすくいとって、文字に起こす。—
そんな営みによって紡がれた、街の言葉を記録したZINE。

 あなたが街で言葉を発した時、その言葉はその場所にポツンと残される。しばらくして、また見知らぬ誰かがある言葉をそこに落としていく。しばらくたつと、見知らぬもの同士の言葉が連なりをつくっている。そんなふうに街では、ある場所に残された言葉が積もり、即興演奏を奏でている。

 誰かの会話の断片、時には、駅アナウンス、街広告、どこからか聞こえてくる音楽。街に漂うあらゆる言葉を、一つずつすくいとり、時間の流れに沿って、波形のように文字に起こした本作。タイトルによって、その時間帯、地点は様々。そのそれぞれからは、街の発話リズムが視覚的に現れ、一つ一つの言葉からは、その時の空気感­—時代、年月日、季節、曜日、時間帯、その土地っぽさ—が密かに漂ってくる。そんな、時と場の空気が閉じ込められたZINE。

<一冊の内容>
<本誌>
<見開きで5分間ずつ>
<最終ページ>

<内容物>
1. 本誌 148mm×148mm / 16p / ソフトカバー
ある場所で30分の間流れていた言葉を記録したもの。最終ページは、このページに至るまでに辿ってきた全ての言葉が、一目に立ち現れる仕様となっています。縮小された言葉の集積は、街全体の発話リズムを感じさせる波形のように映ることでしょう。

2. introリーフレット
なぜ、街の一点に立ち続け、言葉を抽出するようになったのか、そのきっかけを綴ったエッセイ。また、文字起こしという営みに込めた思い、そして、文字起こしの際に設けているちょっとしたルールが記されています。

3. フィールドノート
ある場所に30分立ち続けている間、周囲で起こっていたことやふと気づいたことをスマホにメモした当時の記録。本誌から情景を思い描く時、解像度を高める手がかりとなるような、各地点ごとのエッセイ。

5. MAP
立っていた地点の情報を埋め込んだQRコードが添えられた、石ころのような紙。

これらの内容物がCDほどのサイズ(160mm×160mm)の封筒に納められた、ブラインドブックに近しい冊子です。

※タイトルによって、一つ一つ内容が異なります。
※全て手作業で行っているため、製本に多少のずれが生じる場合がございます。ご了承ください。
※発送はご注文から一週間ほどお時間をいただきます。(遠方に行っている場合は、その都度ご連絡いたします。)

こちらのオンラインストアから購入できます。カテゴリーから地域を、そこからさらに細かな地点・月日を選ぶことができます。ちょっとした旅をするような気分で選んでいただけらたと想像します。

また現在、ありがたいことに幾つかの本屋さんに取り扱っていただいております。様々な地点・時間帯で行った文字起こしの記録があり、冊子の種類が膨大なため、各店納品に関しても被りがありません。そんな、出会う冊子に偶然性を添えることは、街の言葉との偶然の出会いという意味でこの作品のコンセプトとも結びついています。日々の散歩にヒントを与え、収集の楽しさに繋がれば嬉しく思います。以下、お取り扱いいただいている本屋さんです。

京都:恵文社、誠光社、ホホホ座
東京:B&B、蟹ブックス
神奈川:道草書店
長野:栞日

これからのnote

ずっと、文字に起こしたものを紙の冊子にしたいと思っていました。音という生々しさを含んだ街の言葉を、静かな文字に置き換える。文字起こしという営みを表現するには、紙面上に動かないものとして記された姿がいいなと思っていました。紙に印字された佇まいが似合っていると思うんです。

また、30分の間流れていた言葉が、一目に目の前に立ち現れてほしいとも思っていました。横軸のタイムラインに沿って、波形のように言葉を並べることで、文字が形として浮かび上がってくる。それは紙じゃないとできないなと思って。

そんな想いが形になりました。

とはいえ、Web上で見ることのできる楽しさや、多くの人に触れてもらえる喜びを、noteでたくさん感じてきました。ですので、noteの更新も続けていきたいと思います。これまでの記事はそのままに、今後の記事には少し価格を設定させていただきます。Web上で眺めたい方や、冊子を購入する前に内容を少し覗いてみたい方に届けば嬉しいです。

おわりに

最近、FabCafe KyotoのCOUNTER POINTという活動に採択されました。今までのように、街の言葉の文字起こしの魅力を探っていくとともに、このプロジェクトでは、その文字を再び音(声)として発することも試みます。音読なんかも面白いかもしれませんね。声が文字に変わり、声として戻っていく。その循環の中で見えてくる言葉の豊かさをみつけていければと思っています。

展示の情報など、日常的にはinstagramを中心にお知らせしようと思っていますので、気になった方はnoteのリンクから覗いてみてください。

録音は日々していて、もう懐かしい話ですが、桜の季節の鴨川でのお花見の声や、蛍を見つけた人の声、競馬で熱狂する人の声、橋の上でカネコアヤノの曲を歌う男の子たちの声、祇園祭の声、五山送り火を眺める人の声、下鴨神社の古本市の声、なんかが録れています。

文字起こしは追いついていないですが、楽しみにしていただけると嬉しいです。

今月末には、中国・四国・九州へ旅に出て、どこかに立っていようと思います。
どんな言葉と出会えるか、楽しみです。

こんなところ行ったら面白そう、なんかもぜひ教えてください。

というわけで、ZINEができたよのお知らせでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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