連載小説 奪われし者の強き刃 第2章28話 「決着! 意地の戦い」
反撃の狼煙として謄蛇に手痛い一撃を与えた新田は、ガントレットを構えて攻撃態勢に入った。
謄蛇:
「一つ、お前に謝罪しよう。」
新田:
「?」
謄蛇:
「お前が師団長でないからと言って手を抜いていたことを詫びよう。ここからはお前を1人の強敵として全力で捻り潰す。」
新田:
「やってみろ。今度こそお前を打ち倒す。」
新田と謄蛇は激しくぶつかり合った。謄蛇は尻尾による攻撃や霧移動からの攻撃、炎による攻撃など戦況に応じた攻撃を繰り出していった。新田はその身一つで謄蛇の攻撃を受け、捌きながら自身の攻撃を当てていった。猛攻の最中、謄蛇は新田の攻撃にある違和感を覚えていた。
謄蛇:
「お前の攻撃、明らかに強くなっている。最初のころより圧倒的に。」
新田:
「気づいたか。そう、このガントレットは師団長の武器の一つのある技を参考にして改良を重ねたものだ。戦いの中でお前が俺に与えた攻撃による衝撃や痛みを吸い取り自身の攻撃力に変換する。扱えるようになるまでに時間がかかったがな。」
新田のガントレットは悠の【彼岸】の技『霹靂神・雷華』を参考にソフィアの監修のもとに作られた。自身が負ったダメージや衝撃を吸収し攻撃力に変換する。最大まで溜まった時の攻撃力は地震に等しい。しかし、自身にかかる負担も大きく最大で打つためにはある程度出力を抑えて打つ必要がある。
謄蛇:
「成程、受ければ受けるほど強くなるのか。なら、受けきれないほどの攻撃を与えてやる。」
謄蛇:
「互いに限界が近い。次の一撃で決めようではないか。」
すると、謄蛇は翼をめいいっぱい広げ尻尾を使って天高く飛んだ。
新田:
「飛べるのかよ。」
謄蛇:
「行くぞ!」
新田:
「受けて立ってやる。」
謄蛇は急降下しながら霧をいくつも通過していき、加速しながら新田をめがけて体当たりしてきた。
謄蛇:
「これがマックススピードだ!『炎突・蛇喰』。」
新田:
『出力100%』
新田はガントレットの出力を最大まで開放して、謄蛇の体当たりを迎え撃った。そして、新田の拳と謄蛇の体当たりがぶつかった。
ぶつかった衝撃で周辺の住宅は吹き飛び、新田の足元はクレーターの様にくぼんだ。
謄蛇:
「良く受け止めた流石だ。だが、急降下による落下速度と霧による加速で限界のお前では押し潰されるだけだ。ここで終わりだ。」
謄蛇の攻撃を受け止めている時、新田は悠のことを思い出していた。初めて出会い悠が師団長に就任した時のことを。
新田が悠に出会ったのは悠が師団長になる1年前のことで悠がまだ上層部の訓練を受けている時だった。新たな師団長が子供であることを聞いた新田は悠が訓練している施設へと赴いた。
研究員:
「あれが新しい第1師団長です。」
新田:
「本当にまだ子供ではないか。本当に魔物を倒せるのか?」
研究員:
「はい、強さは本物です。」
悠の強さを疑った新田は悠を自身の任務に同行させた。
団員:
「荒太さん本当にあの子強いんですか?そうには見えませんけど。」
新田:
「あぁだから任務に同行させた。どれほど強いかはそれでわかるだろう。」
そして、魔物が現れ新田たちが殲滅しようとした時
悠:
「待ってください。俺にやらせてください。」
新田:
「!何を言っている。見ただけでも50体はいるぞ。1人では無理だ。」
悠:
「やらせてください。やらないといけないんです。」
すると、悠は魔物に向かって一直線に向かった。
新田:
「おい!しょうがない。あの子がピンチになったらすぐに助けに入る。準備しておけ。」
団員:
「はい。」
しかし、手助けは必要なかった。50体以上いた魔物は悠がすべて倒したのだ。
新田:
「たった一人で全滅。君すごいじゃっ。」
悠に声をかけようと悠の顔を見た新田は恐ろしく感じた。その時の悠の顔が達成感に見た顔ではなく、安心した顔でもなくまるで操り人形のような感情のない顔だったからだ。この瞬間、新田はある決意をした二度とこの子にこのような顔をさせないと。この居場所を守るために支えることを。
新田:
「ここで死ぬわけにはいかないんだよ。」
謄蛇:
「あ?」
新田:
「あの人にあんな顔をさせないためにもあの人の居場所を守るためにもここで死ぬわけには いかないんだよ。」
新田:
「だからこれはできるできないの話じゃない。」
すると、新田の拳が徐々に謄蛇の巨体を押し返していった。
謄蛇:
「何なんだ!この力は!」
新田:
「意地だ!」
新田:
『出力100%+α カウンターインパクト!』
新田は謄蛇を受け止めている時の衝撃さえも瞬時に攻撃力に変換して、謄蛇を天高く打ち上げた。
新田の攻撃が直撃した謄蛇は灰のように消滅していった。
新田:
「これであなたの隣で戦えます。師団長。」