Web小説発掘記 その304 異世界ゴーレムカンパニー 作者 ゆーたん(たけのこ派)様
本編URL
https://m.neopage.com/book/30496626311219900
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第30話 改修……完工??』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
大手ゼネコンの下請け会社で働く小林太盛(こばやしたいせい)は激務の中で仮眠中に過労の末、低体温症で死亡してしまう。
だが死んだはずの彼がいたのは、謎の異世界だった。
その世界に転生した彼は、ガチムキゴリマッチョな神から転生ボーナスのスキル『ゴーレム作成』を与えられる。
スキルを戦闘に使った太盛だったがゴーレムは戦闘に全く役立たず。だがこれで諦めず、彼は何か出来ないかと考えた。
その結果たどり着いたのは、ゴーレムはロボットのようなモノ、それなら不眠不休で働かせればいいというものだった
エレベーターや橋を現代技術で作り、ゴーレムを建築の仕事で使う事で成功した太盛の前に、以前溝にハマって死にかけていたのを助けてあげた一人の少女が姿を見せ、彼に不吉な予言を残した。
「お兄さん、相当呪われてるね。このままじゃ死ぬのだ」
それを聞いてしまった太盛は驚愕した。一体、何故オレがそんな目に??
彼が作り出す未来には、何が待っているのだろうか?
ストーリーと見所
ゼネコン下請けで働く主人公が死亡して異世界転生して……という風な始まりをするストロングスタイルなろう小説。
戦闘メインではなく、逆に戦いには役に立たないスキルであるゴーレムを利用して建築などで成り上がっていく(?)ことが物語の主軸となっている。
ストーリーとしては気持ちいいぐらいに純度の高いなろう小説で、よくいえばテンポよく話が進み、読んでいて煩わしさがない。
悪くいえば細かい部分をすっ飛ばして、ともすれば多少……いやそれなりのご都合主義で話が進んでいくのでその辺りがノイズになって行ってしまう人には厳しいかも知れない。
とはいえ内容としてはわかりやすく、文章のテンポもいい。
何をするのかも伝わりやすく、ストーリーの楽しみ方はかなり明確に提示されているのでそういった意味では読みやすさは抜群の小説といっていいだろう。
全体的に見ればなろう系ということもあって、ストーリーも明るく親しみやすい物語と言っていい。
またストーリーに関してもブラック企業の下請けである主人公が、別の転生者であるブラック経営者と対立したりと、読んでいると建築業であることを意識した独特の展開になってくる。
なのだが、やはりそこはなろう系の悪い部分もしっかりと出てしまっている。
全体的に用語などがなろう系を前提として作られているので、それらの知識がないといきなり出てくるゲーム用語に近い言葉に面食らうこともあるだろう。
また描写や表現、台詞回しに関しても読んでいて結構怪しい部分がある。
設定周りも今一つはっきりしていないところがあり、本当に細かい部分を気にしない人ならば楽しめるといった感じだろうか。
キャラクター
小林太盛
主人公。
細かな人格部分の描写は少なめの、言ってしまえば標準的なろう主人公といった感じではある。
特に悪いことをするような人物ではないので、読んでいて違和感を覚えることはないだろう。
基本的には彼の一人称で物語は進んでいく。
モッカ
物語のヒロイン……?
獣人の少女で、主人公と行動を共にする。
可愛い。
総評
評価点
話のテンポはとてもいい。
主人公があまり苦労せず、トントン拍子で話が進むなろう系としては結構な出来で、そこに建築関係という独自の要素がプラスされているのも作品のユニークさに一役買っている。
特にブラック企業に勤めたことが原因で過労死した主人公が、不眠不休で働けるゴーレムに対して同じようなことを強いていたことに気付く場面などは作品のテーマを生かしたいい場面と言えるだろう。
問題点
やはり読んでいると細かい部分が気になる。
所謂なろう系の文脈に関しては目を瞑るとしても、物語を動かすための展開がご都合主義過ぎてやや雑に感じることがある。
台詞回しや表現も前後で重複していたり、するっと頭に入ってこない言い回しだったりと読んでいて「ん?」となることも。
全体的に展開を回すのにやや性急な感じがあるのは否めない。
最終評価 54点(Web小説としては普通に良作)
テンポよく、安定した物語の展開を約束してくれる良作なろう小説。
読んでいて気になる部分がないといえば嘘になるが、逆にいえばそれらの要素にこだわらない人ならば充分に楽しめる作品になっているだろう。
特に建築業やブラック企業などが上手く作品に合わさっていて、それらの展開は読んでいて非常に興味をそそるものとなっている。
所要時間は『第30話 改修……完工??』までで凡そ1時間ほど。