獅子身中の虫
ある案件、当初はプランAで進んでおり、製品の認証も取れていた。量産もこれで始まるかと思われた。
しかしここで、ビジネスパートナーから要請があった。曰く、
プランAはコストが高いから、プランBを考えてほしい。客がそう言っている。
とのこと。客が言っているというターゲットコストは極めて厳しいものだった。
因みに、客と直接やり取りしているのはそのビジネスパートナー(技術協力会社)だ。又聞きではあるが、客がそう言うなら、と努力してプランBは順調に進んでいた。色々新規の取引先を探して協力を依頼し、その甲斐あってサンプルも完成し、客に出すことができた。
でも、一向に評価が返ってこない。まだですか、と催促してもはぐらかされる。そんな日が3ヶ月は続き、
つい先日、そのビジネスパートナーが弊社に来た。良い機会だと、何回も何回も訊いた質問を、改めてぶつけてみた。
「サンプルの評価まだですか?」
「封を開けてすらいないと思う」
「御社がコスト安くしたいから、と我々に依頼してきたんですよね?サンプルの試作も外注でやってて、その会社さんからもせっつかれてるんで、早く評価してもらえませんかね?」
「というより、お客さんはプランBにはもう興味ないと思う」
「どういうことですか?」
「プランCっていうのがあって、それがもっと安くできるらしくて、今はそれしか眼中にないみたい」
「じゃあ、プランBはもう終わりっていうことですか?死んだってことですか?」
「死んだね」
「それいつの話ですか?」
「3か月くらい前かな」
「何で言ってくれなかったんですか?」
「あれ?言って無かったっけ?」
「聞いてませんけど」
「ごめんね」
「……」
プランBについては元々、依頼がきたから仕方なく進めていたことだ。やりたくてやったわけじゃない。
取引先も新しく作って打ち合わせを何回もして、試行錯誤の末厳しい価格にも対応できそうという話になり、さらには試作品を作って量産も出来そうな体勢を構築する、というところまで漕ぎ着けたのだ。因みにプランBを進めるために関係を開始した取引先は一社じゃない。5社ほどある。
ところが、知らないうちにそのプロジェクト自体が終わっていたらしい。そのことを、一体彼らにどう説明すればいいんだろう。
「色々対応いただいてありがとうございました。でも実は我々が取り組んできたこの話、ずっと前に無くなってました。死んでました。大変申し訳ございません」
とでも言えばいいのかな。
相手の反応を思い浮かべると笑ってしまいそうになるのは、自分の置かれた状況がグロすぎて他人事にしか感じられないからだと思う。真面目に考えると頭がおかしくなりそうだから。
最後に、今の俺が何考えてるか分かりますか?
正解は、
「ビジネスパートナー(笑)を◯◯したい」
でした。