素晴らしきWeb小説紹介 その8 月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚 作者 浦出卓郎様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16817139554775204635
前書き
こちらはネタ成分多めの感想、レビュー記事になります。
予めご了承の上お楽しみください。
また記事の性質上ネタバレを含みますのでご注意ください。
※こちらは第六話までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
※本文より引用
戦後――
人種根絶を目指した独裁政党スワスティカが崩壊、三つの国へと分かれた。
オルランド公国、ヒルデガルト共和国、カザック自治領。
ある者は敗戦で苦汁をなめ、ある者は戦勝気分で沸き立つ世間を、綺譚蒐集者《アンソロジスト》ルナ・ペルッツは、メイド兼従者兼馭者の吸血鬼ズデンカと時代遅れの馬車に乗って今日も征く。
綺譚――
面白い話、奇妙な話を彼女に提供した者は願いが一つ叶う、という噂があった。
ここで語られる物語は実に残酷で、幻想的で、退廃的にも見える
ストーリーと見所でも語るとしよう。
主人公であるルナ・ぺルッツを中心としたこの物語は、あらすじにある通り彼女が各地で語られる『お話』を集める物語となる。
話しの構成としては主にそこで出会った人から語られる『お話』を描いた短編形式で、『鐘楼の悪魔』と言うキーワードを追いながら、少しずつ物語が進んでいく。
かなり雰囲気のある文体で書かれたゴシックホラー小説。物語のテンポは非常によく、程よい長さで一編が区切られているためその言う意味でも読みやすい。
文章力に関しては素晴らしいの一言。物語全体の雰囲気と上手くマッチしながらも、しっかりと読みやすいように書かれている。
登場人物達の会話も、くどさがないがそれぞれの性格や関係を端的に表現できている。
ゴシックホラーと上に書いた通り物語全編を通しての雰囲気は暗めだが、主人公達のキャラクターがいい味を出しているのでそれほど陰鬱すぎる空気にはならず読み進めることができる。
それぞれのエピソードも非常に完成度が高く、それだけで短編としての充分な面白さを持っている。
キャラクター
ルナ・ペルッツ
物語の主人公。
物語の蒐集家であり、旅先で面白そうな奇譚を聞いてはそれらを集めて回っている。
そして面白い物語を聞かせてくれた人には願いを一つ叶えてあげている。
ズデンカ
ルナの従者。主に暴力担当。
粗っぽい口調が特徴的な女性だが、意外と情に脆く悲惨な境遇に涙ぐんたりすることもある。
ルナが冷静な分彼女が色々なことに突っ込んだり怒ったりしてくれるおかげで、読者が非常に物語の世界に入りやすくなっているナイスな役割を果たしてくれる。
総評
評価点
高い文章力で書かれた幻想的なホラー小説。
メインキャラクターの掛け合いから、語られる物語、そして要所に挟まれる狂気性すら滲ませるような残酷描写に至るまで非常に高いレベルでまとまっており、文句の付け所を探す方が難しいレベル。
問題点
ない。
最終評価 10億点(普通に書籍化されていても不思議ではない小説)
まるで不思議な世界に取り込まれてしまうような、そんな錯覚を覚えてしまうぐらいに精巧に書かれたゴシックホラー。
作者さんの狂気とか、そう言うのがふんだんに盛り込まれた物語は一目見てしまえば読み続ける以外の選択肢が奪われてしまう。
上に書いた通り何故書籍化されていないのか不思議なレベル(されてたらごめんなさい)の作品。是非ご覧あれ。
所要時間は六話までで凡そ1時間ほど。