降水確率0%の通り雨3《君の遠雷 僕の健忘性体質》10
「あ、皇子だ」
「皇子いうな、で、どうだ」
「こっちは止めた、そっちは?」
「大体は止めた。しばらく動けないだろう」
「となると、問題は」
「「時相の隙間」」
「時間の落ち込みを止める、、か、裂け目があるのか」
「落ち込みというのは時間の流れが速くなっているということだろ、何か要因があるのか」
「で、それを取り除けばずり落ちも止まる、かな」
「あのー」
「だめよ、あまね、時間を止めればなんて、却下よ」
「それは最後の手段にします」
「なら、最後の手段は永遠に封印だ」
「あの、そうではなくて、時空が歪むのって、ものすごく重いものが、ずんっと近くにあるときですよね」
「そうね、重力の重い、例えばブラックホールが、、あるの??」
「はい、舟の中からおっきいなーって思ってみてました。不思議なベールにくるまれているので、主に時間だけを引き寄せるみたいです」
「よく、みえたな」
「舟の内装が白銀だったので」
「そういうものか?」
「そういうものです」
「じゃあ、どうやって消せるかだが」
「だから、私が飛びー」
「「「却下」」」
「あまね、すぐ自分捨てるの悪い癖」
「そう、直してくれ」
「同感」
「はあ、すいません??」
「ブラックホールって何でも食べる胃袋みたいね」
「あまねみたいだ」
「馬鹿にしないで、美味しいものしか食べません!」
「不味いものなら?」
「吐いちゃうかも・・・ブラックホールに不味いもの食べさせたら吸い込むのを止めるでしょうか!?」
「いや、そもそもブラックホールに味覚があるかどうか」
「お腹いっぱい、不味いものを詰め込む必要はないのよ、ほんの少しゲラ不味いものを、となると、そうよ!丸薬!!」
「だから、ブラックホールに味覚、、おーいあまねちゃん?」
あまねは、食糧庫や薬品庫をバタバタとあさりだした。そして、テーブルの上にそれらと何か丸いものをのせた。
「あまね、それって」
「うん、私の盾、まな板にもなるのよ、便利でしょう?」
神々しい光を発していた盾がまな板、って
えーと、鶏ガラと、鷹の爪、塩コショウにっと。
何やら食材と調味料を混ぜながらあまねは歌いだした。
「くーちを大きくあけまして、あーんしてごーらんはいはいはい~、できた丸薬!」
こぶし大の丸いどす黒いものがテーブルの上にある。
「料理作ってたんじゃないの?」
「まさか、お料理ならあずさねえさんにお願いするわ。これは、吐剤です、あ、言っときますけど味見とかしない方がいいですよ、ゲラ不味い上に100年は吐き続けるように調合してあります。人生詰みますよ」
「うっ」
「でもこんな小さいのに本当に効くの?」
「任せてください!腹持ちも考慮して、お腹の中で膨らむようにマンナンを入れました!」
「聞くの怖いけど、どれくらいに膨らむの?」
「太陽10個分くらいかな」
「「「え”」」」
「あんまりいじらないでくださいね、膨らんじゃうから」
後ずさりっっっ
長老あんたに聞きたい!あんたの元主人て、まっどさいえん???
長老の高笑いが聞こえた気がした。
そして、実験の日
飛空艇からそっと、丸薬を宙に放つ。
「はは、本当に大きくなった」
門脇が渇いた声で言う。
「ブラちゃんのお腹に入ればもっと一気に膨らむのよ」
あまねが楽しそうに言う。
「さあ、ブラちゃん一杯食べて大きくなるんだよ」
「ねえ、吐くときってどんなになるのかな」
2人は手を取り合ってわくわくしている。
「ブラックホールまであと5,4,」
ありさの声が響く。ごくっ。
「3,2,1、命中!」
一瞬の間を置き、獣の咆哮のような音が響いた、おぇ~
吸い込まれかけていた物体の動きが止まる。と、次の瞬間ブラックホールから物体があふれてきた。
「「あははー吐いてる吐いてる!」」
あまねとあきつはぴょんぴょん跳ねて喜んでいる、が男2人は渋い顔をしている。
「きもちわるい」
「成功ね」
操縦席からありさが降りてきた。
「そうですね、あとは、重力の開放が始まれば、うん、どうしましたか、お2人さん?」
「気持ち悪いとでも思ってんのよ、軟弱ね」
「仕方ありませんよ、箱入りですから」
アハハ、と女性陣が笑う。
悔しいけどその通りなので何も言えない、そこで話題を変えることにした。
「これで、戦争をする理由もなくなった。あまねを捕まえる理由もない。ということで、あまね、国へ帰らないか。吸収の国はお前の故郷なんだろう。一緒に帰ろう」
「まったくもって馬鹿。あまねはその国に追放されたのよ、忘れたの?なんで捨てられた国に帰るのよ。あまねはずっと私たちと一緒にいるの。統始もそれなりにいいところよ。」
「とても、とてもうれしいんだけど、あの、みんな私の事もうご存じなんですよ、ね」
「隠れ姫?時止めの姫?」
「本当の事です。私は皆よりずっと長い時間を生きてきた、空に浮かぶ“魔”として。追放されたのは、力を恐れられたからじゃない、力を利用して他国より国を守る、毒を以て毒を制する為の“魔”を異空間に作ったんです。」
「あまね」
「だけど、今こうして、舟という殻を破って外へ出てきてしまった。私にその気がなくとも時空にどんな影響が出るかわからない。
だから、
やはり、ここにはいられない、です。
本当に楽しかった。皆と会えて一生分のドラマのネタができたし、だから、もう一度舟に戻ります。ほんとはね、簡単なの、舟創るの。でも、あまりにも楽しかったから、戻る気になれなくて。でも時空が滑り出したって聞いてから、ああ私がここに来たせいって思って、戻る覚悟はしてたんです。だから、さよならです。こういう時、いってらっしゃいっていうのよね?
バシッ
「え?」
「“魔”なんだよな、だったら俺も連れていけ」
「え?叩かれた?」
「悪いとは思わない、馬鹿な事言うからだ」
「たける?」
「“魔”なんだろう?だったら俺も”魔”だ。ずっと、小さいころからそう言われてきた。疫病神ってな。だから、俺がお前の中の”魔”にとっての疫病神になってやる。一緒に連れていけ」
「え、でも、あなためちゃ年下だし」
「「「こだわるのそこ??」」」
「お前だってずっと寝てただけじゃないか!人生経験なら俺の方が上だ!(多分)」
「なんですって~~」
「なんだよ」
「はい、そこまで。で、聞きたいんだけど、あまね、私たちから離れてご飯どうするつもり?」
「あ」
「自炊するの?」
「えと」
「食材は?」
「・・・」
「お金なくちゃ、買えないよね?」
「~~~」
「以前あまね言ってたよね、兆候が現れたら切り捨ててくださいと。そして、切り捨て方は私たちに任せると。」
「はい」
「切り捨てるわね」
「、、はい」
「あなたの、、過去を切り捨てる!!」
ごおーー
爆風が巻き起こる、ありさの持つ大鉈によって、そしてちぎられた花びらが風に舞い消えていった。
「これは?」
「あなたの過去よ、もう縛られることはないの」
「力は?」
「それは、消すことはできないわ、あなた自身だもの」
でも、新しい未来を創っていける。ね。
「さて、過去が消えたまっさらなあまねは何がしたいの?」
「おなかすいた」
「ふふ、そういうと思ってごはん用意していますよ」
「よーし、ご飯食べよ、さ、あまね」
あまねは、ぼーっとしている。だが、だんだんと、目に輝きを取り戻していく。そして、にっこりと笑った。
「うん、、!!たける?ご飯食べないの?冷めちゃうよ?門脇も」
ごはんごはんとあまねとあきつは腕を組んでいってしまった。
たけるはボーゼンとしている。
「もしかしてスルーされた?」一世一代の告白を?
「えっと、どんまい?」
「だから、慰めはいい、、」