ビジネススクールのTips 18(大きなトラブル発生時の対応)
トラブルが発生すると、頭が真っ白になり、何から手を付けていいかわからなくなってしまうことがあります。
このような状態を避けるために重要なことは、いつ発生するかわからなトラブルではありますが、「事前の行動計画の準備」とその際に「協力してくれる人たち」をつくっておけるかどうかです。
まず「準備なし」の場合、トラブルが発生すると、頭が真っ白になり何をすればいいのかわからない「行動」の空白期間が生まれてしまいます。ようやく冷静になったときに、方針や解決策を決め、はじめて行動に移ります。トラブルシューティングの基本は早期解決と言われていることを考えると、この何も前に進まないロスタイムは致命傷になる可能性があります。
ではどのような準備をすればいいのでしょうか。
発生するトラブルそのものは毎回異なるので、その個別内容の準備はできませんが、トラブルが発生した際に、どのように動くのかを考えておくことは可能です。具体的には、以下のような標準業務プロセスを決めておくというものになります。
1. 担当者による状況のまとめ→2. 関係者を集める→3. ファクトの洗い出しと整理
大きなトラブルの場合は、一人で解決できることはほとんどありません。そのため、トラブルの発生を各機能の関係者に伝えるとともに、現状を説明し、協力を仰ぐことが重要です。基本は担当者が5W1H(Why, What, Whom Where, When,How, How much )で簡単に状況をまとめ、関係者を集め説明します。集まった関係者は各機能の専門家ですので、解決に向け当初のラフなまとめでは抜けている内容を埋めてくれることがあります。また、この段階で、関係者の意見も聞きながら、最新のファクトの整理を一緒に行います。状況の説明は担当者がまず行いますが、合わせて関係者に意見をもらいながら肉付けしてもらう最終的なまとめは、同時に関係者全員のコンセンサスを得てコミットしてもらった内容として受け入れられるというメリットもあります。
4. 問題の本質を探索する
ファクトの整理まで進んだ後は、さらに関係者の力も借りながら、発生している問題の本質の探索を行います。トラブルが発生する場合は、当然根本的な問題が内在するため、、その本質の探索が重要です。今後二度と同じ問題が発生しないためにも、このプロセスは非常に重要です。ここまで掘り下げが行われれば、あとは方針や解決策を考えるフェーズに移ります。
5. 具体的方針および解決策の決定
上記の1~4までのプロセスを経て、最後は方針及び具体的解決策を決定します。この際に重要なことは、すぐにやることと中長期で解決のために動くこと、つまり時間軸を意識して内容を決定するということです。さらに、実際に実施することは、それぞれの関係者が担当する各機能が責任を持ってもらうのが良いです。そのため、集まってくれた関係者それぞれに何をやってもらうのかをしっかりと決定し、割り当てることが重要になります。トラブルシューティングの場合、状況が落ち着くまでは、当初は毎日(または毎週)集まって状況を共有することは必要です。その際に、日々解決に向けて進捗するためには、各担当者が自分の役割を認識し、しっかりと対応した上で、定期会議の場でそれぞれの進捗確認を進めることが早期解決には必須とです。
また状況が少し落ち着いた後には、少し頻度を減らし、中長期の解決策の実行を開始します。これは将来的に同じミスを起こさないために、緊急対応が一段落した後に忘れずに実施していきましょう。
上記の1~5までのプロセスをトラブル発生時には必ず行うと決め、発生後は半ば自動的にそのプロセスを開始します。
トラブル発生時は担当者も非常につらい時間を過ごすことになります。内容によっては「やってしまった」とか、「あの時にこうしていればこの問題は起こらなかったのではないか」という後悔の念が頭から離れないこともあるでしょう。ただ、状況を簡単にまとめたり(言語化、見える化)、関係者を集めてその内容を説明したりすると、徐々に事実を具体的に認識するようになり、目の前が真っ白な状況からから解放されていきます。言語化・見える化により状況がよく理解できること(問題の大きさや影響などがはっきりとわかってくる)、関係者の意見などにより具体的な方向性が見えてくること、そして何より問題解決に協力してくれるメンバーが周りにいる心強さなどを実感できることが、その理由です。
このようなプロセスで頭が真っ白なときから決められたプロセスと進めていくことで、全く準備をしていなかった状況と比較して、漏れなくかつ正確な情報に基づいた方針および具体的解決策の決定ができ、行動までの時間が最短で済ますことができます。
トラブルの発生は確かに不幸な出来事かもしれませんが、その解決のプロセスを通じて組織の一体感が強まったり、本当に自分のことを考え助けてくれるメンバーを確認したりすることもできます。つまるところ、仕事の成果は仲間との協力により創出できるという前提に立つと、このような機会に本当に協力してくれる仲間とであることは、それ以降の仕事にもプラスに働くことが多いのではないでしょうか。
また、「いい話に人は群がり(<1枚かませろ>的な発想)、ミスや失敗からは距離を置く」という傾向があります。辛いときに離れていく人も実は多くいますが、一方で助けてくれる人こそ信頼できる人だと思います。その人こそ本当に信頼できる人であることがわかります。その意味では、助けを求められたときには、それに協力する姿勢もビジネスパーソンとしては必要な要素かもしれません。