半導体2

日本に新たな半導体工場を作る動きが活発になっている(図1)。TSMC(台湾)の熊本工場をはじめ、ラピダスやJSファウンドリなどのファウンドリ(製造請負サービスに特化した半導体メーカー)が生まれ、さらに台湾のPowerchipも日本にファウンドリを設立するための準備会社をSBIホールディングスと共同で設立する。急に日本の半導体工場が注目されるようになったが、これは、半導体産業がITサービスをテクノロジーで支えていることが、日本だけではなく世界中で認識されるようになったこととも強く関係する。つまり、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)、5Gなどの先端技術は半導体が提供しているのである。今回は日本の新たな半導体工場の現状を紹介し、次回は世界の新半導体工場について展望する。

日本に新たな半導体工場を作る動きが活発になっている(図1)。TSMC(台湾)の熊本工場をはじめ、ラピダスやJSファウンドリなどのファウンドリ(製造請負サービスに特化した半導体メーカー)が生まれ、さらに台湾のPowerchipも日本にファウンドリを設立するための準備会社をSBIホールディングスと共同で設立する。急に日本の半導体工場が注目されるようになったが、これは、半導体産業がITサービスをテクノロジーで支えていることが、日本だけではなく世界中で認識されるようになったこととも強く関係する。つまり、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)、5Gなどの先端技術は半導体が提供しているのである。今回は日本の新たな半導体工場の現状を紹介し、次回は世界の新半導体工場について展望する。

2022年から2023年にかけて、世界中で半導体の新工場を建設するというニュースが相次いでいる。台湾のTSMCをはじめ、Intel、Micron Technology、GlobalFoundriesのアメリカ勢、Infineon TechnologiesやRobert Bosch、STMicroelectronicsなどのヨーロッパ勢も続々と新工場を建設するというのだ。それも日本、アメリカ、ヨーロッパ、シンガポールやマレーシアなどの東南アジア、そして中国国内にも新工場を作ろうとしている。世界的な新工場建設の実態と、その理由や背景、そして今後の動向についてレポートする。

説明
JSファウンドリ
JSファンダリ(JS Foundry)は、日本初の独立系ファウンドリ専業会社で、アナログ・パワー半導体の受託製造を専門としています。以下にその主な特徴をまとめます:
設立背景: JSファンダリは、オン・セミコンダクター新潟株式会社から独立し、2022年12月1日に設立されました
事業内容: アナログ・パワー半導体の前処理、裏面処理、EPI積層、チップサイズパッケージなど、多岐にわたるファウンドリビジネスを手掛けています
技術力: 長年にわたって培ってきた優れた技術を基に、国内の半導体発展に貢献することを目的としています
共創の理念: 顧客と共に半導体を創り上げる「共創」の理念を掲げており、高品質かつ低コストでの製造を実現しています

アナログ・パワー半導体とは

アナログ・パワー半導体は、電力制御や変換を行うための半導体素子です。以下にその主な特徴と用途をまとめます:
高電圧・大電流の制御: パワー半導体は、高い電圧や大きな電流を扱うことができるため、電力のスイッチングや変換に使用されます。これにより、エネルギーロスを最小限に抑え、省エネルギーを実現します。
主な種類:
パワートランジスタ: 電気信号の増幅やスイッチングを行います。例として、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やパワーMOSFETがあります
ダイオード: 電気を一方向にしか流さないように制御します。整流作用や電圧制御に使用されます
サイリスタ: 直流と交流をスイッチングして電流制御を行います
用途: パワー半導体は、電力変換、モーター制御、電源管理、再生可能エネルギーシステムなど、幅広い分野で使用されています。特に、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及において重要な役割を果たしています。
アナログ半導体は、光や音、温度などのアナログ信号を処理・制御するための半導体であり、パワー半導体と組み合わせて使用されることが多いです
IGBT IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、パワー半導体の一種であり、MOSFETとバイポーラトランジスタの特性を組み合わせた素子です。以下にその主な特徴と動作原理を説明します:
特徴
高耐圧・大電流: IGBTは高い電圧と大きな電流を扱うことができるため、電力変換やモーター制御などの用途に適しています。
高速スイッチング: MOSFETの高速スイッチング特性を持ちつつ、バイポーラトランジスタの低オン抵抗を兼ね備えています。
効率的な電力制御: 高効率で電力を制御できるため、エネルギー損失を最小限に抑えることができます。
動作原理
IGBTは、MOSFETのゲート構造とバイポーラトランジスタの出力構造を組み合わせたもので、以下のように動作します:
ゲート制御: ゲートに電圧を印加すると、MOSFET部分がオンになり、チャネルが形成されます。
電流の流れ: チャネルを通じて電子が流れ、バイポーラトランジスタ部分がオンになります。これにより、コレクタからエミッタに大電流が流れます。
伝導度変調: バイポーラトランジスタ部分では、正孔と電子の両方がキャリアとして働き、ドリフト層の抵抗が低下します。これにより、高効率な電流伝導が可能になります。
応用例
IGBTは、以下のような多様な分野で使用されています:
電気自動車(EV): モーター制御や電力変換に使用されます。
再生可能エネルギー: 太陽光発電や風力発電のインバータに使用されます。
産業用機器: インバータやUPS(無停電電源装置)などに使用されます。
IGBTは、その高性能と多用途性から、現代の電力制御技術において重要な役割を果たしています。

ラピダス(Rapidus)は、日本の最先端半導体メーカーで、2022年8月に設立されました。以下にその主な特徴と背景をまとめます:
設立背景: ラピダスは、ソニー、トヨタ自動車、デンソー、キオクシア、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行など、日本国内の大手企業8社が出資して設立されました。日本政府も700億円の開発費を拠出しています。
目的: ラピダスは、2nm以下の先端ロジック半導体の開発・量産を目指しています。これにより、日本の半導体産業の復活と強化を図ることを目的としています。
技術提携: IBMとの提携により、GAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス)の製造技術をライセンス購入し、最先端技術の開発を進めています
工場建設: 北海道千歳市に工場を建設中で、2025年4月までに工場の建設を完了し、試作プロセスの稼働を目指しています
ラピダスは、日本の半導体産業の再興を目指し、世界最先端の技術を駆使して新たなイノベーションを推進しています。

ファウンドリ(Foundry)は、半導体製造業界において、他社が設計・開発した半導体デバイスや集積回路を受託製造する企業やサービスのことを指します。以下にその主な特徴と役割を説明します:
特徴
受託製造: ファウンドリは、自社で設計や開発を行わず、他社(ファブレス企業やIDM)からの依頼に基づいて製造を行います
高い技術力: 微細加工技術や高純度の製造環境を持ち、高品質な半導体製品を製造する能力があります
コスト効率: 半導体製造設備の初期投資や維持費が高いため、ファウンドリを利用することで、ファブレス企業はこれらのコストを削減できます
主なファウンドリ企業
TSMC(台湾積体電路製造): 世界最大のファウンドリ企業で、先端技術をリードしています
サムスン電子: メモリやロジックチップの製造で知られ、ファウンドリ事業も展開しています
GlobalFoundries: アメリカの大手ファウンドリ企業で、多様な半導体製品を製造しています
UMC(聯華電子): 台湾の大手ファウンドリ企業で、幅広い製品ラインを持っています3。
SMIC(中芯国際集成電路製造): 中国の主要ファウンドリ企業で、国内外の顧客にサービスを提供しています
メリット
柔軟な生産能力: ファウンドリは複数の顧客の製品を並行して製造するため、設備の稼働率が高く、効率的な生産が可能です
技術の共有: 最新の製造技術やプロセスを共有し、顧客の製品開発をサポートします
ファウンドリは、半導体業界において重要な役割を果たしており、特に先端技術の開発やコスト効率の向上に寄与しています。

Powerchipも日本にファウンドリを設立するための準備会社をSBIホールディングスと共同で設立

SBIホールディングスと台湾の半導体ファウンドリ大手Powerchip Semiconductor Manufacturing Corporation(PSMC)は、日本国内での半導体工場設立に向けた準備会社を共同で設立することに基本合意しました。この準備会社は、工場の建設地の選定や事業計画の策定、資金調達の計画などを進める役割を担います
PSMCは、台湾で3位、世界で6位のファウンドリ企業であり、特に車載向け半導体の製造に強みを持っています。この新しい工場は、日本の半導体産業の復活と強化に寄与することが期待されています。

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