Web小説発掘記 その298 『アイ』の偏り 作者 天井 萌花様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093086026567203

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは記事を書いた時点での最新話である『『アイ』を探して』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

 高校2年生の日高 絵李(ひだか えり)は美術部に所属している。
 絵を描くことが大好きで上手い彼女には、1つだけ悩みがあった。

 それは――コンクールで1番(金賞)を取れないこと。
 銀賞や銅賞、佳作は当然のように取れるのに、金賞だけはどうしても取ることができないのだ。

 原因は、彼女の絵に“足りないもの”があること。
 それに気がついた絵李は、“足りないもの”を探し始める。

 「――『アイ』が、足りないねぇ」

 部活行事の交流会で出会った絵の上手い男子生徒は、絵李の絵を見てそう言った。
 自分と、絵と向き合う中で、男子生徒と関わる中で。
 絵李は“足りないもの”を見つけることができるのか――?


 他、人それぞれの『アイ』を描いた物語5本立て。

ストーリーと見所

主人公は美術部所属で絵を描くことが大好き。

毎度の如くコンクールで銀賞や銅賞を取るのだが、金賞までは及ばないといった感じの実力者。
そんな彼女が自分の絵に足りないものである『アイ』を探す物語。

と、こちらの作品、作中にアイという単語が頻出し、それらが様々な意味を持つなんかこう、言葉遊び的な作風となっている。
それが作者さんの描く日常と幻想の間のような作品の空気感と上手く噛み合っている。

主人公の女の子が、自分の絵に足りないものを探す物語……。
何かを描くということ、創作をテーマにして自分の内面と向き合うようなお話……。

かと思ったらいきなり少女漫画が助走つけてぶん殴ってきやがった……!

現れる意味深イケメン!
仄かに恋の予感がしたりしなかったりと、そんなお話。

と、まぁそれは別にいいとして。
一話の空気とは大分変わって、途中からは結構少女漫画テイストが強くなっている。
キャラクター同士のやり取りも可愛らしく、何処となくふんわりと優しい雰囲気で物語は描かれているので話の導線としても悪くはない。

悪くはないのだが、取り敢えず今読んでいる時点では物語全体のふんわり感が少しだけ気になるところではある。

とはいえ、物語自体はまだまだ続くので答えを出すのも早急。
普通に読んで楽しむ分には不足のない、良作青春小説。

キャラクター

日高 絵李

物語の主人公。

絵が好きでコンクールなどに出しても銀賞、銅賞ばかりで金賞が取れないことが悩み。
なのでまぁ、正直なところ悩みにはあまり共感できないというのが正直なところではある。

現状では彼女自身で大きなアクションを起こしたというわけでもなく、性格的にも普通にいい子なので良くも悪くも印象は薄め。

月宮響久

男性キャラクター。
主人公の悩みに対するきっかけをくれる……のだと思う。

この物語がふんわりしてると感じる原因の70%ぐらいは彼にある。

総評

評価点

綺麗で読みやすい文章。
少女漫画的な空気と会話劇は刺さる人にはしっかり刺さるように描かれている。

『アイ』という言葉を巡る物語というのも読んでいて面白く、最終的にはそれがどのような意味を持つのか非常に楽しみな作品。

問題点

これは敢えてなのかも知れないが、取り敢えず序盤の時点ではキャラクターが全体的にふわふわし過ぎている感がある。

なので物語全体の芯もブレていて、読んでいて何を期待すればいいのかが今一つ伝わってこない。

勿論ふわふわしているのは作風ともとれるし、それ自体が絶対的に悪いものではないのでその辺りは好みによるといったところだろう。

最終評価 53点(Web小説としては普通に良作)

色々な意味で未知数な物語。

面白くなりそうな予感はするのだが……というのが現状での評価といったところだろうか。

とはいえ文章やキャラクターの会話、物語の構成などはしっかり上手く書けているため、充分に楽しめる物語であることは間違いない。
テーマである『アイ』にどれだけの意味がつけられるのかということも含めて、先が気になる小説といったところだろうか。

所要時間は記事を書いた時点での最新話である『第8話 誇れるように』までで凡そ20分ほど。

極めて個人的な感想

優しい空気は凄く伝わってくる作品。
なのだが、もっとパワーが欲しい。

パワーを……!

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