Web小説発掘記 その294 Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~ 作者 加藤大樹様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330650090906289

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第三章』を読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

 愛と勇気に育まれた少年、エイル・ノルデンは幸せな日々を過ごしていた。
 ある日、十一歳の誕生日を迎えた彼は、父親と共に狩りに出かける。しかしその帰りに、エイルは不慮の事故に遭ってしまう。それが、少年の過酷な運命の幕開けだった――。
 少年よ、理不尽に抗い続けろ。

ストーリーと見所

第一章はこちら↓

第二章はこちら↓

と、あらすじにある通りなんだか凄い理不尽と不幸が主人公に襲い掛かる系ダークファンタジー。
3章からは物語が本格的に動き始め、ようやく主人公が主人公的なポジションで物語が進んでいく。

ストーリーとしては主人公に更なる悲劇が襲い掛かり、そこから更に黒騎士から逃げたり魔王に覚醒してみたりとかなり息を吐かせない展開が続く。

この辺りに関しては目まぐるしく変わる展開と衝撃の連続で読んでいて本当に飽きない。
文章に関してはかなり読みやすく、特に主人公が怒りや絶望に飲まれる辺りの表現は秀逸。
そこまで目を引くようなところはなかったが、全体的に高いレベルでまとまっているといっていいだろう。

台詞回しもライトノベルとファンタジー文芸作品の中間、両方のいいところを上手く利用している感じがあって、物語の雰囲気やキャラクターの特徴が伝わってくる。

などと、総じて物語に関してはかなり問題なく楽しめる作品なのだが。

少し気になる点としては、これが三章という点だろう。
ここでようやく主人公がそれらしい動きをし始めるのは、やはり少しばかり遅すぎる気がしないでもない。

勿論そこに至るまでに語るべきところがあったことは察するが、今回の三章に関しては一章から続くそれなりの量の文を読み終えてようやく「主人公がそれっぽくなった」というのは些か遅すぎる感が否めない。

とはいえ、この辺りに関しては全体を通して群像劇的な作劇になっている可能性も否定できず、判断するのは早計かもしれないと難しいところ。

キャラクター

エイル・ノルデン

主人公。

一章から不幸な目にあっていたが、今回で更なる悲劇が彼を襲う。
そして敵方(恐らく)の会話を見るにこれからも酷い目にあさわれるらしく、今後の動向が楽しみである。

一章は友人に出番を取られ、二章は別の人物が主役。
ようやく三章になって主人公としての動きが見られ始めてきた。

総評

評価点

読みやすい文章に、先の読めない展開。
また時折語られる幻想的な世界観や魔法が目を引き、設定としても面白い。

友人の父親と主人公の因縁など、三章ではこれから先に備えて面白い因縁が生まれたりと、物語としての見所は多い。

問題点

物語としての着地点というか目的が今一つ不明瞭。
主人公が復讐をするのか、それとも逃げ続けるのか、ただ痛めつけられるだけなのか。
三章の時点でまだその辺りがふんわりしている。

最終評価 54点(Web小説としては普通に良作)

残酷で美しい世界観が魅力のダークファンタジー。

若干立ち上がりの遅さはあるものの、物語や世界観の魅力は充分に備えた作品と言っていいだろう。

作者さんの描く世界やキャラクターを楽しんでほしいという気概が伝わってくるような作品でもある。
非常に読みやすいので、その辺りもとても良き。

所要時間は『三章』を読み終えるまでに凡そ20分ほど。

極めて個人的な感想

お伽噺っぽかった黒騎士が割とぬるっと出てきて驚いた。
そして一章に引き続き過剰にいたぶられる主人公君……。

こういう先の展開が読めない物語は割と読んでいて楽しい。



いいなと思ったら応援しよう!