連載小説 奪われし者の強き刃 第5話 「制御室の攻防 忍び寄る何か」
悠がオペレーター棟へと走りだしたころ、他の生徒はペアと通信がつながらず困惑していた。
翔:
「姉崎さん姉崎さん。クソ、繋がらない。何があったんだ。とりあえず誰かと会って情報を交換しないと。」
千秋:
「悠さん、誰かに協力を要請しなくていいのですか?流石に一人では危険です。」
悠:
「そうしたいのは山々だけどできないんだ。要請するには直接会うしかない。直接会っては時間がもったいない。」
教官の言ったルールのほかに細かなルールがいくつかあり、そのうちの1つに戦闘員同士の端末での連絡禁止がある。連絡を取るには直接会わなくてはいけないが学校と立ち入り禁止区域を合わせは総面積は約30ヘクタール、東京ドーム6.5個分に相当する。その中から残りの99人を探すのは運がよくない限りかなりの時間をロスする。
千秋:
「そんなルールがあったんですね。」
悠:
「ああ、戦闘員にしか適応されないルールだからな。幸い武器はかなりあるみたいだ。何とかなりそう。」
悠の戦闘スタイルは近距離タイプ。特に刀などの刃物を扱うのに長けていた。この時点で悠は刀1本とナイフを2本を調達していた。
千秋:
「わかりました。後どのくらいでオペレーター棟に着きますか?」
悠:
「早くて5分かな、もう少しかかるかもだけど。」
千秋:
「では、2分ください。終わらせます。」
悠:
「ありがとう、お願いね。」
悠がオペレーター棟に到着する5分前、学校内を彷徨っていた翔は立ち入り禁止区域内である人物と合流していた。
翔:
「あっおーい、向日葵!」
向日葵:
「翔よかった。ねえオペレーターと通信がつながらないのだけど何か知らない?」
翔:
「わからん、俺も困っていた。」
向日葵:
「もしかしてだけど、オペレーターの機器類に問題があったんじゃ。」
翔:
「!そうかもじゃなきゃ合同訓練の意味もないしな。とりあえず、オペレーター棟に行ってみるか。ここからだと大体20分はかかるな。」
向日葵:
「でも行かないと。このままってわけにもいかないでしょ。」
翔:
「だな、サポート頼む。」
翔の戦闘スタイルは超至近距離タイプ、向日葵は中・遠距離タイプ特に拳銃などの中距離が得意だった。
2人は向日葵の武器と弾を拾いながらオペレーター棟へと向かった。その頃、悠はまもなくオペレーター棟に到着するところだった。
千秋:
「悠さん、最短距離の地図ができました。端末に送ります。」
悠:
「ありがとう千秋さん。こっちももうすぐ着くよ。」
そして、オペレーター棟に着いた悠は突入を始めた。
悠:
「千秋さん棟に入ったよ。今正面玄関にいるけどこの棟全体の電気もやられてるわ真っ暗。ナビゲートお願いできる?」
千秋:
「はい。任せてください。」
初めて会った時に比べたら自身に満ち溢れていた。悠は電話をテレビ電話に変えてナビゲートしやすいようにした。
悠:
「それじゃあ、行くよ。」
そう言って悠は制御室へ走り出した。
千秋:
「20メートル先右折、その後10メートル先左側に階段があるのでその階段を下りてください。地下3階まで下りたらもう少しです。」
言われた道をたどり、階段に差し掛かった時にある光景が2人の目に飛び込んだ。
千秋:
「なんですか、この戦闘ロボットの数多すぎます。」
そこのはワニ型の魔物想定のロボットが見ただけで30機以上いた。まるで制御室を守るような配置だ。
千秋:
「どうしますか?別のルートでいきますか?」
悠:
「いや突っ切る。」
悠の意外な回答に千秋は動揺した。
悠:
「多分他のルートもこれと同じくらい配置されてるだろう。だったら時間がもったいない。大丈夫、まともに攻撃を食らわなければポイントは減らない。」
悠:
「それに早く機器類を復活されないと起動できたとしても他の不具合が起きるかもしれない。だから突っ切る。大方制御室にいるロボットがどんなやつかもわかったし時間をかけるわけにはいかない。」
そういうと、悠はナイフを取り出しかまえた。
千秋:
「えっ?どんな奴なんですか。」
悠:
「候補は2種類。特殊な音波を発して不具合を起こさせる系、コウモリとか。もう1つは単純に電気を奪ったり放ったりする系、こっちが本命かな。多分電気ウナギだと思う。」
悠は千秋に説明をしながらワニ型の攻撃をナイフを使って紙一重でかわしている。悠は生まれながら聴覚が他の人より優れていた。そのため、機械音を聞き分けかわす程度なら容易にできる。しかし、数が多いためかなり苦戦をしていた。
何とか地下3階へ降り、ワニ型を振り切り制御室へ向かった。
悠:
「千秋さん後どのくらい?」
千秋:
「まもなくです。その角を曲がって2番目の扉です。」
制御室へ到着し、扉をけ破った。そこには制御装置から電気を奪っている電気ウナギ型のロボットがいた。
悠:
「やっぱり、あの尻尾で電気を奪っていたのか。千秋さんどうしたら元に戻せる?」
だが、彼女からの返事はなかった。端末を見てみると、電波障害のようになっていた。
悠:
「確かに、電気ウナギ型は放電しているが学校支給の端末は放電しているくらいでは障害を起こさない特別製のはず。」
すると、悠はまるで酔ったかのようにふらふらし始めた。
悠:
「どういうことだ?平衡感覚がつかめない。さっきから変な音も聞こえるし。・・・まさか!」
ふらふらの中上を見ると、そこには2体のコウモリ型が天井にぶら下がっていた。
悠:
「まじか、変な音はこいつらか。こいつらをどうにかしないと千秋さんと通信ができない。」
悠:
「しかも、この音のせいで他の音が聞き取りずらい。」
この時にはワニ型との戦闘時に使っていたナイフが刃こぼれしており刀1本しかなかった。
悠:
「どうにかして、地上に下ろさないとな。」
悠が制御室に突入する少し前、翔と向日葵は向日葵の銃弾を拾いながらオペレーター棟へ向かっていた。その途中、向日葵がある違和感に気付いた。
向日葵:
「ねえ、戦闘ロボット全然いなくない?」
翔:
「?確かに、さっきから全然遭遇してない。何体か遭遇しててもおかしくないのに。」
疑問に思いながらも先に進むと、何かが倒れているのを見つけた。見てみると犬型の戦闘ロボットの群れだった。
向日葵:
「え?もう誰かがこんなに倒したの?」
翔:
「いや、俺ら戦闘員じゃないな。」
ロボットの異変に気付いた翔が言った。
翔:
「よく見ろ、殴る蹴るの物理攻撃でも、刃物や銃での武器による攻撃でもこうはならない。これは明らかに噛み千切られている。」
向日葵:
「噛み千切る?誰がそんなことができるのよ。」
翔:
「わからない。しかもほとんど一撃だ。」
向日葵:
「ねえ、翔あれって。」
向日葵が指をさしたほうを見てみるとそこには小さく広がった黒い霧があった。本来、魔物が襲来するときは複数体で襲来する。そして、襲来する数に応じて黒い霧も大きく広がる。黒い霧は大きなエネルギー体のようなものであるため広がれば広がるほど感知しやすくなる。
翔:
「この大きさだと多分感知されない。しかも、1体だけで来てる。」
向日葵:
「1体って相当強いんじゃ。」
翔:
「だろうな。でもまずは、オペレーターの機器類をどうにかしないと教官たちも気づいてないかもしれない。警報が鳴ってないから。」
向日葵:
「そうね、オペレーター棟へ行きましょう。」
翔と向日葵がオペレーター棟へと向かって言ったころ、悠はコウモリ型に苦戦を強いられていた。超音波で平衡感覚が奪われ、薄暗い中で視覚が遮られ、コウモリ型の超音波により聴力も機能していなかった。
悠:
「やばいな。こいつらのコンビネーションもばっちりじゃねえか。」
その時、悠は閃いた。
悠:
「成程ね、そういうことか。」
すると悠は、突進してきた1体を刀を使っていなした後、時間差で攻撃してきたもう1体を切り伏せた。そして、動揺したところで隙を突き残った1体を切った。
悠:
「お前らはコンビネーションが完璧すぎた。俺が攻撃をよけると必ず逆側から攻撃を仕掛けていた。それに、超音波と薄暗いこの空間で倒す算段だったんだろうよ。」
そうして、悠は制御装置から電気を奪っていた電気ウナギ型を切り、制御装置のスイッチを入れた。すると、耳に着けていた通信用イヤホンから通信がきた。
千秋:
「悠さん大丈夫ですか?」
悠:
「千秋さん、うん大丈夫そっちは不具合はない?」
千秋:
「はい、順調に動いています。」
悠:
「よかった。でも、だいぶ食らったからポイントが相当減ってるかもって、え?」
千秋:
「どうしました?」
悠が端末でポイントを確認してみると、ポイントに変動がなかった。
すると、後ろから
謎の魔物:
「あれー?やられてる?」
そこには、明らかに生徒でも教官でもない人獣型のような魔物が立っていた。
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