Web小説発掘記 その292 木徳直人はミズチを殺す 作者 アンデッド様

本編URL

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前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは第二章『現れる怪物たち』までを読んでの感想、レビューとなります。
※甘口記事です。

あらすじ

『ミズチはアンタをどうするか』

高校生の木徳直人(きとくナオト)は見知らぬ部屋で手足を縛られていた。
目の前には刃物を持った謎の女。彼女は自身をミズチと名乗った。
記憶から脱出の糸口を探す直人。
彼を処刑しようと迫るミズチ。
二人の対話の先、決死の直人は反撃の一手に出る――

幸運にも生き延びた彼の前に、再び狂気の女がやって来る。

「――ミズチはね、魔女なの」

ミズチとの事件。それは謎を伴う闇の闘争のきっかけに過ぎなかった。
学園で力に目覚める者、敵対者達。
彼らが直人とミズチの前に現れる。
生死を賭ける暗闘が幕を切った。

――しかし事態は思わぬ変化をしていく。

「お前を、殺してやる」

人と悪、狂気の果て、希望の物語。

ストーリーと見所

拉致監禁から始まるサスペンスファンタジー。

ヒロインから拉致された主人公は、殺されそうなところを危機一髪でなんとか脱出する。
数日間家で塞ぎ込んでいた主人公の元に当のヒロインが現れて……というのが物語の始まり。

ストーリーの序盤から読者の引き込む力は非常に高く、そこから現実離れした物語が展開していく。

一章は主人公とヒロインの立場や状況の説明が主なのだが、それも拉致監禁から始まるという衝撃的なスタートを切ってくれているため説明されても飽きがこない。

それどころか、こんな行動をとったヒロインの考えやそれに対する主人公の対応などが気になって早く物語を読み進めたい衝動にも駆られていく。

二章からは魔術を用いた戦いが展開されるが、まずは相手の生い立ちや立場をはっきりと書くことでどういった敵が相手なのか、またそういう敵に対してどう立ち回るのかを想像させるような土台を組み立てている。

そしていざ戦いが始まれば、緩急の付いたスピード感のある展開によって飽きる間もなく戦いが終わってしまう。
この辺りも見事で、内容は濃いのにあっさりと、もう少しヒロインの活躍を見たくなるような後を引くような戦いの内容となっていた。

そして二章ラストの台詞、それこそがこの作品の特異性と面白さを何よりも表現しているといっていいだろう。

個人的には『章末話「グリーンルーム」』のヒロインの語りの部分は、上手く余計なところを省略しつつ必要な説明をして、なおかつアニメの1シーンのように見せる上手い演出に思えた。

総じてレベルの高い、読んで損なしの作品。

キャラクター

木徳直人

物語の主人公。
取り敢えず二章段階では彼が戦うわけではなくヒロインの戦いを見ているのが主な役割。

かといって影が薄くなることもなく、殺人を行うヒロインを受け入れたり妙に冷静な部分があったりと色々と謎が見え隠れする面白いキャラクターとして成り立っている。

ヒロインの胸に目がいってしまったりと思春期的な部分が見えるのも良き。

ミズチ

ヒロイン。

詳しく語るとネタバレになるので本編をどうぞ。

キャラクターとしては狂気と、何処か可愛らしさの両方の魅力を持っている。
なので読んでいてストーリーが彼女ばかりに引っ張られるようになっていないのは、実にいい塩梅。

総評

※甘口なので評価点、問題点はなし。

最終評価 XX点(甘口なので点数はなし)

総じてレベルが高い、サスペンス+バトルの現代ファンタジー小説。

設定もさることながらキャラクターが特に魅力的で、ヒロインのミズチは狂気の中に女の子的な可愛らしさがあって彼女の存在だけで一気にストーリーに引き込まれる。

それ以外にも疾走感のある戦闘や、所々で挟まれるまるで映像作品のような演出など、作品の個性として際立っている部分も数多い良作小説。

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