イギリスファッション史

イギリスファッションの歴史は、社会や文化の変化と深く結びついています。

1. ルネサンス期(16世紀)

この時代のイギリスファッションは、エリザベス1世の治世を中心に「エリザベス朝ファッション」として知られます。豪華な刺繍や高価な布地(ベルベット、シルクなど)を使い、階級を示す服装が重要でした。特に特徴的なのは「ラフ」と呼ばれる大きなフリル襟で、これは地位や富を象徴しました。
• 男性: ダブルレット(短い上着)、ホーズ(タイツ状のズボン)。
• 女性: コルセットで強調された細いウエストと大きく広がるファーシングール(ドレスの骨組み)。

2. バロックとロココ(17〜18世紀)

17世紀、清教徒革命(1642年〜1651年)や王政復古の影響でファッションは華やかさと質素さを行き来しました。18世紀に入ると、フランスの影響を受けたロココスタイルが広がり、軽やかで優美な装飾が主流となりました。
• 男性: ロングコート、レースのジャボ(胸元の飾り布)、パウダーウィッグ(白いかつら)。
• 女性: ホープスカート(大きな横幅のスカート)とコルセット、パステルカラーのドレス。

3. 産業革命(19世紀前半)

産業革命による繊維技術の発展で、ファッションは急速に変化しました。布地が大量生産され、労働者階級でも手頃な衣服が手に入るようになりました。ヴィクトリア朝(1837〜1901年)は特に「モラル」と「規律」が反映されたファッションが特徴です。
• 男性: ブラックスーツとシルクハットが普及。これが現代のビジネススーツの原型となります。
• 女性: クリノリン(大きなスカートの骨組み)からバッスル(後ろを強調したスカート)への移行。

4. エドワード朝と戦間期(20世紀前半)

エドワード7世(1901〜1910年)の時代は、贅沢で優雅な「ベルエポック」の影響を受けたファッションが特徴的です。しかし、第一次世界大戦(1914〜1918年)後、より実用的なファッションが求められるようになりました。
• エドワード朝: コルセットを使ったS字型のシルエット(女性)、フロックコート(男性)。
• 戦間期: 女性はシャネルなどの影響でシンプルなジャズエイジスタイル、男性はスリーピーススーツ。

5. 戦後のモード革命(20世紀後半)

第二次世界大戦後、イギリスはファッションの世界的な中心地の一つとして再び注目されます。
• 1950〜60年代: ロンドンが「スウィンギング・シティ」として若者文化の中心に。モッズファッションやミニスカート(デザイナーのマリー・クヮントが発明)が登場。
• 1970年代: パンクファッションがヴィヴィアン・ウエストウッドによって確立。破れた服や派手なアクセサリーが特徴。
• 1980年代以降: テーラードスーツの伝統を守るブランド(バーバリーやサヴィル・ロウの仕立て屋)と、ストリートファッションの融合が進む。

6. 現代のイギリスファッション(21世紀)

現在のイギリスファッションは、伝統的な要素(クラシックなスーツやトレンチコート)と、個性的なデザインやストリートスタイルが共存しています。
• 高級ブランド: アレキサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニーなどが世界的に活躍。
• ストリートファッション: 若者文化や音楽の影響が強く、スニーカーやカジュアルウェアが普及。

イギリスのファッションは、常に伝統と革新のバランスを取りながら発展してきました。その背景には、階級社会、音楽やアート、産業の進化が大きく関わっています。

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