恋愛初心者の二人
……お昼時だが、人のいない喫茶店。
〇〇:いや…やっぱり守屋さんだよなぁ。
…間抜け面で食器を洗う男。
遠藤〇〇 大学二年生 彼女無し。
山崎:また、好きな人出来たんすか?
…お店のレジに立ち〇〇に声をかける人
山崎天 大学一年生 彼氏無し。
〇〇:そゆことだ。また俺の相談に
乗ってくれよな?男装女子くん?
山崎:はぁ…まぁいいけど。
本気に俺みたいな優しい後輩もって
幸せだと思ったほうがいいっすよ?
〇〇:それもそうだな…(笑)
今度焼肉でも奢るよ。
山崎:Fooo!!
さっすがー太っ腹ぁー。
〇〇:心が籠ってないなぁ…(笑)
……二人は同じ大学の先輩と後輩。
だが、大学内では〇〇と天は話さない
それはひとえに…
天が人気若手モデルだからなのだ。
そんなモデルが〇〇と同じバイトな訳
理由は簡単。家が近い、客が中々来ない
…お客さんも中々来ないので
自ずと二人の時間が長い…だから
ここまで仲良く時間を潰している。
〇〇:あ〜…守屋さん好きだぁ〜。
山崎:先週まで田村保乃先輩のこと
好きって言ってたのに。
〇〇:いや…だって。
振られちゃったし。
山崎:だとしても切り替えが早いっ!
せっかく俺が田村先輩と写真撮って
〇〇先輩に渡してあげたのに……(笑)
〇〇:ごめんごめん。(笑)
山崎:はぁ…守屋麗奈先輩ですよね?
〇〇:うん。(苦笑)
山崎:はぁ…写真撮ってきますよ
焼肉食べたいし。(笑)
〇〇:流石俺の後輩の天!
山崎:うるさいなぁ……(笑)
……以前から〇〇は男性のような姿で
ありながらも女性である天に〇〇は
恋愛相談をしやすいのだ。
……別日。
喫茶店にて…
〇〇:毎回思うけどさ…バイトの日以外にバイト先に来ると変な感じするよね?
山崎:そうですか?別に俺は
なんも思いませんけど。
店長:ご注文は?って…
また〇〇くんの恋愛相談かい?
山崎:そゆことです。(笑)
〇〇:あはは……
店長:僕も相談乗ろっか?
〇〇&天:結構です!
店長:あっ…そ、そう?
な、ならいいけどさぁ。?
〇〇:とりあえず、カフェモカ二つ。
山崎:チョコソースたっぷりで!
店長:二人揃ってお子ちゃまだね。(笑)
……注文を終え…本題へ。
山崎:相手は守屋麗奈先輩です。
清潔感は必修科目ですよ
〇〇:わかってますよ。
山崎:〇〇先輩はスタイルだけはいいので
〇〇:スタイル"だけは"?
山崎:俺が服選んであげないと
服装クソダサ。じゃないですか!
〇〇:ムカつく……けど。否定できない。
山崎:田村保乃先輩の時は
静かめのストリート系の服で
行きましたけど…今回は完全に
清潔感ストリートなんて匂わせない
快晴をイメージしてコーディネート
してあげますよ。
〇〇:お願いします。
山崎:それと今日は髪も切りに…
(今日の予定を考える)
〇〇:ち、ちょ…
服買いに行くだけでしょ?
山崎:何言ってんの?
髪も切るに決まってんじゃん。
〇〇:いや…髪型ぐらいは
俺だって行きつけぐらいあるし?
服だってもう一人で買いに行けるわ!
山崎:はぁ……
ズルルッ…(カフェモカを一口)
〇〇:っ……ズルッ…
(こちらもカフェモカを一口)
山崎:本当に一人で行けんの?
〇〇:っ……
山崎:聞いてるんですけど?
〇〇先輩が一人で買いに行ける
未来が見えない。お店に行ったとしても
頭真っ白になって自分に似合わない
服買って帰ってくる未来しか見えない
……で、一人で買いに行けんの?
〇〇:ごめんなさい……
一緒に買いに来てください……
山崎:はぁ…最初っから正直に
なってくださいよ。(笑)
あと、〇〇先輩は直毛なんだから
美容院より床屋でガチガチに
切って貰わないと毎朝自分で
セット出来ないし数週間したら
髪型ボンバーしちゃうんだから。
〇〇:髪のセットぐらいは
教えてもらえれば……
山崎:〇〇先輩ガサツだから
一回変になったら訳わかんなくなって
オールバックにしそうだから却下。
〇〇:なっ……
山崎:じゃあ、俺が毎朝〇〇先輩の家に
行って髪セットしてあげるとかなら
美容院でお洒落な髪型にしてもらっても
いいと思うけど。
〇〇:い、いや…それは…//
山崎:何顔赤くしてるんですか?
〇〇:あ、いや…なにも?
山崎:後輩の男装女子との生活
想像して興奮しないでください。(笑)
〇〇:べ、別にそんなんじゃ……
山崎:はぁ……とりあえず。
飲み終わったら早速行きますよ!
……カフェモカを二人飲んだあと。
床屋で髪を切る…
〇〇:ど、どうだ?
山崎:っ……//
まぁ、予想通りっすね。
……そして服を選びにお店へ…
店員:あ、あの…今日はどんな服を
お探しで来たんですか?…//
……上目遣いで山崎を見つめる店員…
山崎:ん、今日はこの人の…って
〇〇:…あっ…すみません……
(入口付近でオドオドしてる)
山崎:はぁ…〇〇先輩おいで。
(〇〇を手招きする)
〇〇:っ……
(急いで天の所へ)
店員:…?(困惑してる)
〇〇:俺から離れるなっての…((ボソッ
山崎:それはこっちのセリフです…((ボソッ
んで、今日はこの人の服を選びたくて
店員:そ、そうなんですね!
山崎:清潔感のある服を探してて
店員:な、なら…こちらへ。
〇〇:っ……(周りの視線に緊張する)
山崎:はぁ…〇〇先輩こっち。
ニギッ…(〇〇の手を握り歩く)
……服を何着か選び試着室へ…
ガラガラッ……
〇〇:どう?
山崎:いい感じです!
じゃ、次。
……ガラガラッ
〇〇:どうかな?
(腕を大きく広げる)
山崎:ん〜…やっぱり〇〇先輩は
ダボッとした服は似合わないな。
次。
ガラガラッ……
〇〇:どう?
山崎:っ……
〇〇:な、なんか言えよ……//
山崎:これ、買いで。//
あと、最初のやつも買いましょう!
……オカイアゲアリガトウゴザイマス。
…帰り道。
山崎:はぁ…疲れた〜
〇〇:毎回ありがとうな。
山崎:本当に感謝しまくってください
〇〇:そうだな…(笑)
山崎:なんか今日はやけに素直ですね
〇〇:いやさ…今回は上手く行きそうで。
山崎:全部俺のおかげっすね。
〇〇:本当にそうだと思うよ。
山崎:……はぁ。面白くないなぁ〜
もっと否定してくださいよ!
……それから二週間ほど経った頃。
バイト先にて…
山崎:上手く行ったぽいですね!
〇〇:まぁな〜
山崎:大学内でもちょっと
噂になってますよ?
あの守屋先輩と〇〇先輩が
付き合うんじゃないかとか
付き合ってるんじゃないかって!
〇〇:ま、まぁ…厳密には
まだ付き合ってないけどね?ニヤニヤ
山崎:なんかウザ。(笑)
〇〇:まぁ…上手く行くように
頑張るよ!
山崎:頼みますよ〜。
……約一週間後……
モデル仕事の帰り道の車にて……
マネ:うわ…結構雨降ってますね。
山崎:本当だ…(笑)
(車の中から外を見てると)
……
〇〇:……
(雨に濡れながら一人歩く)
……
山崎:マネージャーさんちょっと止めて!
マネ:は、はい!
山崎:ここでちょっと待ってて!
車を出て〇〇の元へ向かう…
山崎:〇〇先輩っ!!
ザーザー…
〇〇:っ……
山崎:ちょ…〇〇先輩止まってよ!
〇〇:なに……?
山崎:何って…(傘を開き〇〇を入れる)
そっちこそ何してんの?!
こんな雨で傘もささずに!
〇〇:俺って…だいぶ馬鹿だよな。
山崎:へ?
〇〇:さっき…守屋先輩に言われたんだよ
"天くんの電話番号教えてくれない?"
って。俺それで気づいたんだ…
俺…ただ天と付き合うための踏み台に
されてたんだな〜って。
山崎:〇〇先輩……
〇〇:やったじゃん天。
可愛い守屋先輩と仲良くなれて。
山崎:ま、待ってください……
〇〇:大丈夫、俺からは
電話番号教えてないから。
"自分で聞いてください"って言って
逃げてきたから。俺って弱いな。(笑)
山崎:ごめんなさい……
〇〇:なんで謝んだよ。(笑)
天こそ仕事お疲れ様……
山崎:っ……〇〇先輩っ!
〇〇:俺…明日は大学もバイトも
休むわ。(一人歩き出す)
山崎:ま、待って……
(〇〇に着いて行く)
〇〇:……もういいから。
山崎:良くない……良くないですよ!
〇〇先輩が良くても俺は良くない!
〇〇:っ……(立ち止まる)
山崎:〇〇先輩が…〇〇が苦しいなら
俺も一緒に苦しみます!
〇〇:いちいちお前はかっけえな。
山崎:あぁ!そうですよ!
〇〇の前ではかっこつけますよ!
〇〇:なんで……?
山崎:なんでって……好きな人の前では
かっこいい自分を見てほしいって
そう思うのは当然でしょ?!
〇〇:……っ。//
山崎:俺が幸せにするから!
俺は〇〇が好きだ!ずっと前から!
俺を特別扱いしない!
普通の後輩として扱ってくれた
貴方のことが私は…好きなんですよ。
パッ……ギュ……
(傘を手放し〇〇を抱きしめる天)
〇〇:お、おい…ぬ、濡れちまうぞ。
山崎:いいそんなの……
〇〇:お、俺はどうすれば……
山崎:抱きしめて……
ギュ…(山崎を抱き返す〇〇)
〇〇:今まで、俺からの恋愛相談……
苦しかったよな……
山崎:今言うな……
〇〇:ごめん……
山崎:どっちに対してのごめんなの?
〇〇:どっちも……
山崎:なら……許さない
〇〇:ええ……
山崎:付き合ってくれるなら…許す。
〇〇:な、なんか俺……天のこと
都合のいい様に使ってない?
山崎:何言ってんの?最初っから
恋愛相談とか服装とか髪型とか
都合良く俺を扱ってたじゃん。
〇〇:すみません…何も言えません。
山崎:……はぁ。
(抱きしめるのを辞め離れる)
〇〇:ご、ごめん!謝るから!
山崎:謝って欲しいんじゃない!
ほら…その…あれ言ってよ。
〇〇:っ…わかった。
ザーザー…(かなりの雨の中)
〇〇:山崎天さん……
俺と…付き合ってください!!
山崎:っ……//
私で良ければ……お願いしますっ…//
〇〇:天……//
山崎:〇〇っ!!
ギュ…(勢い良く抱きつく)
〇〇:ふふっ…//
マネ:ち、ちょっと二人とも!
イチャイチャするのは家にしてください
写真でも撮られたらどうするんですか!
山崎:俺は別にいいから!
マネ:こっちがダメなんですよ!
早く二人とも車に乗って!
……車に乗せられる…
ニギッ……
山崎:〇〇先輩をあんなに悲しませる
守屋先輩は俺がどうにかしないとな。
〇〇:おいおい、何するつもりだよ。
山崎:何してやろうかな
〇〇:やめろって…俺は天とたまたま
バイト先が同じなだけで普通は
大学でモデルと出会ったら
話しかけたり仲良くなるなんて
かなり難しいんだから……
山崎:だからって〇〇を使うなんて
俺マジで許せないんで。
マネ:はぁ…もう付き合えたんですし
山崎さんバイトやめて仕事に
専念してくださいよぉ……
〇〇:ん?どゆこと?
マネ:いやね?〇〇さんと会いたいから
バイトの日は仕事を入れないで欲しい
って言われましてねぇ……
山崎:っ……//
〇〇:そうなのか?
山崎:俺は…仕事より愛を選ぶから……
だから、〇〇…安心してね?
〇〇:可愛い…((ボソ
山崎:い、今可愛いって言った?
〇〇:ううん…めちゃくちゃ可愛いって
言った。(笑)
山崎:マネージャーさん……
ラブホテルまで行けます?
マネ:行"け"ま"せ"ん"。
……翌週…
大学にて…
友達:お前大学来ないなら連絡しろよ?
〇〇:マジすまねぇ…
友達:ってか聞いてや。
〇〇:おう
友達:先週、〇〇が来なかった日さ
〇〇を待ってたらな。あの有名モデルの
山崎天さんにさ話しかけられたんだぜ?
〇〇:おぉ、良かったじゃん
友達:"俺と一緒に大学行きませんか"って
イケメン過ぎない?ってかその時。
俺初対面なんだけどな。(笑)
〇〇:ほう……
キャーキャー…
(遠くの方から黄色い歓声が聞こえる)
友達:この感じ山崎天じゃね?
ふぅ…俺友達だから挨拶してくるわ!
〇〇:流石に遠慮した方がいいんじゃ?
友達:行けるって、見とけやぁ!
(山崎の所へ向かう)
〇〇:ご武運を…(笑)
友達:よぉ!山崎!
山崎:……?
(不思議そうに友達を見つめ)
友達:お、俺だよ俺先週n((
『邪魔!どいて!』
『気安く天様の名前を呼ばないで!』
……女性の波にのまれていく……
〇〇:うわぉ…怖ぁ。
あれ?な、なんか……こっちに来てね?
……山崎は〇〇の方向へ歩いてくる…
〇〇:えっと…大丈夫だよな?
"俺、大学内では〇〇先輩に"
"話しかける隙がないんで…すみません"
〇〇:なんてこと言ってたし。
山崎:〇〇っ!
(固まってる〇〇に声をかける)
ギロッ……ジーッ
(山崎を取り巻く女性達が一気に)
(〇〇を睨みつける)
〇〇:っ……
山崎:君達、俺の〇〇をそんなに
見つめないでくれないかな?
『は、はいっ!すみません!』
……〇〇を見ないように各々目を逸らす…
山崎:〇〇!(〇〇に駆け寄る)
〇〇:ちょ…大学では話しかけれないって
山崎:言いましたけど?
〇〇:い、いや…今話しちゃってるよ?
山崎:恋人に話しかけれないとか
クソ喰らえですよ!はい。
(〇〇に何かを渡す)
〇〇:こ、これって……
山崎:俺の…手作りお弁当です…//
〇〇:やば…可愛いな。
山崎:ふぇっ…//
〇〇:あぁ…//な、なんでもない…//
山崎:もっと言って欲しいかも…//
〇〇:いいけど…って、そろそろ俺
講義室行かねぇと!
山崎:あ!俺もだ。
〇〇:じゃあ…またね?天っ。//
山崎:うんっ…またねっ…〇〇っ?//
恋愛初心者の二人にはもう少し人目を
気にすることをおすすめしたい……
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終わり。