Gestalt Analysis

 やあ。ついさっき、僕が何故君を好きか調べるための、いいやり方を思いついた。方法は至ってシンプル。一言で言えば、僕が思う、君の良いと思う要素を順々に削ぎ落としていくんだ。あるものが削ぎ落とされたとき、僕は君に対して興味を失うだろう。僕の考えでは、その「あるもの」が君への好意を支える重要なファクターっていうことになる。じゃあ、早速始めようか。
 まずは、見た目から試してみよう。正直なところ、僕は君の見た目に惹かれているからね。特に、その①切れ長の目と②高い鼻、それに③笑ったときのえくぼがいい。
 ……あれ?どれが欠けても、気持ちが冷めてしまった。となると、僕はただ君の外見が気に入っていただけだったのだろうか?まあいい。どんどん続けよう。
 次は、内面へと目を向けよう。僕は君の、④一見クールそうでいて情熱的なところが好きだし、⑤心から人の幸せを願うことのできる優しさを尊敬している。これらの要素を取り除いたら、一体どうなるんだろう。……訊くまでもなかったよ。ということは、やっぱり僕は、君の中身に惹かれているんだろうか。
 今度はスキルや、才能へと移ろう。目立たないけど、君は⑥人一倍仕事が出来る人だ。⑦一流シェフ顔負けの料理だってお手のものだし、⑧楽器の演奏や描画といった芸術への造詣も深い。これらが僕の君への興味を支えていることは疑いようがないから、その要素を削ぎ落とせばどうなるかという問いかけは、ナンセンスだ。
 ここまでで分かったことは、君がもつどんな要素が失われたとしても、僕は君への関心を失うということ。でも、そうすると僕にとって重要なのは「君」ではなく、君を構成するエレメントだったということになる。だってそうだろう?君は、君の要素の集合体なんだから。
 だけど、こうも思うんだ。僕を捉えて離さない君の要素である①から⑧を、いや、たとえ君を構成している他の全ての要素を足し合わせた人物が現れたって、今、僕が胸を張って好きだと言える君には決してならないんじゃないかって。
 そうか。今、分かったよ。僕が何故こんなにも、君に魅了されているのか。どうしてこんな簡単なことに、今まで気づかなかったんだろう。
 全体は部分の総和じゃないんだ。
 僕は君の、


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