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連載小説 奪われし者の強き刃 第3章2話 「出発 元陸王領地へ」
怪我が治った悠に政府から元陸王の領地であったとさせる場所の調査を依頼された。
悠:
「元陸王領地の調査依頼ですか?」
千代:
「えぇそうよ。あなたが陸王を倒したことによって一部の場所の侵食していた霧が晴れたことが人工衛星から確認されたわ。恐らくもともと陸王が支配していたと思われる場所よ。位置としてはここ東部よりさらに東にいったところで侵食される前のアメリカ大陸よ。」
千代:
「あなたにはそこに行って現地の調査と生き残りがいないかを調べてほしいの。坤の一件もあるし、もしかしたら生き残りがいるかもしれないし。もし受けてくれるなら移動手段はこっちで用意するわ。」
防衛大臣:
「断るわけがないだろう。これは我々、防衛省からの直接依頼で今後のことにも大きくかかわる調査だからな。恩を仇で返すわけにはいかない。そうだろう悠。」
千代:
「ちょっと!紫宮防衛大臣。そんな言い方はないじゃないですか。こちらは彼にお願いする立場です。それに、彼は治ったとはいえ大怪我を負っていたのですから彼の意見を尊重べきです。」
悠:
「まぁまぁ、総司令落ち着いてください。」
草薙総司令は紫宮防衛大臣の発言に憤って怒鳴りつけたが、悠は草薙総司令をなだめるかのように声をかけた。
悠:
「その調査お受けいたします。防衛大臣も言っていたように今後のことにも関わりますから。」
総理:
「そうか、ありがとう。」
悠:
「そのかわり、出発には少し時間を頂きます。いろいろと準備したいので。」
総理:
「あぁ、その辺は君に任せるよ。よろしく頼む。」
悠:
「はい、それでは失礼いたします。」
悠は会議室を後にして、第1の基地へと向かった。悠が会議室を出たのと同時に草薙総司令も椅子から立ち上がり、紫宮防衛大臣のことを睨みつけながら
千代:
「私もこれから師団長達と会議があるので失礼いたします。紫宮防衛大臣、もう少し言葉を選んで発言してください。彼があなたを許しているのでその地位にいるのを許されていることをお忘れなく。」
防衛大臣:
「ふん、肝に銘じておこう。」
会議室を後にした。
悠が調査依頼を受けてから3時間後。草薙総司令を交えたリモートによる師団長会議は開始された。
悠:
「集まってくれてありがとう。ごめんね俺の怪我が治るまで報告できなくて。」
シーラ:
「それは大丈夫。涼介に聞いてたから。それより悠坊・・。」
悠:
「何?シーラちゃん。」
シーラ:
「今回かなり無理したそうじゃないか。これは会議を始める前にちょっとみんなでお説教しなきゃね。」
悠:
「え?」
そこから約20分もの間、悠は他の師団長と草薙総司令から陸王戦の無茶な行動に対するお説教が続いた。怒られ続けられた悠は完全に委縮してしまい謝ることしかできなかった。
シーラ:
「そうしなきゃ勝てなかったのかもしれないし今回は勝つことができたけど、とても褒められた行為じゃないさね。」
悠:
「ごめんなさい。」
スターク:
「悠が俺たちを失うのが怖いように俺たちも悠が失うのが怖いんだ。ましてや、悠だけが傷つくのなんて見てられない。だから、もう自分だけがなんて考えないでくれ。」
悠:
「あぁ、悪かったよみんな。」
千代:
「さぁ、お説教はこれくらいにして本題に入りましょうか。」
草薙総司令が手を叩き本題に入るように指示した。すると、先程までほんわかしていた空気が張り詰めた空気に一変した。
千代:
「まずは、今回の陸王侵攻についてよ。今回の侵攻で立ち入り禁止区域はほぼ半壊になったけど居住区はほとんど被害がなかったわ。
市民の皆様にも怪我人はいなかったし、陸王も無事撃破できた。4人ともよく頑張ったわね。」
氷室ら4人は照れながらも軽く会釈だけした。
千代:
「それ関連でもう一つ。これが本題ね。悠には先に話してけど、陸王を撃破したことによって陸王が支配していたと思われる場所の霧が晴れたわ。上層部の決定でこの地の調査に悠が行くことになったわ。」
氷室:
「待ってください。悠一人ですか?さすがにそれは・・。」
千代:
「それは私もそう思うけど。あの防衛大臣がね。」
氷室:
「あの人ですか。」
悠:
「まぁそういうことだから。流石に一人ではいかないけど。」
氷室:
「誰と行くつもりだ?」
悠:
「何があるかわからないから少人数で行くつもりだよ。オペレーター1人と1部隊かな。」
氷室:
「本当に大丈夫か?」
氷室は心配そうに悠のことを見つめた。他の師団長も氷室と同様に悠のことを見つめていた。
悠:
「大丈夫だよ。調子も戻ってきたし、別に一人で行くわけじゃないしな。」
氷室:
「ならいいが・・・。」
氷室らの不安が若干ぬぐい切れぬままリモートでの会議が終了した。会議終了後、悠は師団員を集めて会議の内容を共有した。
悠:
「というわけで、領地調査に行くことになった。何があるかわからないから少数で行こうと思う。」
新田:
「行く部隊は決まっているのですか?」
悠:
「あぁ、決めたよ。今回行く部隊は大和(やまと)の隊にしようと思う。」
大和:
「本当っすか!」
今回選ばれた十文字大和(じゅうもんじやまと)が率いる部隊は中・遠距離タイプの師団員を中心に構成された部隊。前線に立つ新田の隊とは異なり、後方からの援護、支援を得意とする。
悠:
「受けてくれるか?大和。」
大和:
「もちろんっす。喜んで受けさせて頂きます。」
悠:
「ありがとう。オペレーターも1人連れて行こうと思うんだけど。愛奈(あいな)一緒に来てくれるか?」
愛奈:
「え?自分ですか?」
悠:
「あぁ、元戦闘員の愛奈なら頼りになるからな。」
高坂愛奈(こうさかあいな)は戦闘員からオペレーターへと転職した異例のオペレーターだ。元は新田隊のNo.3の実力者であり、片手斧2本を好んで使用していた。だが、3年前のこと。隊で魔物の対処をしていた時にキメラ型の奇襲により左ひざに大怪我を負ってしまった。リハビリにより日常生活は問題なく送れるようになったが、戦闘に復帰は難しかった。この一件により彼女は前線から退いた。
悠:
「ついてきてくれるか?」
愛奈:
「はい!全力でサポートさせて頂きます。」
悠:
「ありがとう。では、出発は1週間後だ。残りのみんなは防衛を頼む。」
団員:
「はい!」
1週間後。悠と愛奈、大和隊は草薙総司令が用意した船に乗り込み、領地調査へと向かった。