Web小説発掘記 その324 半魔転生―異世界は思いの外厳しく― 作者 狐山 犬太様
本編URL
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前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『幕間 「誕生日」』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
退屈な日々を過ごしていたアラサー社会人の主人公がトラック事故に巻き込まれ、目を覚ますと人と魔族のハーフの赤ん坊に!?
夢にまで見た異世界転生! ファンタジーを楽しみ尽くすと意気込むものの、現実はそう甘く無く。
発動しない魔術に、半魔の身は禁忌と言われ、育った故郷には災禍が降りかかる……
思い描いたチートや無双は無く、厳しく理不尽な現実に、主人公ライル・ガースレイは抗い生きる。
重厚なファンタジー好きな方、魅力的なキャラクターが好きな方、主人公が切磋琢磨して成長するのが好きな方にオススメ出来る作品です。
チート無双無しの王道異世界転生、いかがですか?
ストーリーと見所
かなりオーソドックスな、王道異世界転生ものの小説。
所謂なろう系というか、Web系の基本的な流れを汲んでおり子供に戻っての異世界転生からの成長劇となっている。
他の作品と違うところがあるとすれば、割と早い段階で要所に衝撃な展開が用意されているということだろうか。
実は作者さんには『一章第五話』まででいいといわれていたのだが、ちょっと判断がつかなかったのと面白かったのでついつい四章の終わりまで読んでしまった作品。
ここに関しては構成としては非常に巧みで、最初の衝撃展開があったため、物語に対して安定しすぎないことに対する期待を持ちながら読み進めることができる。
ストーリーとしてはあらすじにもある通り、所謂異世界転生チート無双抜きとなっている。
少しずつ成長していく主人公や、彼を中心
として変化していく環境など作品としての見所はしっかりと用意されている。
作品としての評価を先に語っておくなら、かなり出来のいい作品となっている。
大きな欠点や引っ掛かりもなく、物語として楽しめる要素も多い。
ストーリーの展開は王道でシンプルだが、そういった部分を丁寧に不足なく描いてくれているため、物語への没入感がありかなり楽しみやすいものとなっている。
文章に関しては結構読みやすい部類。
基本的に一人称視点で主人公の心情を交えて語られるので、物語を見失いにくいのはとてもありがたい。
反面少し描写や表現は控えめだが、ライトノベルとしてはむしろ標準的であり充分個性の範疇。
Web小説の何処かライトな雰囲気を保ちつつ、要所で大きな転機を入れ込んでくれているため飽きがこないと、総じてかなり完成度が高い小説となっている。
キャラクター
ライル・ガースレイ
物語の主人公。
アラサーが転生して、半魔と呼ばれる魔族と人間のハーフとして生まれ変わった。
物語は彼の一人称で進むので、どういった人物かは比較的把握しやすい。
少しお調子者な部分はあるが、決してふざけすぎてはいないという塩梅が程よい。
ストーリーに重めの要素がある分、彼のキャラクター性というか心情でバランスをとっているといったところだろうか。
ルコン
物語のヒロイン……恐らく。
ロリである。
可愛い。
取り敢えず読んだ段階ではマスコット兼戦闘員的な印象。
主人公と合わせて成長していく枠ではあると予想できるので、これから先がとても楽しみなキャラクターではある。
総評
評価点
物語の作りが丁寧で、ストーリーは王道でありながら山場をしっかりと用意している。
文章が読みやすく、主人公のキャラクター像も掴みやすい。
またそれ以外の登場人物も気のいいキャラクターが多く、物語全体の親しみやすさに繋がっている。
ストーリーは王道でありながらも決して安定だけを提供するわけではなく、程よい波乱やここから先への期待や不安など先を読ませる力に長けた構成をしている。
問題点
丁寧ではあるのだが、ストーリー展開はやや駆け足気味。
Web小説の標準で言えばそんなものかも知れないが、もう少し丁寧に見せてほしいところがあったのも事実。
なのでキャラクターに愛着が沸く前に次々と登場したり退場したりと、その辺りに関しては読んでいて気持ちが追い付かないところがあった。
上と少し被るが、山場である4章に関しては登場人物が多くごっちゃり感があった。
基本的に作品としての出来は極めていいので、上記のあれこれは本当に敢えて問題点を語るならといったところではある。
最終評価 58点(Web小説としては充分な良作)
王道を行くストーリーと魅力的なキャラクター、先の展開に対する期待感など面白い要素が詰め込まれた良作ファンタジー小説。
所謂なろう系とは少し趣を変えながらも、主人公の性格やその辺りで遠くなりすぎない程度に上手くバランスをとっているのが実にお見事。
かなり幅広い読者に受け入れられるような独自の作風となっている。
所要時間は『幕間 「誕生日」』までで凡そ1時間20分ほど。