Web小説発掘記 その311 【461さんバズり録】〜ダンジョンオタクの無能力者、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまうw〜 作者 三丈 夕六様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093072862688424

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※今回は同じ作品の複数回目という都合+作者さんのリクエストにより感想の色が濃い目で書かせていただきます。
『清澄白河ダンジョン攻略 編』から『帰還後の世界編』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

ん?配信者はちゃんと攻略しないのか?楽しいのに。

栃木から東京に引っ越して来た探索者「461(ヨロイ)さん」。彼は元引きこもりながら12年間の経歴を持つベテランダンジョン探索者。

ウッキウキで東京のダンジョンに挑む461さん。

たまたま居合わせた美少女配信者によってボス戦を配信されてしまった461さん。

有名配信者に意図せず実力差を見せ付けてしまう461さん。

スキルゴリ押しダンジョン配信者が溢れ返った世界では、彼の堅実な攻略スキルは異次元級のチート能力に映り、思わぬ所でバズり散らしてしまうのだった。

その日から、彼の元には次々とダンジョン配信者達が現れて……。

これは堅実ダンジョン攻略をする461さんがバズり散らし、世界中を魅了していく物語である。

ストーリーと見所

以前に書いた記事はこちら↓

今回は個人的な視点で見た感想多めということで、ちょっとこの作品を読んだ人とズレたことを語っている可能性もあります。
なのでまぁ、先んじてこちらの作品の客観的な評価を述べておくのなら。

新しいことへの挑戦と読者に対する親切心、物語としてのクオリティを高い次元で表現している作品。
先に株を買っておくならば、この作品もしくは同レベルの作品を安定して生み出せるならば一つのゴールとしての書籍化もあり得るでしょう。
そのぐらいの良さを秘めた作品である。
そんなんお前に言われんでもわかるって?まあそれはそう。

なのでまぁ、誠に身勝手ながら今回は本当に書籍化作品を購入して、その感想を語るつもりで書かせていただきます。

一応今回読んだ最新話以前の話を軽くしておくのなら、個人的には上手い作品といった印象。
上にも書いた通りダンジョン配信というジャンルで、読者が適度に気持ちよくなりつつ作者さん独自の世界観も表現できている。
あちこちにパロディなどを散らばらせたり、主人公の特技を如何にもWeb小説のメイン読者層が好むような形にしているのもお見事。

ただ個人的な好みを含めた意見を言わせてもらうのなら、良くも悪くもタイトルにある通りの予定調和のお話ともいえる。
その辺りは筆者(僕ね)がWeb小説のメイン読者層からは若干外れているからの感想だろう。
もう少し予想を裏切ってくれるような話があった方が好みという話。
こちらの作品の落ち度ではない。

……で、ここからは現在読んだ部分の話。
折角なので章ごとに軽く感想を。

清澄白河ダンジョン攻略 編

前回登場した新キャラの掘り下げ回。
わかりやすいパロディが多かった感。

お話としては安定していてとても良き。

聖剣アスカルオ編

所謂修行回。

一応次の章へ続くお話的な意味合いもあるのかな?
主人公のパワーアップはワクワク展開ではあるんだけど、元々強い印象があるのでまぁ……といった感じ。

ちょっとダレたのは秘密。

モモチー事件 編

箸休め回。

このぐらい強烈なキャラクターはとても良き。
彼女だけではないが、こういうキャラクターが出ているときはかなり筆が乗っている感があってかなり楽しめる。

探索者試験編

このタイミングでこういう話か、といったところ。

次の話も考慮するなら前回と含めてちょうどいい箸休めになるのかなと。
この辺りはシンプルに話の好みの問題だろう。

新宿迷宮編

で、問題のお話。
一応今回読ませてもらった分では一番長い章となっている。

この話を持ってこの小説のレベルは一つ上に上がった。多分、きっと。
そのぐらい面白いお話だった。
これまで散りばめられてきた各キャラクターの活躍が余すところなく見え、その上で読んでいてごちゃつくことなく綺麗にまとまっている。

物語の始まりと終盤に主人公が「探索者」について語る場面がある。
特に最初のダンジョンに対する高揚感を語るシーンで、一気に物語に芯が入った。
暗躍やらなんやらで若干ブレていた空気が一気にダンジョン探索を楽しむ物語へと引き戻されたのだ。
その場面がとても印象深く、個人的にはこの章をや主人公を象徴するシーンといってもいいぐらいである。

主人公達が強くなっていく確認もできたし、新キャラを含めた登場人物もいい味を出している。

これまでかなりWebファーストに物語を書いてきた作者さんの出汁が上手く出ている章となっている。
確実にこの話でギアが一段上がっている。
敵側の事情も語られドラマとしての良さも増していると、全体を通して面白い章だった。

これはまぁ、あくまでも個人的な好みの話なので無視してくれて構わないのだが。
正直なところここまでは『上手い』、『よくできている』、『よく考えられている』話だったのが、筆者の中で明確に『面白い小説』になったといってもいいだろう。

キャラクターについて

こちらもメインキャラクターについてはこれまでも語っているので、今回読んだ分で印象に残った人達について語らせていただく。

鯱女王

前回に引き続き掘り下げが進んだキャラクター。

圧倒的な強者としての立ち振る舞いと、その唯我独尊振りは彼女が出てくるだけで物語全体に高揚感がもたらされる。

色々とアレな人である部分や、人間性の目覚め的なところが書かれていたのもよかった。

パララもん+ポイズン社長

お前……ちょっといい話じゃねえか……。

勝者マン

こいつ好き。
適当っぽく参加した明らかな助っ人でありながら、キャラクターとしてのインパクトは充分。

パーティメンバーの戦力として数えられつつもその特異すぎる人間性にあまり会話に入らないのでメンバーが増えたことによる描写や台詞のごちゃつきが抑えられている。

その上で特徴がありすぎるのと、それまでの仲間による突っ込み的なやりとりでしっかりと存在感がアピールされていたりとなんか色々な方向から巧さが見えるキャラクター。

総評

評価点

評価点に関してはだいたい上に書いた通り。

安定したストーリーと、読者に優しい物語の作り方。

少しばかり物足りなかった部分に今回の章でギアが一段上がって、全体的な安定感から少し乱暴な方向に舵を切ったのは個人的には非常に高評価。

いい意味で、ここから先のストーリーが読めなくなって期待感が増したといっていいだろう。

問題点

一応ここに関しては敢えていちゃもんをつけるなら、と予防線を張っておく。
個人的に上にも書いた通り、ストーリーに関しては今回の章で素直に面白いと褒められるものが出来上がっている。

反面、勿論これは前提としてWeb小説としては充分過ぎるし、Web小説発の書籍化作品の域には達しているのだが。
メインキャラクターに関しては読んでいて印象の弱さが拭えない。

主人公に関しては今回読んだ分でかなり補強できたものの、ヒロイン二人に関してはどうにも現状今一つといった感想。

良くも悪くもキャラクターが主人公ありきになりすぎているというか。
ヒロインなんだからそれでいいじゃんって?まあそれはそう。
この辺りは好みも含めたうえで敢えて語るなら、といったところではある。

ただまぁ、今回読んだ分でここから先に波乱がありそうな展開もあったし、ここからといったところだろう。
きっとこちらの予想を超えてくれると思わせる作品になっているし。

最終評価 66点(Web小説としては文句なしの秀作小説)

非常に優れた安定感を持った小説であることを前提として、そこに今回のお話で明らかな作者さんのパワーが加わっている。

物語としてのクオリティは非常に高く、筆者がWeb小説に明るくないということもあるが「Web小説書いてバズりたいけどどうすればいい?」と問われればこの作品を参考にするといいと答えてもいいだろう。

作品としての完成度はかなり高い。文句なし。

所要時間は『清澄白河ダンジョン攻略 編』から『帰還後の世界編』までで凡そ2時間30分ほど。




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