連載小説 奪われし者の強き刃 第2章31話 「vs式神 圧倒」
ソフィアが天后を討伐した頃、安倍晴明の式神である大裳・天空と対峙していた氷室とスタークはそれぞれの相手を圧倒していた。
天空:
「なぜだ!なぜ僕の見えない黄砂の攻撃が通じない!なぜ僕の言葉に惑わされない!」
氷室:
「てめぇの薄っぺらい言葉に騙されてやられたらあいつの合わせる顔がねぇんだよ。」
天空は言葉巧みに人を騙し、黄砂や霧で人々を飲み込み殺してきた式神である。氷室との戦いでも言葉で隙を作ったり、動揺を誘ったりして見えない黄砂や霧による罠などで攻撃していった。しかし、氷室にはそのどれも効かず罠や攻撃も悉く破られていった。
氷室:
『クロセル』
氷室:
「これで終わらせる。」
天空:
「それ知ってるぞ。制限時間付きの自己強化技だろ。確か時間は3分だったな。」
天空:
「それさえしのぎ切ればまだ勝機はある。」
氷室:
「舐められたものだな。」
天空:
「?」
氷室:
「お前がこの技をどこで知ったのかは知らないが、俺が全く成長してないとでも?今の『クロセル』発動時間は3分じゃなくて12分だ。」
氷室は3日間の驚異的な訓練量により、『クロセル』の発動時間を4倍にまで引き延ばすことに成功した。
次の瞬間、氷室の冷気をまとった拳が天空に命中した。天空は霧や黄砂で応戦していたが、以前より冷気の増した『クロセル』の状態では霧などの自然現象ですら凍り付く。
天空:
「くそっ!死ねや!」
天空は持っていた錫杖で氷室めがけて振り下ろした。
しかし、振り下ろした瞬間、氷室は鏡のように割れてそこには氷室の姿はなかった。
天空:
「なっ!」
氷室:
「『氷面鏡(ひもかがみ)』。俺がいつ『クロセル』を途中解除できないと言った。」
天空:
「貴様!」
そして、氷室は天空に触れて
氷室:
『八寒地獄 摩訶鉢特摩』
天空の全身は凍り付き、灰のように消滅していった。
氷室:
「さてと、悠のもとに戻らないとな。」
その頃、スタークと大裳も戦いも佳境に入っていた。
大裳:
「なぜこやつがここにおるのだ!ヨルムンガンド!」
スターク:
「巽がほぼ同じような姿で変身してくれてよかったよ。あとは少し情報を調べるだけで呼び出せる。」
スタークは日の光が入りにくい山の奥地に大裳を連れ出し、『伏魔殿・魔窟』で以前巽が変身したヨルムンガンドを呼び出した。
スターク:
「行け、ヨルムンガンド。」
そういうと、ヨルムンガンドは大裳めがけて巨大な体で突進していった。大裳は何とか攻撃をよけ続け、反撃のためヨルムンガンドに攻撃を繰り出したが影であるヨルムンガンドには効かず、逆に攻撃を受けてしまった。
大裳は阿部晴の式神の中で一番の武闘家であり、平安の世の時には武士を中心に殺していきその身一つで都にいた武士を全滅させた過去がある。しかし、影を使うスタークとは相性が悪く手ごたえのある一撃を与えられていなかった。
スターク:
『影狼・天狼孤影』
ヨルムンガンドの攻撃をよけていた大裳の背中に斬撃のよる激痛が走った。そして、激痛により動きを止めたためヨルムンガンドの攻撃が命中し、後方にある木に激突した。
スターク:
「ヨルムンガンドに集中しすぎて背中がおつむだぜ。」
大裳:
「小癪な真似を。貴様自身を倒してしまえばよい話。」
大裳はスタークに向かって殴りかかったが何者かに両腕を噛み千切られた。
大裳:
「何?」
現れたのはスコルとハティだった。
大裳:
「一体いつから?」
スターク:
「お前がヨルムンガンドの攻撃をよけていた時に呼び出してお前の影に潜ませていた。」
スターク:
「悪いな、お前ごときに苦戦するわけにはいかないからよ。」
大裳:
「ごときと来たか。お前のような強者は初めてだ。」
大裳:
「だが、お前たちがどれほど強かろうが晴明様には勝てない。絶対にな。」
スターク:
「勝つさ。絶対にな。」
そして、スタークが大裳の首を切り、大裳は灰のように消滅していった。
それぞれ安倍晴明の式神を撃破した氷室らは一度合流した。
ソフィア:
「みんな勝ったのね。」
氷室:
「あぁ、訓練しておいてよかったな。」
スターク:
「だな。それより。後一体の式神はどうなった?」
氷室:
「荒太が倒したようだ。今治療を受けてる。」
スターク:
「そうか。」
すると、悠のいる方向から大きく鈍い音が響いた。
氷室:
「急ぐぞ。流石の悠でも一人で陸王相手は厳しいはずだ。」
スターク:
「あぁ。」
ソフィア:
「もちろん。」
氷室たちは急いで悠のもとへ向かった。
氷室:
「悠!大丈夫か。」
氷室・スターク・ソフィア:
「「「!!!」」」
悠のもとに到着した氷室たちの目に飛び込んできたのは、安倍晴明の式神であろう4体の獣の攻撃を『桜』で捌く血まみれの悠の姿であった。
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