Web小説発掘記 その290 変態サイコ、ダンジョンマスターに転生したので気ままに異世界を征く 作者 朽木貴士様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093084061980084

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第1章 魔王への覚醒』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

 通り魔から妹を庇って死んだ筈の男、神崎創哉。
 彼は気が付くと、ダンジョンマスターになっていた。
 彼の新しい心臓であるダンジョンコアは、人間からは栄誉や欲望のために狙われ、魔物からは砕いてその内に秘められた魔力を吸収し進化するために狙われるという、非常に厄介な代物だった!? しかもダンジョンマスター自ら外の世界に行き、エリアボスと呼ばれるその地域に現時点で存在する最も強力な存在を無力化させなければ、配下の魔物を召喚することすら出来ないだって!!? それなんてクソゲーだよ!  
 
 そんなこんなで周り全てが敵であるダンジョンと期せずして運命共同体になってしまった彼は、死なないようダンジョンを発展させていく。その途上で数多の仲間たちと出会い、心の赴くまま時に苛烈に、時にのんびりと、彼らは最強のダンジョンを造り上げる!!

「周り全てが敵? だったら、天下統一して敵を味方に変えるなり無力化するなりすればいいのさ!」

※↑のセリフは、未来の言葉。現時点では、主人公一行の方向性はまだ定まっていません

ストーリーと見所

異世界転生(?)した主人公が、ダンジョンマスターとなって女の子(幼女多め)と一緒に妙に残酷なことをしながら身を立てていく物語。

お話としては軽い語り口とそれに相反するような残酷描写やキャラクターの生い立ちなどが魅力となっている。
ステータスやそこに使われている用語など、いい意味で何処かで見たことがある要素が多く、作品自体の親しみやすさに繋がっている。

所謂なろう系小説で、少なくとも一章時点では主人公の戦力や能力が相手側を圧倒しており安心した戦闘……というよりも蹂躙を楽しむことができる。

とはいっても基本的に敵になるのは人道を反した行いをしているような人達ばかりなので、その辺りは安定した「ざまぁ」展開に繋がっていたりもするのであまり読んでいてその部分に気を揉むことはない。

言ってしまえばいい意味での人気要素盛りまくり作品。
何処かで見たようなあれこれから、ダンジョン要素に魔物を眷属やら配下に加えポイントを稼ぎ少しずつ領地や自分を成長させ……ざまぁ(?)的に悪役を非道に懲らしめてと。

そういった要素が好きな人には間違いなく刺さる作品。

そこに加えて明確に優れている点として、文章のテンポがよく読みやすい。
なのでかなり話への入り込みがスムーズになっており、わかりやすい物語と相まって読んでいてストレスがないものとなっている。

なのだがまぁ、全体的に説明が多いのと盛り上がり個所を書くためなのかはわからないが展開がすっ飛ばし気味。

加えてダンジョンマスターやダンジョン経営、スキルやらどうにもなろう系をある程度読んでいること前提で話が進む。
なので結構ハイコンテクストな作りとなっており、「なろう系ってこうだよね」と納得できないと読んでいて違和感も多々ある。

またキャラクター同士のやり取りがどうにも説明的で、長台詞で心情や身の上を語る場面が目立つ。

もう少し掘り下げてほしい要素などが長々とした語りだけで処理されてしまうのは、肝となっているエログロパートを見たい人にはプラスかも知れないがこの辺りは人によるといったところだろう。

キャラクター

神崎創哉

物語の主人公。

タイトルやあらすじでサイコキャラとされているが、読んでいてそういった印象は薄い。

もっというと戦闘時の性格豹変を指しているのだとは思うのだが、一章の時点ではサイコパスキャラというよりは単純に性格が入れ替わっている感の方が強い。

その辺りは主張次第といってしまえばそこまでだが、すんなりと納得できるものではなかった。

シスコン要素に関しても、一章の時点では取り敢えずの行動指針でしかなく読んでいて首を傾げる部分ではある。

とはいえこれも全て一章時点での話。
二章以降を読み込んでいけばもっと色々な面が見られる可能性も大いにありえる。

神崎奏

物語のヒロイン。

色々酷い目にあっていたところを主人公に助けられ恋仲になる。

どうにも全体的な台詞に説明感が強い。

総評

評価点

非常に読みやすい文章が魅力的。

特に字の文はスラスラ読み進めることができて、その辺りが主人公達がある程度相手を蹂躙するようなわかりやすく爽快感があるストーリーと上手く噛み合っている。

人気作でよく使われる用語や要素が多く、そういった作品が好みならばすんなりと物語に入り込めるだろう。
それらを複合することで、作品のオリジナリティにも繋がっている。

作者さんの意図は理解しやすく、そこに到達するための導線もしっかりとできている。

問題点

良くも悪くも、物語としては飛ばし気味。
面白い部分を手っ取り早く摂取できていいと思うか、若干雑さを感じてしまうかは人によるところだろう。

また上にも書いたが、妙に台詞が説明的になってしまっているのも気になる。ここに関しても上手く省略したと取るかは人によりけり。

全体的にハイコンテクストで、なろう系を履修してないとよくわからない部分がある。もっともここに関しては、そういった読者層を想定しているので大きな問題でもないが。

またこれは一章時点での話だが、主人公の属性であるシスコン、サイコパスがどうにも物語的に都合よく使われている感が強いのは気になるところではある。

勿論、これは今後主人公の掘り下げ次第というところではあるが。

最終評価 55点(Web小説としては普通に良作)

物語の面白さやその導線がはっきりしており、非常に楽しみやすい物語。

展開も早く、テンポがいい。そこに作者さんの文章のキレが加わりかなり読みやすい小説となっている。

所謂なろう系小説の人気がある要素が多く、特にそういった作品を好む層ならば文句なしに楽しむことができるだろう。

成長要素、お色気要素など色々な魅力があるのも良き。

所要時間は『第1章 魔王への覚醒』までで凡そ1時間ほど。

極めて個人的な感想

とにかく滅茶苦茶読みやすい!

文章量結構あるけど、一瞬で読み終わるぐらいには読みやすい。

また良くも悪くも読者に対して「この物語はこう楽しんでね」的な導線が強く、なろう系が好きな人なら結構ハマれそうな物語に思う。

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