Web小説発掘記 その318 フェアリー ∞ キッド ― 超侵略的科学から妖精姫を守るボディガード ― 作者 てぃえむ様
本編URL
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前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらの記事は『3章 天才と愚者・後編 地下研究所カイデス』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
この世を毒す真の敵が誰かわかりますか?
民主主義と集団心理をテーマにした現代ダークファンタジーです。
もし妖精が現代に現れ、それが未来エネルギー枯渇問題の解決を握る存在だったら――人は、そして社会はどんな反応を見せるだろう?
妖精というマイノリティを保護するべきと考える人間は多数派か? 少数派か?
テンプレ要素が一切ありませんが、ニュースに関心のある方には元ネタが理解しやすい設定となっています。
主人公のリュウは「反抗は無意味」を植え付けられた、感情を一部失った少年。
悪役の芹沢ユウジはこの世で最も厄介なタイプの老害を私なりに形にしたキャラクターです。
現代☓科学☓妖精
妖精というマイノリティを巡り、大人と若者が対立する
サイエンス☓現代ダークファンタジー
ストーリーと見所
子供と大人の対立や現代社会の在り方に切り込んだ社会派ダークファンタジー。
暗殺者として育てられた主人公が、特別な力を持った女の子を護りながら学園生活を行っていくというのが主なストーリーの流れ。
作品の特徴としては要所に現代社会を風刺する……にしてはまぁ結構直接的ではあるが、そういった要素が組み込まれているところだろうか。
一般人……といっていいのかは何とも言えないが、所謂群衆的なものを表現するために何かの事象に対してのモブ同士の会話劇が多いのが読んでいて目に留まるポイントでもある。
そういった話をしながらSF+ファンタジーなストーリーを展開していくような流れとなっている。
全体的にダークファンタジーと銘打ってあるように割とショッキングな展開もあり、その辺りに関しては読んでいて驚かされるところでもあるだろう。
と、作者さんのやりたいことや語りたいことは伝わってくる作品ではあるのだが、反面読んでいてその辺りが少し露骨すぎる感があるのは否めない。
勿論テーマを決めてそれを書きだすというのは小説の書き方の一つではあるだろうし、それを否定するつもりはない。
なのだが、エピソードが少なくやや情報過多。
それに加えてこれは個人的な感覚になるので一概に悪いとは言えないが、語りたいことが少しばかり露骨すぎると読んでいて感じてしまったところではある。
キャラクター
羽瀬田リュウ
物語の主人公。
殺しの才能があり裏の世界で活躍していたが、あることをきっかけにそこから逃亡した。
今はお嬢様の護衛をやっている。
良くも悪くも「何となくそういった感じの主人公」といったテイストしか読み取ることができないキャラクター。
立場や属性的な部分は語られているのだが、肝心の彼についての描写は些か薄め。
この辺りは今後の掘り下げを期待といったところだろうか。
総評
評価点
作者さんのやりたいこと、語りたいことはしっかりと表現できている。
意外性のある展開が続き、いい意味で先が読めないストーリーは非常に魅力的。
戦闘シーンに関しては臨場感、迫力、スピード感のバランスがよくかなり楽しんで読むことができる。
問題点
基本的に情報量に対してエピソード量が不足している感が否めない。
勿論これは後で詳しく語る可能性もあるのだろうが、主人公がボディガードになった辺りの話などが顕著。
そういった部分もあってか、基本的にストーリーの流れに唐突さが感じられてしまう。
社会風刺的な部分に関しては人によって評価がわかれるだろう。
わかりやすく意見を伝えてくれているととるか、少しばかり露骨すぎるととるかは難しいところ。
文章に関しては全体的に読みにくさがある。
『――』の多用やモブ会話で状況を伝えるなど、似たような演出が頻繁に出てくるのも気になるところではある。
(とはいえ読者の多くはそんなことは気にしないとは思うので、問題点というほどでもないが)
最終評価 52点(Web小説としては充分な良作)
作者さんのやりたいこと、語りたいことがはっきりと伝わってっくるダークファンタジー小説。
ユニークな設定や社会風刺的な面など、小難しいながらもそれを可能な限りわかりやすく伝えようとしてくれている。
勿論それ以外の部分に焦点をあててみても、暗い過去がある主人公や敵対する人物など先が気になるような描写が数多い。
ダークファンタジー好きに是非読んでみてほしい作品。
所要時間は『3章 天才と愚者・後編 地下研究所カイデス』までで凡そ30分ほど。