見出し画像

映画「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」から感じた、未来への思い

先日、Fan's Voiceのオンライン試写会で
「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」を鑑賞した。

シモーヌという方を、全く知らなかった私は、映画のあらすじを読んで
とても興味が湧き、試写会へ応募した。

人口妊娠中絶の合法化を勝ち取った人。女性だけでなく、エイズ患者や囚人など、弱者たちの権利回復に務めた政治家。なんてスーパーヒーローな女性なのだろう。彼女がどんな人なのか、なぜ政治家になったのか。そんな興味から試写会に応募し、めでたく当選。

今回は、この映画で感じたことを、シモーヌという女性を紐解きながら、紹介する。


映画紹介とシモーヌの人気

あらすじ

7月28日(金)に公開される「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」
まずは簡単に、あらすじを紹介する。

1974年パリ、カトリック人口が多数を占め更に男性議員ばかりのフランス国会で、シモーヌ・ヴェイユ(エルザ・ジルベルスタイン)はレイプによる悲劇や違法な中絶手術の危険性、若いシングルマザーの現状を提示して「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」と圧倒的反対意見をはねのけ、後に彼女の名前を冠してヴェイユ法と呼ばれる中絶法を勝ち取った。1979年には女性初の欧州議会議長に選出され、大半が男性である理事たちの猛反対の中で、「女性の権利委員会」の設置を実現。女性だけではなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など弱き者たちの人権のために闘い、フランス人に最も敬愛された女性政治家。その信念を貫く不屈の意志は、かつてアウシュビッツ収容所に送られ、“死の行進”、両親と兄の死を経て、それでも生き抜いた壮絶な体験に培われたものだった-。

映画公式サイト イントロダクションより
https://simonemoviejp.com/

映画タイトルに「フランスに最も愛された政治家」とあるが、これは日本版の副題となる。彼女がなぜ、フランスに最も愛された人気者なのか。

彼女の人気を象徴する二つの出来事

彼女がフランスから支持を受けている、象徴的な出来事がある。

一つ目は、フランスの著名人・有名人ランキング(2016年)で第2位であること。フランスでは、知名度も人気度も抜群にあるという証拠だ。

そして二つ目は、パンテオンに埋葬された偉人であるということ。
では、パンテオンとは何なのか。

パンテオンとは、聖ジュヌヴィエーヴを祀っていた小高い丘の上の古いバジリカ聖堂を、18世紀にルイ15世の病気回復を祝って再建した神殿。

https://www.france.fr/ja/paris/article/3010

今日では、政治史や文化史に名を刻んだ人しか入られないお墓となっている。それだけでも、偉大なことを成し遂げた女性であることが分かる。

そんな偉大な女性、シモーヌについて、
彼女を物語る、三つのことを紹介する。

シモーヌを物語る三大要素

人口妊娠中絶を合法化

先でも述べたとおり、シモーヌは1974年、カトリック人口、そして男性議員ばかりのフランス国会において、人口妊娠中絶の合法化を勝ち取った。
映画でも、とても重要なシーンとして登場する。

圧倒的な反対意見が、シモーヌへ目紛しく浴びせられた。耐え難いであろう苦痛の中、勝ち取った合法化。可決後、多くの女性から感謝の言葉を浴びた彼女の表情に、私は胸を締め付けられた。

女性初の欧州議会議長

1979年には、女性初の欧州議会議長に就任した。議長就任後は、女性だけではなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など、弱者の権利回復に務めた。

映画ではこれ以外にも、保育制度など、今のフランスに欠かせない制度を作った人であることが、随所に散りばめられている。
彼女のおかげで、今のフランスがあることを、この映画を通じて理解することができた。

ホロコーストの生存者

この映画を単なる、政治家を目指す女性の人生のお話だと、私は思っていた。しかし、この映画の中核は、まさにこの物語ではないかと思う。

政治家として有名になった彼女は、自分がホロコーストの生還者であることを公表し、当時の状況を語り始めたのだ。

映画の流れは、主に政治家時代の彼女だが、その随所に、ホロコースト時代の彼女が登場する。政治家として、さまざまなことを成し遂げた彼女の根源にあるのは、ホロコースト時代の経験だ。

正直、ホロコースト時代の回想シーンは、目を覆いたくなる瞬間もある。
しかし、目を背けてはならない。彼女が政治家として走り続けられたのは、ホロコースト時代の思いがあるからだ。


追体験した、シモーヌの人生

過去から学び、未来へ繋げる

映画は、娯楽だけではない。
誰かの人生を追体験することで、生きる術を教えてくれる。

私はこの映画で、特に印象的なセリフがある。

「過去から学び、未来へ繋げる」

日本語字幕の台詞ではあるが、私が常日頃から思っていることと、全く同じだった。

日本も第二次世界大戦時は、誰かを傷つけたり、傷つけられたりした。そして、敗戦国となった。たくさんの苦しみの中、今日まで多くの人が生き続けた。これ以上、悲しい思いをしないためには、過去に起きた出来事を真正面から受け止め、学ばなければならない。そうでないと平和は訪れない、と私は思っているのだ。

シモーヌは、ホロコーストの経験から、女性や弱者の権利、尊厳を守ろうとした。欧州議会の場では、かつての敵であるドイツの方とともに、欧州の平和を守ろうとした。

彼女の知性とカリスマ性、そして愛が、たくさんの人たちを救ったに違いない。彼女のようにはなれないが、過去の出来事から学び、今、そして未来へ繋げればならないと、この映画を観て、強く感じた。

世界にはまだ、戦争がたくさん起こっている。
日本社会には、もっと弱者に寄り添うための法律が必要だと感じる。
シモーヌのような政治家がいれば、世界や社会は、さらに大きく変わるだろう。そんな未来を願いたくなる映画だ。

今週末は、ぜひ映画館へ足を運び、彼女の人生を追体験してほしい。
そして、その体験をシェアしてほしい。これからの未来を、一緒に考えていきたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?