ほうき森の仲間たち 【👑王様の口笛】series3
ほうき森の仲間たち
「王様の口笛」より
第二章
【絡まる糸】
前章までのあらすじ
カモライの森で暮らす哲学者、黒猫のニーケは遠い昔々に自分の愚かな言動で大切な友人を失ってしまった。
取り戻せない友情は歳月と共に忘却の彼方へ消え去ろうとしていたある日、それはまるで神の導きなのか…
天から舞い降りて来たように一羽のオオワシ、グリークがニーケの新たな運命の扉を押し開け、共にニーケの思いを果たすべく故郷、ほうき森へと旅立ちます。
長く険しい旅の途中、永遠の命を手にいれた王と妃の罠にはまりながらも賢者、グリークの機転でニーケは死の谷、イバラヤブノ王国を無事脱出。
再び目指すは故郷のほうき森…そこには長く音信の途絶えたニーケの親友、オオカミのヴァディスバ.コルトがいるはず…
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日暮から降り始めた雨は夜半過ぎには白い粉雪に変わっていました。
「とうとう、降り出しましたね、雪…」
ロバタは暖炉に焚べた薪を長い火掻き棒で奥へ奥へと押しやりながらポツリと呟くようにそう言いました。
「遠いカモライの森からどうしてニーケさんがひとりでこの森にやって来れたのか。そして、どうしてこの私を訪ねてくださったのか…ニーケさんのお話を聞いていく内にその謎は少しずつ解けていきました。グリークさんですね?」
「えぇ…」
「グリークさんがあなたをこの森に、私の居るこの場所に連れて来てくださったのですね?」
ロバタはニーケの美しい瞳を真っ直ぐに見つめてそう言いました。
「そうです!グリークが命からがら何度も諦めかけた私を守り、励まし、ここまで連れて来てくれました。
そして、私が会いたいと願う友人、オオカミのヴァディスバ.コルトーが唯一心を開いていると言うあなたの所に導いてくれたのです。
グリークの身体はもうボロボロに疲れ切ってしまっていて、今、坂の上の病院?そこでやすんでいます」
ニーケはそう言って少し不安気な瞳でロバタを見つめ返しました。
「グリークさんはいつだってそうだ…」ロバタはそう言って小さく頭を振ると暖炉の脇に掛けた鉄瓶を掴み上げながら言いました。
「グリークさんはいつだって困っている者や不条理なことから目を逸らさず、勇気を持って立ち向かってくれる。自分のことなど気にもせずに…
それにしても長く危険な旅でしたね。それにちょうど良い塩梅に今日からこの森に雪が降り始めました。ひと足遅れでしたら、この森には入っては来れなかったでしょう」
ニーケはいつの間にか白み始めた窓の外に目をやると、しんしんと音もなく降り頻る雪がまるで今まで旅で起きた全てのことを覆い尽くして行くようで、胸の底から切なさがふつふつと湧いてくるのでした。
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