ナショナル・トレジャー【映画感想】
■どんな映画?
ニコラス・ケイジ主演、2000年代を舞台にしたアドベンチャー映画。
アメリカ独立運動という歴史の一幕を題材に、その裏に隠された財宝の争奪戦が描かれる。
■ネタバレなしの感想
■良いところ
登場人物は欠点を抱えているが、それでもなお好ましい雰囲気で物語を盛り上げている。
現代を舞台にした財宝探しと、過程シーンはそれなりにスリリングで面白い。
■良くないところ
そもそもの話、荒唐無稽さを受け入れられないと見れない。
■あらすじ
主人公ベンジャミン・フランクリン・ゲイツは幼い頃、祖父から聞かされたある物語を信じ、テンプル騎士団の財宝を探し求めるトレジャーハンターである。
祖父が、その祖父の祖父から聞いたとされる「秘密はシャーロットとともに眠る」というヒントを基に、氷の中に眠る貨物船シャーロット号を首尾よく見つけたベンと協力者であるイアンだったが、次の手がかりがアメリカ最大の重要文書「独立宣言書」にあることを知ると、二人はその扱いを巡って対立することになる。
イアンが独立宣言書の強奪を企んでいるとあらゆる機関に相談するベンだったが、当然門前払いを喰らってしまい、やむを得ず自身も独立宣言書を先に盗み出すことを決める。果たして女神が微笑むのはどちらか…
【感想や解説】
まず、この映画を見る上でやらなくちゃいけないことが一つ。それは「馬鹿になる」こと、それもそこそこの大馬鹿に。そのくらいの気持ちでいないとこの映画は楽しめない。
というか根本的な問題として、宝探し映画というのは未知や未開がどんどん失せていく近代世界においては成立させることが非常に難しいものなんだよね。
それを念頭に置いた上で、頭の中からリアリティを排除して、そのぶんロマンを詰め込めば問題なく楽しめるはず。それを簡単に言ってしまうと「馬鹿になれ」ということなのである。
改めて作品の内容に触れていくと、まぁあらすじの時点で相当おかしなことになっているのは否めない。誰も信じてくれないからって自ら盗むってのはどうなのよ。それも最初は盗む盗まないでイアンと袂を分かったというのに。
根本の部分にそんな疑問を抱えながら物語は進んでいくわけなんだけど、それでも正直な所、本作のことはそこまで嫌いになれないのである。
まず登場人物の感じが良い。多少倫理観に問題はあるものの考古学や暗号関係に強いベンジャミンと、かたや常識人としてベンのブレーキになろうとするもなれていない代わりにやたらとハイテクに強いライリーのコンビの掛け合いは面白い。
彼らの計画に巻き込まれる形で一行に加わったアビゲイルも、堅物でそもそも独立文書を守る立場にありながら、なんだかんだと冒険のロマンを捨てきれない。これに関してはベンの父親であるパトリックも同じで、彼も彼で先祖代々探してきたけどそれを諦めた過去があるから、苦言を呈しながらも気になって仕方がない。
敵対するイアンに関しても、確かに悪党ではあるものの、ベンと同じくらい財宝の発見に燃えているのが見て取れるし、作中の子供に対する扱いから見ても極悪人とまでは言えない中途半端さがなんともいえない味をだしていると思う。
そう「中途半端」という言葉がものすごく似合う登場人物たちであるけど、彼らの欠点を面白みとして受け入れることが出来れば、その掛け合いにはそこそこ笑えてくると思う。
人物以外の面でいうと、題材がアメリカ独立運動に関わるものなだけに、全編アメリカ国内を舞台に冒険が繰り広げられるわけなんだけど、これはそんなに悪くないと思う。
まず独立文書を巡る泥棒合戦は、かなりご都合主義の展開ではあるものの2つの勢力の行動を並行して描いていて、その後のカーチェイスも結構頑張っている。…しかしアビゲイルが【プレゼントを受け取って開封し】【なおかつパーティに参加し】【ベンが渡したグラスを受け取り】【それまで手を洗うこともなかった】というのはちょーっとばかり偶然がすぎるよね。
その後も、アメリカの名所巡りをしながらキーアイテムの争奪戦を繰り広げるという流れ自体は面白かった。ロケも結構頑張っていたと思うし。ギミックもそんなに気になるものではなかったし。
まぁアメリカの教会の地下にそんな大きなスペースがあったらとっくの昔に見つかってるだろう。ましてや地下鉄の振動が来るような場所に。というのは言わない話だけど…
■まとめ
2000年代のアメリカを舞台とした宝探し映画である本作は、作品としての出来はともかく日曜日の夕方にコーラとポテトチップスを片手に見る分には良い映画です。
そもそも近代社会において、宝探しの冒険というジャンルは成立させること自体が非常に難しいものですから、多少の荒唐無稽さや脚本の支離滅裂は受け入れる、というか受け流してしまうのがいいと思います。
登場人物はどこか無茶苦茶で中途半端な面もありますが、敵味方ともに宝を見つけたいという強い情熱を持っているのが好印象ですし、彼らのやり取りもユーモアがあり面白いですね。
総じて「インディ・ジョーンズ」ほどの大作でもなければ、「ダ・ヴィンチ・コード」ほどのサスペンスでもないんですが、不思議と嫌いになれない一作といったところでしょうか。
■余談
今回の見出し画像について、紙のテクスチャを「Paper-co」というサイトよりお借りしました。
配布されているアンティーク紙のテクスチャに、本作のテーマになっている独立宣言書から文章を少し引用し背景にして、更にテクスチャにはシンボルを透かしとして入れています。その他にも本作の要素を幾つか入れ込んでいるのでよければじっくりと見直してくださいね。
ちなみに、独立宣言書の引用については全文ではなく抜粋ですけど、なぜその部分を抜粋したのかにはある理由があったりします。興味があれば謎解きにチャレンジしてみてください。