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アントマン&ワスプ【映画感想】
■どんな映画?
MCU作品「アントマン」の続編。アベンジャーズとサノスによるインフィニティ・ストーン争奪戦が佳境に入った頃、アントマンことスコットにもある危機が訪れており…
一方で、前作で語られたハンクの妻で、ホープの母であるジャネットの行方を探し、量子世界を目指す部分もストーリーの要点になっている。「ミクロの決死圏」ならぬ「ミクロの世界で母をたずねて三千里」。
■良いところ
前作から順当にスケールアップし「アクション映画」のお約束をアントマンナイズしたこと。
シリアスな笑いを上手に成立させていること。
■良くないところ
強いて言うなら、もう少し蟻たちの活躍するシーンが有っても良かったかも。
■あらすじ
アベンジャーズを二分にする内乱からしばらく、二代目アントマンことスコット・ラングは、娘との時間を取り戻すため。自宅軟禁という憂き目にあいつつもかつての「ムショ仲間」たちとセキュリティコンサルタントとして第二の人生を送っていたが、それはアントマンには戻れないことを意味していた。
一方、前作での出来事からジャネットの生存に望みをかけたハンク・ピムとジャネットは地下に潜伏、追われる身となりつつもジャネットがいるはずの量子世界へ向かう方法を探し求めていた。ついでに勝手にシビル・ウォーに参戦したスコットには二人とも怒っていた、というかもはやカンカンにブチギレられていた。
あと数日で自宅軟禁の期間が明ける頃、スコットは量子世界に入り込む白昼夢を見るが、それをきっかけにハンク達と、彼らの技術を狙う闇商人、そして、物質をすり抜ける謎の強敵「ゴースト」との戦いに巻き込まれてしまう。タイムリミットは3日間、果たしてスコットは世間に外出していることを気づかれること無く人々を救うことが出来るのか!?
【感想や解説】
アントマンシリーズの良いところといえば、まず能力を利用した拡大縮小の描写、そしてそれを利用したアクションだと思うけど、本作もその点見事にパワーアップしていて、これがまず本作の良い点の一つ。
前作における拡大縮小の場面が、アパートの一室や風呂場、邸宅の庭、果ては子供部屋だったのに対して、本作は舞台を格段に大きくしている。特に序盤から登場する拡大縮小自由自在の車を使ったアクションが良く出来ていて見応え抜群だった。
新ヒーローワスプの動きに関しても、羽を使った飛行と拡大縮小を利用した立体的で凄まじい動きの数々には目を奪われる。本作のヴィラン「ゴースト」は拡大縮小の能力がないので、武器商人のソニー・バーチの用心棒たちとの戦いで主に使われていた印象だったけど、アクションシーン自体は満載だったので面白かったね。
カーチェイスが多かったり、金目的のギャングがヴィランだったりと、ゴーストや量子世界関連を省いてみると、本作は前作よりもオーソドックスなアクション映画の要素が多いように感じた。
前作が「日常生活」を縮小化というか、アントマンナイズしたものだとすれば、本作は「アクション映画」をアントマンナイズしたものと言ってもいいんじゃないかな。アントマンの要素が強く、特徴的なのとサンフランシスコのカーチェイス映えするロケーションのおかげでかなりよく出来ていると思う。
ストーリー面に関しては、前作で少し触れられていたハンクの奥さんで、ホープの母親であるジャネットを助けるために色々奔走するピム親子をメインに、スコットはどちらかというとそれに巻き込まれる形でお話に関わってくる。
スコットはシビル・ウォー参戦のツケを払わされて表向きは外にも出ることが出来ない身になりつつも、再起のきっかけでもあるピムやホープも助けたい、でも無理をしすぎれば今度こそ愛娘に会うことは叶わくなってしまう。そんな板挟みの中にあっても娘からの信頼は厚いし、彼女の温かい一言で改めてホープやハンク、そしてジャネットを助けることを決意する。おばあちゃん扱いされてるけど。
そしてFBIに逮捕されたピム親子を助けるために、いつぞやスコット自身がされたように監視カメラを妨害(物理)して、スーツを渡し、直接脱出の手助けをする。そこでようやくシビル・ウォー参戦のかどに関してお許しを貰うという流れまで含めていいシーンだよね。
それで本作にはもう一組、ビルとエイヴァの親子の存在もある。彼らはハンクやスコットと違い、本当の親子ではないものの、命がかかっているとは言え暴走しがちなエイヴァに最後の一線を越えさせないよう押し留め、最後も危険を承知でエイヴァに付き添うビルの姿は紛れもなく父親のそれで、最後のシーンは少し涙腺にきた…
まぁエイヴァの件に関してはジャネットに関わることである以上、ハンクに相談するべきではあったと思うけど。ハンクだしなぁ…
親子というシーンに関しては、前作と異なり母親と子供という関係性にもフォーカスをあてられている。30年ぶりに母親と会う決心がつかないホープに対して、同じ娘を持つ親の視点からアドバイスをするスコットというのもいいシーンだった。
まぁ直後にスコットはそのジャネットに憑依されて、なんだか面白い事になってしまうのだけど、これ自体がある意味では本作の良い点の2つ目にあたると思っている。なんといってもシリアスな部分と同じくらい本作はコメディの部分も面白い。
ジャネットに憑依されるスコットは、ピム親子が量子トンネルの開通に四苦八苦して、ジャネットの足跡を辿れるかどうかという緊張感の極みのようなシーンだけど、なにせ姿形がスコットなもんで、女性口調な上にその姿でイチャイチャするピム夫妻というハチャメチャな絵面になる。
少し話がそれるけど、ホープを見る目や一挙一動がすっかり母親のようになっていて、役者さんってすげぇなぁって思った。吹き替えの声優さんの熱演も凄い。
コメディの部分としてはもう一つ、自白剤のくだりも面白かった。自白剤なんて存在しない。いいね?あ、いややっぱこれ自白剤だわ…
ともかく、シリアスとコミカルのシーンって分けて使うことはあれど、混在させることって慎重にやらないと場違い感が強くなってしまうから、結構危険な橋なんだよね。 本作はその橋をかなり上手に渡っていると思う。MCU作品はどれも多かれ少なかれコミカルのシーンが入っているけど、本作は多分2023年現在も含めて全作品のもトップクラスにそれが上手いんじゃないかな。
今回「クアンタマニア」の公開直前に改めて本作を見返したわけなんだけど、全体的な出来が良くて、正直本作自体にはマイナスな部分というのは見当たらないように感じた。本作の公開当時は何かあったかな。まぁ「ハンク達は消えたし、スコットも置き去りってここからどうなるんだ?!」っていう気持ちで本作のことはあまり頭に入ってなかったような気がする。
明確に良くないことではないんだけど、本作は前作ほどアリたちの活躍が少ないように感じられたのが惜しかったかも。もちろん登場はするし、色々な場面で動いて入るんだけど、あくまでもギミックでしかないというか、前作におけるアントニーほどの愛嬌がないというか。
まぁ前作の感想でも触れたように、人間と同じサイズのアリが銀幕を動き回っているというのはなかなか強烈な絵面でもあるので、ないならないでもいいんだけどね。
■まとめ
最小のヒーロー「アントマン」を主役にした映画の続編である本作では、前作ラストでお披露目だけされた「ワスプ」も登場し、お話とアクションを更に盛り上げてくれています。前作において子供部屋や、自宅の庭などを舞台にして「日常風景」をスペクタクルしていたのに対して、本作では悪党とのカーチェイスなども満載で「アクション映画におけるお約束」を多く描きつつ、そのお約束を実にアントマンらしく調理している点も素晴らしいですね。
物語としては、「ミクロの世界で母をたずねて三千里」といった雰囲気で、前作で語られたジャネットと、彼女の救出に奮闘するピム親子が中心にありつつ、「シビル・ウォー」以降大っぴらに動けずにいたスコットも彼らを助けるために戦うわけですが、ピム一家とスコットの他にももう一組親子関係が描かれており、3つの家族が過酷な状況にどう立ち向かうのかが見どころと言えるでしょう。
前作でも特徴的だったコメディの部分も健在で、特に本作はシリアスなシーンとコミカルなシーンが見事に噛み合った最高級の「シリアスな笑い」を提供してくれていて、そういうところでは思いっきり笑える一方、状況も関係も違う3つの家族がお互いに影響を与えていく様子には少し涙が出たりしました。公開時当時以降、今回初めて見返したのですが、かなりよくまとまった映画だと思いました。
■余談
■MCU的ポイント
スコット:軟禁から解放され、ハンクのアシスタントとして改めて活動する。
ホープ:二代目ワスプとして活動。そして母親とも再会する。
ハンク:ジャネットの救出に成功する。最終的にどこかの海岸で彼女と二人で過ごす。関係ないけどあの家は土台が脆そう。
ジャネット:量子世界にいたことでなんらかの進化、あるいは変化を起こすも無事帰還する。
→NEXT「アントマン&ワスプ クアンタマニア」
ゴーストことエイヴァ:ジャネットにより痛みの緩和を受け、本格的な治療を受ける準備を始める。
→NEXT「サンダーボルツ」?
ウー捜査官:スコット・ラングの監視任務を終えるが、後に意外な形でスーパーヒーローが起こす事件に関わることになる。
今回のスタン・リー:カーチェイス中に車を縮められたおっちゃん
よし、今回はここまで。いよいよ来週は三作目「クアントマニア」の公開ですね。ちょうど金曜日なので、来週は三作目の感想を、といきたいところなんですが、基本的に公開当日に見ることが無いので感想を書くのはしばらく先になりそうです。では改めて、ここまでお読み頂きありがとうございまs…:.;::..
■あらすじ2
事件からしばらく後、ゴーストの治療のためスコットは改良された量子トンネルを使い量子世界へ向かうことに。
滞りなく実験に成功し量子世界に入ったスコットだったが、現実世界との交信が突然途絶えてしまう。
必死に呼びかけるスコットだが、数秒前までピム一家がいたその場所には黒いチリがまうだけだった…
■改めてMCU的ポイント
スコット:実験中に量子世界に入り込んだタイミングでサノスによるスナップが発動。量子世界に取り残されることに。
ピム一家:スナップにより消滅。
エイヴァ:消滅?(というか消滅していないとピム家がいないので治療できないよね)
NEXT「アベンジャーズ エンドゲーム」