研究書評Ⅱ
2024/9/26
2024/10/03 田中宏樹(2016)
文献情報:田中宏樹「世代別政治力が自治体による教育の公的助成に与える影響―年齢別投票率を用いた実証分析―」『公共選択』66号p.49‐65
① 選択理由
今回選択した文献は田中宏樹(2016)「世代別政治力が自治体による教育の公的助成に与える影響―年齢別投票列を用いた実証分析―」である。ゼミ論文Ⅰや前期末発表において「そもそもシルバー民主主義は存在するのか」や「シルバー民主主義が存在することよる問題点」などを上手く説明する事ができなかった。そのことから、まず「シルバー民主主義が存在することによる問題点」から調べてみようと考え、この文献を選択した。
② 内容
少子高齢化の進展により、地方自治体の就学支援施策に高齢世代(若年世代)の選好が反映されやすく(反映されにくく)なるかどうかを、人口動態要因のみならず、世代別の政治参加要因(投票率)も考慮して検証を行った。具体的には、教育に対する公的助成を代表するものとして、地方自治体に裁量の余地がある準要保護率(準要保護児童生徒数/公立小中学校児童生徒数)に着目し、年齢別の有権者比率のみならず、年齢別の投票率との間に統計的な優位性が認められるかどうかを、都道府県別のパネルデータを用いた実証分析によって検証した。
結果として、以下の三点が明らかとなった。第一に、少子高齢化に伴う高齢世代の相対的な政治力の上昇は、人口動態のみならず、投票行動を通じても、自治体の準要保護率の低下を招いている可能性がある。第二に、少子高齢化に伴う高齢世代の相対的な政治力の上昇は、人口動態を通じて、私立高校の授業料等軽減実施率の低下をもたらしている可能性がある。第三に、「地方財政健全化法」の施行により、自治体の財政規律に対する姿勢が変化したことで、財政力が準要保護率の設定に与える影響に構造変化が生じた可能性がある。
筆者はこれらのことから、就学援助受給率を左右する準要保護率の設定や私立高校の授業料等軽減助成の実施において、選挙を通じた民主的統制を通じ、抑制圧力が生じている可能性を示唆するとした。また、これらの是正法として選挙権の年齢引き下げなど若年世代の政治力を担保する法制度上の見直しが必要となると結論付けた。
最後に課題を三点示し、第一に、都道府県別のパネルデータでなく、市町村別のデータ用をいることによる分析の厳密化である。その理由としては準要保護率の設定については市町村に裁量権があるためである。第二に、自治体の選挙データを用いた分析の厳格化である。これは教育に対する公的助成の運用実態を踏まえれば、地方自治体の選挙を対象とするべきであるためだ。第三に、準要保護率や私立高校の授業料等軽減助成をめぐる自治体の運営実態を反映した分析の精緻化である。これは市町村間で運用に大きな格差があるためだ。
③ 結論
少子高齢化・高齢者の高投票率によって教育の公的助成(準要保護率および授業料等軽減実施)がマイナス影響を受けていることが分かった。これはシルバー民主主義が存在することによる問題ということができるだろう。
齋藤・亀田(2018)で示されていたように、少子高齢化、人口動態の変化による影響というよりもライフヒストリーを進まない人(子どもを持たない人)の増加によって教育への投資という将来世代の福祉の代弁が行われなかったのではないか。
2024/10/10 丸島令子、有光興記(2007)
文献情報:丸島令子、有光興記(2007)「世代性関心と世代性行動尺度の改訂版作成と信頼性、妥当性の検討」『心理学研究』78巻3号.303-309ページ
①選択理由
今回選択した文献は、丸島令子、有光興記(2007)「世代性関心と世代性行動尺度の改訂版作成と信頼性、妥当性の検討」である。高齢者が労働において若年層と関係を持つことにより、世代性の向上が起こるのではないかと仮定を立てたが、実際に適当であるのか田渕、三浦(2014)を参考に、高齢者の若者への利他的行動チェックリストをもとに検討したいと考えたため選択した。
②内容
Erikson (1950) が世代性(第一義的には、「次世代を確立させて導くことへの関心」)を中年期の標準年齢的な発達課題と捉えたのに対して、他の研究者は現代のライフサイクルの構造変化により、Eriksonの段階論は旧式と述べられるようにもなる (Korte, 1984)。こうした背景を受け、McAdams & de St. Aubin (1992,1998) は、個体性と関係性への成人個々の欲求が動機づけとなって、世代性の関心は行動へとつながるというモデルを示し、世代性の関心尺度 (Loyola Generativity Scale:以下LGS) と行動チェックリスト (Generativity Behavior Checklist:以下GBC) を作成して調査研究を行った。
一方日本では、丸島 (2005) が、McAdams & de St. Aubin (1992) によるLGSとGBCを日本語に訳し、日本語版世代性関心尺度 (Generative Concern Scale:以下GCS)および日本語版世代性行動尺度 (GBC) を作成し、創造性、世話、世代継承性の3因子を導いた。しかし、GCSとGBCには一部下位尺度の内的整合性 (信頼性) が低いこと、世代継承性関心と世代継承性行為に相関が認められないこと、という信頼性と妥当性の面で問題があった。その原因としては米国文化に基づく項目を翻訳したことにより内容的妥当性が欠如していた点や、因子分析を行い下位尺度に分類した結果、尺度ごとの項目数が減少した点などが挙げられた。それらを踏まえ、本論文では、項目の日本文化化、内容妥当性の確保、項目数の増加による下位尺度での信頼性の増加を行ったGCSとGBCの尺度構成を行った。
丸島 (2005) を参考にし、改訂版GCS (以下GCS-R) 30項目と、改訂版GBC (GBC-R) 34項目を作成し、適当な因子の抽出を行った。GCS-Rでは、項目への回答の偏りや、共通性の低さ (ここでは主に内容の不明瞭さ) を元に抽出を行った。GBC-Rでは、回答への偏りを探った結果、外部との関係を必要とする項目を対象から外され、共通性の低さに基づいて抽出を行った。結果としてGCS-Rは全20項目、GBC-Rは全23項目となった。
③結論
世話行為
1. 多くの後輩に影響を及ぼすようなことをした。
2. 若い人が積極的について来てくれるように、私のやり方をしっかりと決め、指導した。
3. 自分が責任を持っていた仕事や役割を後輩に任せた。
4. 聴衆の前で講演や発表をした。
5. 若い人が面倒な問題の処理に私を頼ってきたので、助けた。
6. 自分の考えが実践できて、良い結果が出た。
7. 困難な問題が山積みしていたが、一つずつ片づけた。
創造性行為
1. 自分の夢が実現するような関心を見つけた。
2. 自分のためになにか新しいことを習得することを始めた。
3. 自分で一生楽しめるなと思える趣味を見つけた。
4. 創作した(芸術作品から日常的なものまで)。
5. 他の人とは一味違うファッションを選んだ。
6. まだやり残したものがあるので、その一つをやる計画を立てた。
7. 自分のアイデアで生活環境の改革をした。
世代継承性行為
1. 先祖のまつり(法事など)を家族と、また親族を招いて行った。
2. 子どもの主張することをじっくり聞き、話し合った。
3. お墓参りをした。
4. 若い人達に敬語は大切にして使うように言った。
5. 子供や、老親に必要に財政的援助を行った。
6. 老親の昔話に長い時間付き合った。
7. 私はこれからの世の中、私の家族や若い人達がどのようになるのか心配で、そのことを彼等と話し合った。
8. 家庭、職場、また地域の関係での大事な行事(誕生日、入学式、敬老の日、祭り)に参加した。
9. 子どもにお話しをしてあげた。
以上がGBC-Rとして挙げられた。世話行為の1,2,3,5、創造性行為の2、世代継承性行為の4,8が労働に関係すると考えられるため、世代性に関する行動として労働は適当だと考える。
2024/10/17 田渕恵、中川威、権藤恭之、小森昌彦(2012)
文献情報:田渕恵、中川威、権藤恭之、小森昌彦(2012)「高齢者における短縮版Generativity尺度の作成と信頼度・妥当性の検討」『厚生の指標』59巻3号.1-7ページ.
①選択理由
今回選択した文献は、田渕恵、中川威、権藤恭之、小森昌彦(2012)「高齢者における短縮版Generativity尺度の作成と信頼度・妥当性の検討」である。田渕・三浦(2014)では、高齢者の世代性を測る尺度として短縮版Generativity尺度を用いていた。そこで、短縮版Generativity尺度について詳しく知りたいと考え選択した。
②内容
子育て支援事業などの支援活動に対し高い意欲を持っている高齢者は、Generativity(世代性:家庭内での子育てや職場での部下の指導などを通した、次の世代を担う若者への関心)が高いことが報告されている。高齢者のGenerativityを測定することは、高齢者の社会活動を推進する上でも重要であると考えられる。
Generativityを測定する尺度はいくつか存在するが、定義を詳細に検討し、その概念を整理したという点で研究に多大な影響を与えたのはMcAdams & Aubin(1992)の「Loyola Generativity Scale(LGS)」である。わが国においては、丸島(2005)がLGSを基に日本語版Generativity関心尺度の作成を試み、さらに丸島・有光(2007(2024/10/10書評))が丸島の尺度内容の再検討を行うことにより改訂版Generativity関心尺度を報告している。しかしながら丸島らの日本語版Generativity関心尺度には課題が示されている。具体的にはMcAdamsらの概念整理の段階では構成概念の一部であった「創造性」が中核的な位置を占めるという点で、LGSと内容的に乖離が認められること、改訂版Generativity関心尺 度の項目数が多く、項目表現が冗長であり、特に高齢者を対象とした研究では使用が困難であることが挙げられる。
これらのことから、本文献では、わが国における尺度のLGSからの乖離と、高齢者を対象とした尺度の不足という2点の問題を解決することを目的とした。まずMcAdamsらの概念モデルと尺度内容に立ち戻り、再検討したLGSの日本語訳を用いてGenerativity尺度を作成した。次に、作成したGenerativity尺度の短縮版を作成し、その妥当性および信頼性について検討した。
その結果、短縮版Generativity尺度として、Generativityの5側面それぞれ対応した尺度が1つずつ挙げられた。尺度は以下の通りである。
「永く記憶に残る貢献・遺産」:「私が死んでも、人は私のことを覚えていてくれるだろう」
「次世代のための知識や技能の伝達」:「自分の経験や知識を人に伝えようとしている」
「次世代の世話と責任」:「無理のない範囲で募金がしたい」
「コミュニティや隣人への貢献」:「私が人のためにしてきたことは、後世にも残ると思う」
「創造性」:「何かに向かって前進していると感じる」
短縮版の妥当性についても、20項目版Generativity尺度やGenerativity行動尺度との間にそれぞれ高程度、中程度の相関が認められ、妥当性が示された。また、高齢者の年齢、世代性行動とも相関が認められたことも妥当性を高めると言える。
③結論
2024/10/31 藤原佳典(2012)
文献情報:藤原佳典(2012)「世代間交流における実践的研究の現状と課題 老年学研究の視座から」『日本世代間交流学会誌』2巻1号.3-8ページ
①選択理由
今回選択した文献は、藤原佳典(2012)「世代間交流における実践的研究の現状と課題 老年学研究の視座から」である。世代間交流の促進による世代性の向上を図るという活動がなぜ行われてこなかったのかという質問があり、それに関する論文を探した。
②内容
論文全体としては、少子高齢化や核家族化が進む日本社会で、地域や家族内での世代間交流の重要性が再認識されている一方、実際の交流プログラムが普及しにくい現状とその要因、また普及に向けた課題解決の方策を探るという内容である。
著者は、交流プログラムを阻む要因として以下の3つを指摘している。第一に、世代間の確執である。世代間には価値観や経験の違いからくる潜在的な葛藤があり、短期的な交流ではポジティブな関係構築が難しいとされている。特に、日本では「ジェネレーションギャップ」がネガティブな側面として作用しやすく、若年層は高齢者に対して拒絶感を抱くこともあると指摘されている。第二に、世代間交流の必要性が希薄化していることである。現代社会ではインターネットや便利なサービスが普及し、親世代や祖父母世代の知恵や経験を必要とする機会が減少している。さらに、防犯教育の影響で、見知らぬ高齢者と交流することに対して子どもや親が警戒心を持つ傾向もある。第三に、企画・運営の負担である。交流プログラムを運営する施設職員や学校職員にとって、企画・運営は多忙な業務にさらに負担が加わることになり、長期的・継続的なプログラムとしての導入が難しいという問題がある。これらの課題により、世代間交流は理念としては推奨されるものの、現場では普及が進みにくい現状が浮き彫りにされている。
これらの問題を解決するため、著者は「REPRINTS」という実践研究を例に、効果的な交流プログラムを設計する方法を提案している。「REPRINTS」では、子どもに高齢者が絵本を読み聞かせすることで互恵的な関係を築くことを目指し、短期的にも健康や社会的ネットワークにプラスの影響をもたらしたことが示された。さらに、関与する全ての人にとってメリットのある活動設計の重要性を強調している。具体的には、高齢者ボランティアには社会的な参加機会が提供され、子どもは高齢者への肯定的なイメージを持ち続けることができ、親世代も心理的・物理的な負担が軽減されるなど、参加者全員に利益がもたらされることである。また、交流プログラムの持続可能性を高めるために、科学的で客観的な評価手法の導入が提案されており、これにより交流プログラムの効果をエビデンスに基づいて示すことが可能になると述べている。
③結論
世代間の確執、世代間交流の必要性が希薄化、企画・運営の負担によって世代間交流が阻害されている。
2024/11/07 田渕恵、権藤恭之(2011)
①選択理由
今回選択した文献は、田渕恵、権藤恭之(2011)「高齢者の次世代に対する利他的行動意欲における 世代性の影響」である。中間発表で、世代性や利他的行動について知識が不足していると感じた。そこで、それらに関する論文を探した。
②内容
利他的行動がなぜ起こるのかを説明した理論の一つに内的ワーキングモデルが挙げられる。内的ワーキングモデル(Bowlby,1969)とは、自分は他者から愛され信頼される人物かという自己に関する確信と、他者は自分の求めに応じてくれる信頼できる存在かという他者に関する確信からなるモデルである。幼児期に養育者との安定的な経験を持つ者は、自己や他者を信頼できるようになるため、様々な人間関係において利他的行動が生起しやすいとされている(おそらく、利他的行動は信頼関係がないと生起しないから)(Simpson,Rholes,Orinea,& Grich,2002)
しかし、高齢期の利他行動において内的ワーキングモデルの当てはまりは良好ではないことが示された(田渕・中原2010)。そこで、もう一つの有力な理論として「新しい存在や新しい製作物や新しい概念を生み出すこと」と定義される世代性に着目した。
本文献では、上記の内的ワーキングモデルと世代性の二つの理論が、高齢者の次世代に対する利他的行動を説明するのかという仮説の検証を行った。また、世代性の発達には、幼児期の養育者との関係により達成された第1段階の他者への信頼が再び重要となり、養育者との関係に対する評価が世代性の高さに影響していることが先行研究で報告されている(An&Cooney,2006; Ochse & Plug,1986)。そこで、幼児期の養育者との関係が、世代性に影響するとの仮説を立てた。また、子育て観がポジティブである者は、世代性が高いという報告(Christiansen & Palkovitz,1998)や、親としての満足感の高さが世代性の高さと関係しているという報告(Heath & Heath,1991)から、子育て観の良好性が世代性に影響すると仮説を立てた。
調査に当たって高齢者の次世代に対する利他的行動の一つの枠組みとして、高齢者による地域子育て支援が取り上げられた。これは、就学前児童をもつ母親への地域支援として同地域在住の高齢者が支援者となるという新たな子育て支援の枠組みである(内閣府、 2005)。高齢者による地域子育て支援の導入は、家庭内・地域で孤立が問題となっている母親への地域支援を活性化させるのみならず、高齢者の地域における役割の獲得にもつながると考えられ、少子高齢化問題の解決策の一つとして注目されている。この支援の枠組みは高齢者の次世代に対する利他的行動が社会発展に寄与することを説明した「祖母仮説」を、社会システムの中に意図的に再現した枠組みの一つである。そこで本研究では、高齢者の地域子育て支援意欲を、高齢者の次世代に対する利他的行動意欲の一つとして扱った。
結果として、幼児期の養育者との関係および子育て観は、世代性を媒介して間接的に子育て支援意欲と関係していることが明らかとなった。高齢者では、幼児期の経験が現在の利他的行動に直接的に影響するという内的ワーキングモデル理論よりも、壮年期以降の心理的発達である世代性理論を組み入れたモデルがより適切であることが考えられるとした。
③結論
簡単に言えば、幼児期に親(養育者)と良好な関係をもった人は、子育て観も良好になり、高齢期になっても子育て支援意欲が高くなる。しかし、壮年期以降に心理的発達(世代性の向上)が起こった人は、より一層子育て支援意欲が高まることが分かった、と述べている。これらのことから、高齢者に若い世代と接する機会を設けることで、子育て支援意欲、利他的行動意欲が高められるのではないか、と考えた。
2024/11/14 田渕恵、中川威、石岡良子、権藤恭之(2014)
文献情報:田渕恵、中川威、石岡良子、権藤恭之(2012)「高齢者の世代性および世代性行動と心理的Well-beingの関係 若年者からのフィードバックに着目した検討」『日本世代間交流学会誌』2巻1号.19-24ページ
①選択理由
今回選択した文献は、田渕恵、中川威、石岡良子、権藤恭之(2012)「高齢者の世代性および世代性行動と心理的Well-beingの関係 若年者からのフィードバックに着目した検討」である。
②内容
1. はじめに
本研究は、高齢者の世代性(generativity)と世代性行動が心理的Well-being(精神的に健全に生きているかどうか)にどのように関与するかを、若年者からのフィードバックによる媒介効果を通じて検討することを目的としている。世代性はエリクソンによって「次世代を導く関心」として定義されており、心理的な発達課題として特に高齢者の社会的役割を支える要素と考えられている。世代性と心理的Well-beingには直接的な関係があり、世代性行動は若年者からのフィードバックを介することによって心理的Well-beingへの関係、つまり、ネガティブな感情が低減され、ポジティブな感情が向上すると予測される。
2. 方法
対象者は関西地域の生涯学習施設に通う高齢者287名(平均年齢64.47歳)で、質問紙調査を用いてデータ収集が行われた。調査内容は、性別や経済状況といった基本属性、世代性と世代性行動の尺度、若年者からのフィードバック、そしてポジティブ・ネガティブの感情的Well-beingである。世代性の測定には「Loyola Generativity Scale(LGS)」を、世代性行動の測定には「世代性行動尺度改訂版(GBC-R)」を採用した。
3. 結果
調査結果に基づき、ピアソンの積率相関分析が行われた。世代性と世代性行動はポジティブWell-beingとネガティブWell-beingに影響を与えていることが明らかになったが、若年者からのフィードバックがネガティブ感情においてのみ媒介要因として作用することが確認された。ポジティブ感情については、世代性と世代性行動が直接影響するが、若年者からのフィードバックの媒介効果は見られなかった。
4. 考察
結果から、若年者からのフィードバックが高齢者の感情的ウェルビーイングに対して異なる効果を持つことが示された。ポジティブWell-beingは世代性行動によって高まるが、ネガティブWell-beingの低減には若年者からの肯定的なフィードバックが必要である。フィードバック尺度は主にネガティブな場面を想定しているため、ポジティブなフィードバックを想定した尺度の導入が今後の研究で求められる。また、本研究のサンプルが生涯学習施設の高齢者に偏っているため、結果の一般化には注意が必要である。
③結論
私の研究は世代性行動が世代性に影響を与え、次の世代性行動に繋がるという研究から、世代性行動(労働による若年層との交流)が世代性に影響を与え、次の世代性行動(若年層のことを考えた投票)に繋がるのではないかという研究である。今回の文献は、世代性が世代性行動に影響を与え、さらに若年層からのフィードバックがあった場合に高齢者の心理状況がどのように変化するのかという、私の研究の次の段階を示したものと言える。
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