インドの半導事情
台湾の力晶積成電子製造(PSMC)とインドのタタ・エレクトロニクスが、インド西部グジャラート州に半導体工場を建設することで最終合意に達しました。このプロジェクトの総投資額は最大9100億ルピー(約1兆6000億円)と見込まれています。
この工場では、インドで初めて直径12インチのウエハーを用いて、電源管理やディスプレー向けなどの成熟世代の半導体を生産する予定です。この取り組みは、インドの半導体産業の発展に大きく寄与することが期待されています。
インドの半導体産業は、近年急速に発展しています。以下にその概要をまとめます:
1. 背景と現状
インドは長年にわたり半導体の国産化を目指してきましたが、インフラの欠如や技術的な課題から、これまで大規模な製造拠点はありませんでした。しかし、近年の政府の積極的な誘致策により、多くの多国籍企業がインドに研究開発センターを設立し、製造拠点の設立も進んでいます1。
2. 主要プロジェクト
Vedanta Foxconn Semiconductors Limited (VFSL): ベダンタとフォックスコンの合弁企業で、インド西部グジャラート州に半導体製造工場を建設中です。このプロジェクトは、28ナノメートルクラスの製品を生産し、10万人の雇用創出が期待されています
PSMCとタタ・エレクトロニクス: 台湾のPSMCとインドのタタ・エレクトロニクスが、グジャラート州に半導体工場を建設することで最終合意しました。総投資額は約1兆6000億円と見込まれています。
3. 政府の支援策
インド政府は、半導体産業の育成を目的とした包括的な政策プログラムを導入しています。これには、総額7,600億ルピー(約1兆2,160億円)の電子産業誘致・育成プログラムが含まれています2。また、インセンティブや特別な政策を通じて、半導体製造の促進を図っています2。
4. 市場の成長予測
インドの半導体市場は、2019年の227億ドル規模から2026年には640億ドルに達すると予測されています3。家電、通信、ITハードウェア、産業部門からの大きな需要が成長を牽引しています。
5. 課題と展望
技術移転やインフラ整備などの課題は依然として存在しますが、政府と企業の協力により、インドは半導体製造の重要な拠点となる可能性があります
1. インフラの未整備
電力供給の不安定さ: 半導体製造には安定した電力供給が不可欠ですが、インドでは停電が頻発しています
水供給の問題: 半導体製造には大量の脱イオン水が必要ですが、安定した供給が難しい状況です2。
2. サプライチェーンの未成熟
材料調達の困難さ: 半導体製造に必要な高純度ガスや化学薬品、ウエハーなどの材料の調達が難しい
物流の課題: 複雑なサプライチェーンの整備が進んでおらず、効率的な物流が確立されていません
3. 技術と人材の不足
熟練労働力の欠如: 半導体製造に必要な高度な技術を持つ労働力が不足しています
技術移転の課題: 海外企業との技術提携が進まない場合、最新技術の導入が遅れる可能性があります3。
4. 行政手続きの煩雑さ
規制と手続きの複雑さ: 半導体製造に関する規制や手続きが複雑で、プロジェクトの進行が遅れることがあります
5. 資金調達の問題
資金不足: 大規模な半導体製造施設の建設には巨額の投資が必要ですが、資金調達が難しい場合があります
これらの課題を克服するためには、政府の支援や海外企業との協力が不可欠です。インド政府は、インセンティブや特別な政策を通じてこれらの課題に対処しようとしています
補足
PSMC(Powerchip Semiconductor Manufacturing Corporation、力晶積成電子製造)は、台湾に本社を置く半導体ファウンドリ企業です。以下にPSMCの概要をまとめます:
会社概要
設立: 1998年
本社: 台湾
代表者: 黄崇仁(Frank C.Huang)
事業内容: スペシャリティーロジック、ニッチ市場向けメモリ、ディスクリートの半導体ファウンドリ事業。
主な特徴
製品: DRAMやNANDフラッシュメモリなどのメモリチップを製造しています。また、28nm以上の半導体を高品質で安価に大量生産するビジネスモデルを持っています。
規模: 台湾3位、世界6位の半導体ファウンドリ企業であり、3つの12インチと2つの8インチのウェハーラボを有しています4。
最新プロジェクト: インドのタタ・エレクトロニクスと共同で、インド西部グジャラート州に半導体工場を建設することに合意しました。総投資額は約1兆6000億円と見込まれています。
最近の動向
PSMCは、日本のSBIホールディングスと提携し、宮城県に新たな半導体工場を建設する計画も進行中です。このプロジェクトは、自動車や産業機器向けの半導体を2027年から量産する予定です。
PSMCは、最先端技術だけでなく、成熟世代の半導体製造にも強みを持ち、幅広い市場ニーズに対応しています。
最新の半導体ファウンドリのランキングは以下の通りです:
TSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Company): 世界最大のファウンドリ企業で、市場シェアは60%以上を占めています。
Samsung Foundry: 韓国のサムスン電子のファウンドリ部門で、TSMCに次ぐ規模を持っています。
SMIC (Semiconductor Manufacturing International Corporation): 中国最大のファウンドリ企業で、最近順位を上げています。
GlobalFoundries (GF): アメリカのファウンドリ企業で、主に自動車や産業機器向けの半導体を製造しています。
UMC (United Microelectronics Corporation): 台湾のファウンドリ企業で、特に28nmプロセスに強みがあります。
PSMC (Powerchip Semiconductor Manufacturing Corporation): 台湾のファウンドリ企業で、メモリチップの製造に特化しています。
Tower Semiconductor: イスラエルのファウンドリ企業で、アナログ半導体に強みがあります。
Hua Hong Semiconductor: 中国のファウンドリ企業で、主にディスクリート半導体を製造しています。
Nexchip: 中国のファウンドリ企業で、最近急成長しています。
Vanguard International Semiconductor (VIS): 台湾のファウンドリ企業で、主にディスクリート半導体を製造しています。
これらの企業は、世界の半導体市場で重要な役割を果たしています
タタ・エレクトロニクス(Tata Electronics Private Limited)は、インドの大手財閥タタ・グループの一員で、エレクトロニクス製造に特化した企業です。以下にその概要をまとめます:
会社概要
設立: 2020年
本社: インド
事業内容: 半導体製造、組み立て・テスト、エレクトロニクス製造サービス、設計サービスなど
主な特徴
半導体製造: タタ・エレクトロニクスは、インド国内に半導体の前工程と後工程の工場を建設しています。特に、グジャラート州に建設中の工場では、12インチのウエハーを用いた半導体製造が予定されています1。
パートナーシップ: 東京エレクトロンや台湾のPSMCと提携し、技術供与やインフラ構築を進めています。
社会貢献: 多くの女性社員を雇用し、医療、衛生、教育などの地域社会への貢献にも力を入れています。
最近の動向
インドでの半導体工場建設: タタ・エレクトロニクスは、台湾のPSMCと共同でインド西部グジャラート州に半導体工場を建設することで最終合意しました。総投資額は約1兆6000億円と見込まれています。
東京エレクトロンとの提携: 東京エレクトロンと戦略的パートナーシップを結び、インドの半導体エコシステムの構築を目指しています。
タタ・エレクトロニクスは、インドの半導体産業の発展に大きく寄与することが期待される企業です。
Vedanta Foxconn Semiconductors Limited (VFSL)は、インドのVedanta Groupと台湾のHon Hai Precision Industry(Foxconn)の合弁企業です。以下にその概要をまとめます:
会社概要
設立: 2022年
本社: インド
出資比率: Vedanta Groupが63%、Foxconnが37%。
主な特徴
プロジェクト: VFSLは、インド西部グジャラート州のドレラ特別投資地域(SIR)に半導体製造施設を設立する計画です。初期投資額は約6600億ルピー(約1兆2000億円)と見込まれています。
技術提携: GlobalFoundriesやSTMicroelectronicsと技術提携を結び、最新の半導体製造技術を導入しています1。
政府支援: インド政府およびグジャラート州政府からの支援を受けており、土地や電力料金に対する補助金などのインセンティブが提供されています。
最近の動向
製造開始予定: VFSLは、2027年前半に製造を開始する予定です。
インフラ整備: ドレラSIRには、66kV、200kV、400kVの変電所が設置され、2024年3月までにアーメダバード~ドレラ間の6車線高速道路が完成する予定です。
VFSLは、インド初の大規模な半導体製造プロジェクトとして、インドの半導体産業の発展に大きく寄与することが期待されています
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