降水確率0%の通り雨4《君の雷雲 僕の離脱性体質》10
部屋に入ると、大きな円卓があって、入り口の向かいに時の神の后がすわっていた。
「かあさま、それに、姉さんたち?」
「どうしてここに」
「たけるからここの座標をきいたから、先回りしていたの」
「いえ、どうしてかあさまと一緒にいるのかと」
后とありさたちは顔を見合わせ、やがて、后が言った。
「だって、姪っ子だもの」
「「えーーーー」」
「聞いてない、聞いてないよねえさん」
「言ってないもの、これは、親戚内でもトップシークレットなの」
「どうして?」
「おじさまの素行が悪くて、親戚中から総スカン食らっているからよ」
後ろで、この神なにやってたんだ、とたけると門脇がヒソヒソ話している。あきらはギリギリと歯を食いしばっている。
「ここの座標も、たけるに聞かなければわからなかったくらい、親戚付き合いがなかったから。おばさまとはしょっちゅう内緒で通話してたけれどね。おじさまがあきらに、ちょっかいかけようとしているっていう情報は、おばさまから聞いたの」
「ちょっと待って、じゃ、俺とあきらは」
「正真正銘のいとこよ」
「あいす!」
「あきら!」
「「うわーー」」
「うれしい!すっごくうれしい」
「だから、あんなに運命感じてたんだ、そうだったんだ」
2人は抱き合って喜んでいる。
「なあ、たける、この展開って」
「言うな」
あきらとあいすの喜びの爆発が収まったところで、
「他に質問ある?」
と后が聞いてきた。
「時の神がこんなことをした理由が知りたいです」
たけるが聞く。
あまねを舟に乗せて漂流させ、異次元へと飛ばそうとし、たけるを襲わせ、あきらを誘拐しようとし、そして今回あきらを攫った。そんな、諸々のことをする理由は?
后がふーっと息をつく。
「単純なことよ。ただの嫉妬」
「嫉妬?」
「まあ、おじさまの名誉?のためにいうと、おじさまが、表立って動いたのは、舟へと幽閉したこと、あまねに太陽のかけらを投げつけたことと、今回の掻っ攫いだけよ。裏で動いている分にはわからないけどね」
と、ありさ。
「ひどいなあ、私が裏でこそこそするような神に見えるのかい?」
と、部屋の隅で小さくいじけていた時の神が、口を挟む。
「長老に聞きましょうか」
あずさが一刀両断する。
時の神はまた拗ねた態勢に戻った。
「わかった?」
「いえ、まったく」
「つまり、娘が自分以上に他の人と仲が良いのが許せないらしいわ、特に男の人」
「だけど、そもそも、時止め姫の力の制御のために、俺を連れてきたのは時の神ですよね。鏡面体の俺を探してまで」
「そういうの気にかけない人なの」
「は?」
「自分の行動の結果なんて二の次で、自分の気持ちだけが大事な人なのよ」
「なあ」
「うん」
(親子だ)
「え、なに」
「「いやなんでも」」
「だから、”神”なんてやってるのよ」
「かあさま?」
「悪意は、ないわ。だからって、何でも許せるものでもない。他人を振り回しているのだもの、それはそれ、これはこれよ。あなたたち、時の神に仕返ししてもいいのよ」
「え、そんなことできるの?」
「私が、あの人の力を抑えておく。思う存分やりなさい」
(神界ってかかあ天下だったんだ)