連載小説 奪われし者の強き刃 第2章26話 「戦闘開始! 式神の力」
安倍晴明の式神を追いかけていた師団長達と新田はそれぞれ式神たちに追いついた。
新田:
「あれが師団長が言っていた陸王の式神。」
謄蛇:
「どうやらお前から死にたいようだな。」
新田に前に現れたのは大蛇に翼が生え、炎を身にまとった姿ををしている蛇であった。
氷室:
「行かせるかよ。」
天空:
「じゃあまず、お兄さんで遊ぼうかな。」
天空は手に錫杖を持ち、行脚僧のような服装をした2足歩行の犬の姿であった。
スターク:
「追いついたぜ。」
大裳:
「我が名は大裳。晴明様の式神にして天帝様の文官である。邪魔をするなら容赦しない。」
大裳は冠と帯を着用しきっちりした服装をした人型である。
ソフィア:
「待ちなさい。」
天后:
「なんじゃ。相手がこんな小娘とは拍子抜けじゃな。」
天后は中国貴族のような服装をした婦人の姿であった。
かくして、それぞれ戦闘が始まった。
一方そのころ、悠は1人で安倍晴明が召喚した何百、何千という魔物の相手をしていた。
悠:
「倒しても倒しても湧いて出てくる。きりがないな。」
晴明:
「流石師団長だ。この程度じゃまだ潰れてはくれないか。だが、余は艮や坤よりも一度に多くの魔物を召喚でき、制限もない。さらに、余が召喚する魔物は余の力を分けておる故普通の魔物とはわけが違うぞ。」
悠:
「なんかしつこいと思ったらそういうことか。流石に数千体はやったことないけど。」
そういうと、悠は『桜』を構えて
悠:
「桜刃流双身術 こぼれ桜』
悠が放った技により数千体いた魔物は一掃された。
『こぼれ桜』は悠単身で敵が多いほど威力、スピードが増す技。悠の他人より優れた感覚器官により敵の隙を見つけ、敵と敵の間を縫うように潜り抜け切りつける。
晴明:
「これは驚いた。まさか数千の魔物を一瞬にして切り伏せるとは。」
悠:
「流石に数千の魔物相手に使ったのは初めてだよ。まぁでも、これくらいやってのけないとお前を倒すなんて夢にまた夢だからな。」
晴明:
「面白い。」
そして、安倍晴明は再びお札を取り出して
晴明:
「『大陰(たいいん)』救急如律令。」
小学生くらいの少女を呼び出した。
悠:
「なんだ?あいつ。」
悠は少女が出てきて少し困惑したが、すぐに攻撃に移った。
悠は『桜』で足を切るふりをして首を狙ったと思ったがなぜか体は首を狙わずにそのまま攻撃してしまった。
悠:
「なっ!」
晴明:
「そんな攻撃でよいのか。」
安倍晴明はそういうと、悠の攻撃をあっさりと避けて打撃による重い一撃を悠に与えた。
悠:
「こいつ武術もいける口かよ。一撃が乾くらいある。それより、体が言うこと聞かなかった。」
晴明:
「お前は恐らくフェイントを入れようとしたのだろうが、『大陰』がいる限りそれは不可能だ。」
悠:
「何?」
晴明:
「『大陰』は正直・清廉潔白を象徴する式神だ。こいつがいる限り相手は余に対して隠し事や 騙し討ちをすることができない。さらに、こいつは嫉妬深いから何かを生み出すこともできない。」
悠:
「つまり、俺はお前に対して馬鹿正直な攻撃しかできないと。」
晴明:
「左様。」
悠:
「いいぜやってやるよ。真っ向勝負は嫌いじゃない。」
晴明:
「いい目だ。」
悠は真っ向から安倍晴明とぶつかり合った。
その頃、新田と謄蛇は互いに出方を伺っていた。
謄蛇:
「おい人間。一応名を名乗っておこう俺の名は謄蛇。晴明様の式神『十二天将』の一人で恐怖や驚きを司る式神である。人間、名を聞こう。」
新田:
「名は新田荒太。第1師団副師団長だ。」
謄蛇:
「俺を見て驚きや恐怖の感情が出ないとはなかなか場数を踏んでいるな。あれを見るがいい。」
新田が謄蛇が目線を向けたほうを見てみると恐らく逃げ遅れたであろう野良犬がまるで魂が抜けたかのように倒れていた。
新田:
「どういうことだ?」
謄蛇:
「俺は恐怖の象徴、俺を見て恐怖を感じた生物は無条件に命をおとす。つまり、一瞬でも俺を恐れたらお前の負けだ。」
謄蛇は自身を見て恐怖を感じた対象の命を吸い取り、取り込むことで強くなる。さらに、『十二天将』のなかで最も残忍かつ好戦的な性格をしているため最も人間の命を奪ってきた式神でもある。その数およそ500万人を超え、その強さは艮らの強さを優に超えている。
新田:
「恐れる?舐めてるのか?どれだけお前が俺より強かろうが俺がお前を恐れる要因にはならない。俺の尊敬する人なら必ずそういうし、なによりお前ごときにビビっているようでは市民の皆様を守るなんてできないからな。」
謄蛇:
「ごときとは言ってくれる。ならばかかってこい口だけではないことを証明してみろ。」
新田は右腕に乾戦より改良を重ねたガントレットを装着して臨戦態勢に入った。
新田のガントレットは改良により破壊力はもちろん耐久力も大幅に増し、今までは10kgはあった重量も4kgまで軽量化に成功しまるで体の一部のように動かせるようになっていた。
新田:
「ここで止める。」
謄蛇:
「やってみろ。」