Web小説発掘記 その335 六道プリンセス!(なろう版) 作者 XX様
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前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第42話 最高に素敵な人』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
宇宙からやって来た知的生物の魂をエネルギー源とする怪物・妖魔神。
そんな妖魔神たちに対抗するため、冥府の女王ヘカーテに命じられ、人間界にやってきた妖精たち。
妖精たちに六道の力を与えられた6人の少女戦士……六道《シックス》プリンセス。
そんな彼女たちが力を合わせて妖魔神を退治する友情の物語。
ストーリーと見所
人の心の闇に憑りついた悪を倒すために変身して戦う所謂変身ヒロインもの。
主人公は正義感の強い女の子、そして相手は人の心の闇を増幅し魔物へと変える謎の集団。
戦いながら仲間を増やしていく王道変身ヒロインもの……ではない。
間違ってもそういう作品ではない。
いやまぁ、変身して戦うのは事実なのだがこちらの作品は全編を通してキレキレでギリギリのギャグがこれでもかと詰め込まれたギャグ作品となっている。
細かい部分に関しては突っ込んでいるときりがないので、気になった人に是非本編を読んでもらうとして……。
まず最初の妖精の名前が『バキ』だったりする。
そして主人公の自宅は大量の落書きがされている……。
この辺りでこの小説がどういった方向性のものであるかはある程度は伝わるだろう。
それに限らずパロディネタが多めではあるが、明らかにギャグとして使っているのでそれほど読んでいて気にはならない。
知っている人がニヤリとできるぐらいの範疇にとどまっている。
キレキレでギリギリの、ブラックに片足突っ込んでるギャグの切れ味は抜群で、読んでいて思わず笑いが込み上げている。
その部分がメインディッシュではあるのだが、個人的にはそれ以外の思わず笑ってしまうワードセンスの数々にも注目したいところ。
変身する魔法少女が気を付けなければならない存在として『体育教師、用務員、コンビニ店長、自分のストーカー、ヤリチン学生』が挙げられてるのは正直普通に笑ってしまった。
などなど、ぶっ飛んだ世界観と正気に見えて狂っている各登場人物達。
そして何よりギリギリを攻めたインターネットの片隅で見るような敵達と、魅力的な要素がこれでもかと詰め込まれたコメディ小説である。
キャラクター
閻魔花蓮
物語の主人公。
名字からして凄いし最初の登場で車に引きずられてる。インパクトは充分。
性格としては標準的な(?)変身ヒロインの主人公といった感じなのだが、世界観が狂ってるのでモノローグや出てくる台詞もナチュラルにバグっていて、それがまた面白さを生み出している。
総評
評価点
ナチュラルに狂った世界観は読んでいると癖になってくる。
物語の初速がとんでもないだけでなく、ある程度読んでも話が全く落ち着かず次から次へとギャグ時空が広がっていくのはコメディ小説としては素晴らしい。
文章に関してはかなり簡素なのだが、それがまた物語の濃度と上手い具合に噛み合っていて面白い。
ギャグ自体は濃い目なのに、文章が読みやすく幾らでもいけてしまうのも個人的には評価点。
問題点
これもまぁ、技術的な問題点ではないのだが。
あらすじにも書いてある通り、若干ブラック気味なネタが多いので人を選ぶ。
……なんか最近似たようなこと書いた気がする。
最終評価 57点(Web小説としては充分な良作)
ある程度人を選ぶ要素はあるかも知れないが、ブラックユーモアが満載の変身ヒロインコメディ小説。
とはいえその部分を抜きにしても圧倒的な物語の初速と、話が進んでもキレを失わないどころか過激になっていくセンスはお見事の一言に尽きる。
文章も非常に読みやすく、濃いめの話なのにすっと頭に入ってくるのも作品と上手く噛み合っている。
ちょっとブラックな笑いが欲しい人にお勧めの作品。
所要時間は『第42話 最高に素敵な人』までで凡そ30分ほど。