Web小説発掘記 その286 気弱少女と機械仕掛けの戦士 作者 円宮 模人様
本編URL
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前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『エピソード1短編集 幕間』から『エピソード2 幕間』までを読んだ感想、レビューになります。
あらすじ
気弱少女は求人広告に騙された!
"誰でもできる"の謳い文句と高給に釣られて、主人公『アオイ』は開拓星ウラシェの巨大危険生物を人型兵器で掃討する武装警備員になる。期待とやる気とは裏腹に、ロクな訓練も受けないまま弾丸とモンスターがぶつかり合う戦場に迷い込み、待っていたのは借金返済もままならないブラックな日々。
だがある日、愛想&気遣いゼロの少年『ソウ』が現れた。彼に誘われて飛び込んだ新天地で待っていたのは……。
ドタバタお仕事モノであり、正統派バディ小説でもある凡人少女のSF新社会人物語
ロボ+バディ+涙あり苦労あり(でもハッピーエンド)な凡人成長譚
ストーリーと見所
……の前に、以前の記事がこちら↓
こちらは短編集の記事。
他にも何度かレビューを書かせていただいているので、過去記事が気になる方は上手いことリンクを辿って行ってくださいまし。
おまけにしいたけ賞(仮)のボクっ子賞受賞記事↓
と、言うことで何度目かの紹介になるが開拓惑星を舞台にしたライトノベル風SFロボット小説。
なんだか毎回書いているような気がするが、チートやら転生やらがあるわけではない。一昔前の懐かしさが残るライトノベル的な作品となっている。
ちなみに主人公はボクっ子である。
ボクっ子である。
で、一応個人的に本作の優れた点であるSFでありながら読者を置いてけぼりにするような(偏見)用語説明が少なく、かなりわかりやすく物語に入りやすいとか、キャラクターもいい意味でラノベっぽさがあり親しみやすいとか、そういう点は以前も説明しているので最低限にとどめておく。
こちらは物語の二章ということで、ある程度お互いの距離感が掴めた主人公と相棒を軸に新しく登場するキャラクターや敵対するであろう謎の組織へとフォーカスが向いたものとなっている。
特に中心となるのは新キャラの先輩。一応以前から存在を匂わされてはいたので唐突感はなく、その上でしっかりと主人公達の先輩としての立ち回りを見せる。
かと思えば彼女自身に全く問題がないわけではなく、前半は主人公達の新たな課題。そして後半は先輩を中心とした問題の解決と物語の構成も綺麗にまとまっていて実にお見事。
物語としても前回の主人公と相棒に焦点をあてたものから、お馴染みの任務からの謎の組織の暗躍へとスムーズに移行していて話が頭に入ってきやすい。
特に後半の盛り上がりに関してはかなりのもので、散りばめられていた伏線の回収も相まってかなり読んでいて気持ちいい。
それだけではなく、戦闘シーンにおいても各キャラクターの強みを生かす試みがなされており、連携して戦っている感が強く出るものとなっている。
特に主人公と相棒のコンビネーションは、お互いに信頼感が生まれていることもあってか読んでいて感慨深いものがある。
などなど、全体的にクオリティが高く大きな問題もない良作小説である。
キャラクター
アオイ
物語の主人公。
ボクっ子だあああぁぁぁぁぁぁ……はもういいか。
気弱系のボクっ子で、戦闘技術もメンバーでは最下位。
なのだが生物に対する知識と、観察眼で戦闘やそれ以外の部分も活躍するので主人公としての存在感は充分なものとなっている。
一章から変わらずの弱気具合と、相棒であるソウを信じて行動する成長具合がちょうどいいバランス。
ソウ
主人公の相棒。
不愛想で無口な男だが、言うべきことはいいことも悪いこともしっかり言う。
一章ではかなりの強キャラ具合を見せていた彼の人格や能力にも掘り下げが入っており、二章を通じてより彼の強味や弱味を知ることができる。
こちらもアオイと同じく一章を終えての成長具合が上手く描かれており、彼女に対しての強い信頼を読み取ることができるのもとても良き。
シノブ
二章のメインキャラクターで、主人公達二人の先輩にあたる。
先輩として二人を導きつつも、訳ありな過去に向き合うというストーリーラインを作っており、二章を通してメタ的にも物語的にも大活躍する。
キャラクター的にも口は悪いが根はやさしい的な読んでいて気持ちのいい人物となっており、好感が持てる。
総評
評価点
全体的な構成の見事さ、物語としてのクオリティの高さは文句のつけようがない。
序盤中盤で張られた伏線もきっちり回収されているし、その上で各キャラクターの変化と成長もしっかりと描き切っている。
各キャラクターの役割もしっかりしていて、不要なものが殆どない物語的な綺麗さも評価に値する点だろう。
問題点
伏線のためでもあり、物語の構成上仕方がない部分もあるのだが……。
正直特に序盤中盤では代わり映えのしない戦闘シーンが続いて、ちょっとダレ気味ではある。
とはいえその中にも伏線や各キャラクターの必要なやりとりが納められているので、ちょっと難しいところではある。
最終評価 58点(Web小説としては文句なしの良作)
とにかくお見事なお話の構成に目がいく良作小説。
その上で各キャラクターもしっかりと人物像を確立しており、行動に違和感がない。
戦闘シーンにおいてそれは顕著で、各々の得意を生かした戦い方はまさにチームで戦っている雰囲気が強く出ており臨場感がある。
お話としても物語の謎や敵(多分)組織の姿も少しずつ見えてきて、盛り上がり間違いなしの章となっている。
所要時間は『エピソード1短編集 幕間』から『エピソード2 幕間』までで凡そ2時間ほど。
極めて個人的な感想
ボクっ子ばんざあああぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!