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連載小説 奪われし者の強き刃 第3章13話 「襲撃 異変の元凶」
峯風と竜王らとの戦いから数日後、冥々は中央南部の状況をリモートで林杏に伝えていた。
林杏:
「それは本当なの?冥々。」
冥々:
「はい。南部の市民の皆様が不眠や体の痛みを訴えています。不眠の方は睡眠薬を服用することで何とか眠れているようですが、これ以上の服用は流石に危険です。さらに、痛みを訴えている方は昔の公害病のようでして医療班が診察したのですが、どこにも異常は見られず体は健康そのものです。」
冥々の報告通り中央南部ではある日を境にほとんどの住民が不眠や体の痛みを訴えだした。だが、不可解なことに体に異常はなかった。まるで幻覚を見ているようであった。
林杏:
「報告ありがとう。こっちでも打開策を考えてみるわ。そっちでもできる限りの対応をして頂戴。」
冥々:
「はい。わかりました。」
林杏への報告を済ませた冥々は町へと向かった。町の様子は異変の影響か活気がなく全体的に暗い様子だった。
本来中央南部は、多くの企業のビルが立ち並び、飲食店や商業施設も充実しており交通の便も便利なため中央部全体で2番目に栄えている街であった。だが、今ではその活気も見る影もない。
冥々:
「やっぱり敵の奇襲かしら。でも、直接的な奇襲がないのが不気味ね。・・・って何かしらこれ?」
冥々がパトロールの最中に町はずれに行くと、数日前にはなかった杭のようなものが地面に刺さっていた。その杭を抜こうと手を伸ばした時、警報が鳴り、冥々のすぐそばに霧が発生した。
魔物:
「それに触るな。ゴミムシが。」
魔物:
「だめです。だめですよ。それを抜くのは。」
霧から現れたのは赤い皮膚に鎧を身にまとった鬼と小学生くらいの身長をした落ち武者のような魔物だった。
冥々:
「あなたたち【八部鬼衆】で間違いないわね。」
魔物:
「あぁ。【四天王】側近、【八部鬼衆】が一人鳩槃荼(くばんだ)。」
魔物:
「同じく【八部鬼衆】が一人、薜茘多(へいれいた)。」
鳩槃荼:
「なぁこいつ殺してもいいよな。」
薜茘多:
「そうですね。そうですね。・・・殺してしまいましょう。」
次の瞬間、鳩槃荼は冥々の背後の回り込み腰に携えていた剣を抜刀の形で切り上げた。冥々は何とか体をひねりかわした。
鳩槃荼:
「ちっ、かわしたか。」
冥々:
「危ないわね。」
冥々:
「この状況はあなたたちの仕業で間違いないっぽわね。一応理由を聞いておこうかしら。」
鳩槃荼:
「誰が教えるか。くそあまが。」
冥々:
「まぁそうよね。まぁいいわ。無理にでも聞き出すし。」
冥々はその場で屈伸や背伸びをしてストレッチを始めた。
鳩槃荼:
「まさか俺たちに勝つつもりか?てめぇみたいな弱者が。」
冥々:
「そのつもりよ。動く前にストレッチしないと翌日体が痛くてね。まだ20代なのに困るわ。まぁでも、あなたたち程度にてこずってる暇はないからね。」
薜茘多:
「生意気、生意気。随分と生意気な女子です・・」
薜茘多が構えようとした時には、すでに冥々の拳が目と鼻の先にあり薜茘多は数メートル後方に吹き飛ばされた。
鳩槃荼:
「このあまが!」
鳩槃荼はすぐに反応し、反撃のためめいめいに向かって剣を振り下ろした。だが、冥々はその場にしゃがみこみ、鳩槃荼の顔面に卍蹴りを命中させた。卍蹴りをくらった鳩槃荼はよろけて数歩後ろに後退した。
鳩槃荼:
「くそが。おい薜茘多、戻ってこい。」
薜茘多:
「なんなのです、なんなのです。この女子は。今までの雑魚とは一味違います。」
冥々:
「あなたたちの能力は睡眠妨害と体に何らかの不調を出現させるものでしょ。あなたたちの戦い方が能力中心じゃなくて体術中心の時点で気づいたわ。どちらも後方支援向きに能力よね。目的はさしずめ、こちらの戦闘力の弱体化かしら。」
冥々の発言に一瞬薜茘多たちの空気が変わった。
冥々:
「図星ってわけね。それなら話が早いわ。あなた体を倒してこの杭を壊させてもらうわ。」
薜茘多:
「させません。させません。殺します。」
鳩槃荼:
「ぶっ潰す。」
互いに構え、街にある時計台の音を合図に戦いの火ぶたが切られた。冥々の体術に決まった型は存在しない。冥々は相手の動きや周囲の状況に応じて最適の動きをすることができる。冥々は相手の攻撃をいなしつつ、着実に攻撃を当てながら鳩槃荼らを街から離れるように誘導していた。
薜茘多:
「しつこい、しつこい。鳩槃荼さん、あれで行きましょう。」
鳩槃荼:
「そうだな。」
薜茘多は4本の杭を取り出し、冥々と自分たちを囲うように投げ刺した。
薜茘多:
『疫病の間』
合掌するようにい手を合わせると、冥々らは黒い影のようなものに包み込まれた。