Web小説発掘記 その297 Orpheus der Barde ~冥奏のオルフェウス~ 作者 平中なごん様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/1177354054895601021

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。

前書き

 羊角騎士団の組織改革のため、新団員探しの旅を続けているハーソン、アウグスト、そして、前回団員に迎えられたもと魔女のメデイアの三人に預言皇庁より新たな異教討伐の指令が下る。今度は「魂を奪う」と噂される吟遊詩人を討てというのだ。
 目撃情報のあるチャーメルンの町を訪れたハーソンは、それと思しき竪琴を弾く吟遊詩人オルペを見つけ出すが、彼は亡き恋人の魂を取り戻そうとする若者を描く「冥府下りの詩」を語って聞かせる…。
 オルペと亡き恋人、メデイアのハーソンへの想いが交錯する悲恋のファンタジー☆

ストーリーと見所

こちら同作者さんの別作品からのスピンオフの続編(?)であろう感じの作品。
前作はこちら↓

ということで本流の作品におけるライバル的な役割を主人公に添えた、恐らくは本編に登場するまでの過去話(違うかも)を描いた作品。
その続編というわけである。

要はスピンオフの続編なので、作者さんの世界観を知っている人ならより楽しむことができるであろう作品となっている。
一応、前作にあたる部分を読んでないとわからない部分はあるのでそれだけはご注意を。

こちらの作者さんの作品の魅力といえば、なんと言っても深く作り込まれた世界観だろう。
キャラクター一人一人に深い設定があり、だからこそ行動原理がはっきりとしていて、そういった部分がキャラクターの魅力に繋がっている。

今作もその多分に漏れず、登場人物の背景を掘り下げてからの事件解決というお話。
とはいえ長さ的には中編なので、そこまで込み入った事情もなく割とお話としてはわかりやすい。

そういった意味では作品単体としては読みやすいが、その分インパクトも弱めに感じてしまったのもまた事実。

とはいえこの辺りはまぁ、仕方がない部分もあるだろう。

どうしても世界観が細かく組まれている分、用語が頻出してしまうところもあるのだが、それを加味しても読みやすいお話にまとまっているのはお見事。

キャラクター

ドン・ハーソン・デ・テッサリオ

前作に引き続き、物語の主人公。

今回も騎士としての立ち振る舞いを忘れず、酒場で情報代わりに奢るシーンなどは彼のキャラクター性がよく表れている。

ただ出番でいうと少し控えめではある。

メデイア

前作のヒロインで今作もヒロイン。

主人公への恋心を自覚していく過程が可愛い。
物語的にも活躍が多く、今回は半分ぐらいは彼女のお話でもある。

総評

評価点

読みやすい文章に、作り込まれた設定が魅力。

今回は同じ主人公の作品としては二作目となっているということもあってか、説明が少なく文章がすっきりしているのも優しい。

お話的にも中編ということで分量は少なく、綺麗にまとまっている。

問題点

物語的な問題ではないのだが、流石に前作を読んでいないとよくわからないところはあるので読むなら先にそちらをといったところ。

またストーリーに関しては良くも悪くも無難であり、テーマになっているオルフェウスの有名なあれが説明だけで済まされてしまっていたところは少し残念といえるかも。

最終評価 54点(Web小説としては充分な良作)

前作に引き続き、キャラクターと世界観がとても魅力的な作品。

舞台となる土地一つとっても名物料理などが考えられており、世界観を楽しむという意味ではとても優れた小説となっている。

キャラクターも芯が通っており、作品全体に安定感がある。

とても読みやすく、楽しみやすい良作小説。

所要時間は凡そ30分ほど。

極めて個人的な感想

作中でお話として出てくる笛吹男と掛けてチャーメルンの町からの名物料理ラ・メーンのセンス、正直好き。

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