日本の半導体産業の歴史と今後、パワー半導体業界


日本の半導体産業の歴史は、確かに栄光と挑戦の連続でした。1992年には、NEC、東芝、日立、富士通、三菱電機、松下電器産業といった日本企業が世界の半導体メーカーTop10に6社も名を連ねていました。しかし、その後の凋落は、複数の要因が絡み合っています。
日米半導体協定の影響: 日米半導体協定は、日本市場における海外製半導体のシェアを20%程度まで引き上げることを求め、日本企業の競争力を削ぐ一因となりました
産業構造の変化への対応遅れ: 半導体産業の水平分業化に対して、日本企業は垂直統合型のビジネスモデルに固執し、変化に適応するのが遅れました
総合電機メーカーの一部門としての限界: 半導体ビジネスに精通した経営トップが少なく、迅速かつ大胆な決定ができなかったことも、日本の半導体産業の凋落に影響を与えました
政府支援の不足: 韓国、台湾、中国などが政府の手厚い支援を受けているのに対し、日本の政府支援は規模や効果の面で不十分でした。凋落以前の投資はしっかりしていましたが、それが継続できなかったとされています
これらの要因が複合的に作用し、日本の半導体産業は市場シェアを大きく落としました。しかし、現在、日本政府は半導体産業の復興に向けて積極的な投資を行っており、新たな希望が見え始めています。特に「ラピダス」プロジェクトは、日本政府が4兆円を投じて進める半導体戦略の中核を成しており、再び世界のトップに立つための鍵を握っています
ポジティブな見方は、確かに重要です。過去の逆をやることで、日本の半導体産業は再び世界市場での地位を取り戻す可能性があります。政府の支援と産業界の努力が結実すれば、日本は再び半導体の大国としての地位を確立することができるでしょう
パワー半導体
日本企業は分散しており、インフィニオンやSTマイクロなどの海外企業が行っているような長期的な研究開発(R&D)や設備投資に対抗するのは難しい状況にあります
2022年のパワー半導体企業ランキングでは、日本勢がトップ10に5社ランクインしていますが、売上高の合計ではインフィニオンに及ばないというデータがあります3。これは、日本企業が個々には強いものの、集合としては海外の大手企業に比べて規模が小さいことを示しています。
しかし、日本のパワー半導体産業は、今後1~3年にわたって売上高の伸びが期待されており、経済産業省も補助金政策を打ち出すなど、業界再編に向けた動きを見せています。また、東芝デバイス&ストレージとロームが連携し、パワー半導体を共同生産することを発表するなど、日本企業間の協力も進んでいます。
インフィニオンは20億ユーロ以上を投じてワイドバンドギャップ半導体を強化し、マレーシアに新施設を建設する計画を進めており、これによりパワー半導体市場でのリーダーシップを加速しています。STマイクロも同様に、長期的なR&Dと設備投資を行っています。
日本もこれに対抗するためには、政府の支援と産業界の努力が必要です。日本のパワー半導体産業が海外勢との競争に勝ち抜くための戦略を真剣に検討し、実行に移すことが求められています。今後の動向に注目が集まりますね。

補足)パワー半導体は、電力(電気的エネルギー)を制御または変換するデバイスのことです。具体的には、1W以上の電力を制御できる半導体を指し、電力変換器に使用されることが多いです
パワー半導体の主な機能:
電圧や周波数の変更: モーターを精度良く低速から高速まで回すために使用されます。
直流(DC)を交流(AC)に変換、またはその逆: 例えば、太陽電池で発電した電気を送電網に送るために使用されます。
安定した電源の供給: 様々な家電製品や電気器具に安定した電源を供給するために不可欠です。
パワー半導体の種類:
ダイオード: 一方向のみに電流を流す整流作用を持ちます。
パワーMOSFET: 高電圧を制御するために設計されたMOSFETです。
IGBT: MOSFETとバイポーラトランジスタの長所を兼ね備え、高電圧と大電流を扱うことができます。
パワー半導体は、省エネ化や省電力化への意識が高まる中で、その需要が高まっています。電気自動車(EV)、太陽光発電、家電製品など、私たちの生活を支える多くの技術において、重要な役割を果たしています

補足1)インフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、自動車メーカーや各種産業向けに半導体を製造する多国籍企業です。特にパワー半導体分野、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やパワーMOSFET(金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタ)において、世界トップクラスの市場シェアを有しています
企業概要:
インフィニオンは、脱炭素化とデジタル化を推進する半導体ソリューションの世界的リーダーです。
2023年度の売上高は160億ユーロ超で、全世界の従業員数は約58,600人に上ります。
フランクフルト証券取引所(ティッカーシンボル:IFX)および米国の店頭市場OTCQXインターナショナルプレミア(ティッカーシンボル:IFNNY)に上場しています。
日常生活に欠かせない半導体を提供し、リアルとデジタルの世界をつなぐマイクロエレクトロニクスで、より良い未来の形成に貢献しています
インフィニオンは、効率的なエネルギー管理やスマートなモビリティ、セキュアでシームレスなコミュニケーションを可能にする半導体ソリューションを通じて、人々の生活を便利で安全、エコにすることを目指しています。また、日本法人としては、日本のお客様にサービスや製品を提供し、先進的な知見を取り入れた製品開発を行っています


1ユーロ🟰174円
46.569億ユーロ🟰465.69億ユーロ🟰8.1兆


STマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics)は、半導体の製造・販売を行う多国籍企業です。スイス・ジュネーヴに本社を置き、世界35カ国に拠点を持っています
企業概要:
STマイクロエレクトロニクスは、グローバルな半導体企業で、50,000名以上の従業員が働いています。
研究開発スタッフは9,500名以上おり、世界各国に80のセールス・オフィスを持ち、20万社以上の顧客をサポートしています。
2023年の売上は173億ドルに達し、主要工場は14工場あります。
自動車、産業、パーソナル電子機器、通信機器など、多岐にわたる分野で半導体ソリューションを提供しています。
技術と製品:
STマイクロエレクトロニクスは、スマートモビリティ、パワー&エネルギー、クラウド接続型自律デバイスなどの分野で革新的な半導体テクノロジーを開発しています。
また、サステナビリティを事業の中心に置き、環境的・社会的課題の解決に貢献するテクノロジーを開発しています。
STマイクロエレクトロニクスは、その先進的な技術と製品を通じて、よりスマートで環境に優しく、持続可能な未来の実現に貢献している企業です。Copilot が送信しました:
STマイクロエレクトロニクスは、幅広い半導体製品を提供しており、その主な製品には以下のようなものがあります:
特定用途の集積回路(ASIC、ASSP): 特定のアプリケーション向けにカスタマイズされた半導体です。
メモリー製品: フラッシュメモリーやEEPROMなどのデータ保存用半導体です。
マイクロコントローラ: 様々な電子機器の制御に使用される小型のコンピュータチップです。
車載用MCU: 自動車の電子制御ユニット(ECU)などに使用されるマイクロコントローラです。
アナログ回路: 電力管理ICなど、アナログ信号を処理する半導体です。
SiC製品「STPOWER」: シリコンカーバイド(SiC)を使用した高性能パワー半導体です。
MEMSセンサ: 加速度センサやジャイロセンサなど、物理的な動きを電気信号に変換するセンサです4。
これらの製品は、自動車、産業、パーソナルエレクトロニクス、通信機器など、多岐にわたる分野で使用されており、STマイクロエレクトロニクスの技術が私たちの生活のあらゆるシーンで活躍していることを示しています。


補足2)IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とパワーMOSFET(金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタ)は、高電圧・大電流を扱うためのスイッチング回路や、電動機の速度制御、電力変換装置などに広く使用されています
IGBTの具体的な用途:
電動機の速度制御: 電車やエレベーター、エアコンなどの速度を制御するために使用されます。
電力変換装置: 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーから得られる直流(DC)を交流(AC)に変換するインバーターに使われます。
電気自動車(EV): 電気自動車の駆動システムにおいて、バッテリーからのDCをモーターが使用するACに変換するために重要です。
パワーMOSFETの具体的な用途:
スイッチング電源: コンピューターやスマートフォンなどの電子機器において、電源のオン・オフを高速で行い、効率的な電力供給を実現します。
DC-DCコンバーター: 車載機器やポータブル機器において、バッテリーからの電圧を必要な電圧に変換するために使用されます。
家庭用電化製品: エアコンや冷蔵庫などの家電製品において、電力の効率的な制御を行うために利用されます
これらのデバイスは、エネルギー効率の良い電力制御を可能にし、省エネルギーと環境保護に貢献しています。また、これらの技術の進歩は、再生可能エネルギーの普及や電気自動車の開発にも重要な役割を果たしています。

補足3)
2022年のパワー半導体企業ランキングにおいて、日本の企業はトップ10内に5社がランクインしています。具体的なランキングは以下の通りです:
4位: 三菱電機
6位: ローム
7位: 東芝
8位: 富士電機
9位: ルネサスエレクトロニクス

さらに、トップ20には17位に日立製作所が入っています。ただし、これら日本企業の売上高の合計は、ランキングトップのインフィニオン・テクノロジーズには及ばない状況です。日本勢は欧米勢や中国勢との競争の中で、今後1~3年にわたって売上高の伸びが期待されているものの、同じ期間に欧米の有力企業も巨額な資金を背景にした生産能力の拡充や企業買収によって売上高を伸ばすことが予想されています
日本のパワー半導体業界は、グローバルな競争の中で重要な位置を占めており、今後の動向が注目されています。

補足4)インフィニオン・テクノロジーズのパワー半導体市場での位置付け

インフィニオン・テクノロジーズは、パワー半導体の分野で世界をリードする企業の一つです。彼らは特に、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やパワーMOSFET(金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタ)において、高い市場シェアを持っています1。
主な特徴と取り組み:
インフィニオンは、300ミリ薄型ウエハーを使用したパワー半導体チップの最先端工場をオーストリアのフィラッハに開設しました。これにより、パワーエレクトロニクスのグローバルな供給体制を強化しています
この新工場は、16億ユーロの投資により建設され、省エネを可能にする半導体チップの生産を行っており、気候目標達成に貢献する重要な要素となっています
インフィニオンの製品は、エネルギー効率の向上に貢献し、多くのアプリケーションでCO2排出量を最小限に抑えることができます。例えば、冷蔵庫のエネルギー消費量を40%削減することが可能です
市場での位置づけ:
インフィニオンは、エレクトロモビリティへの移行を可能にする製品として、自動車産業向けのパワー半導体サプライヤーとして市場をリードしています
また、中国のスマートフォン大手の小米科技(シャオミ)の電気自動車(EV)向けに2027年までに先端パワー半導体を供給することで合意しました
インフィニオンのパワー半導体は、自動車、データセンター、太陽光と風力の再生エネルギー生成などの分野で使用され、省エネと環境保護に大きく貢献しています。彼らの技術と製品は、デジタル化と電動化が加速する現代において、ますます重要な役割を果たしていくことでしょう

補足5)
東芝デバイス&ストレージとロームは、パワー半導体の供給確保計画を共同で進めています。この計画は経済産業省によって認定されたもので、両社がそれぞれの強みを活かしてパワー半導体の生産能力を拡大し、相互に補完しあう製造連携を行うことを目的としています1。
具体的には、ロームがSiC(炭化ケイ素)パワー半導体に、東芝デバイス&ストレージがSi(シリコン)パワー半導体に重点的に投資を行い、それぞれの生産能力を拡大します。これにより、自動車の電動化や産業機器の自動化・効率化など、パワー半導体の安定供給と性能向上が期待されています
この共同生産計画には、ローム株式会社、ラピスセミコンダクタ株式会社、東芝デバイス&ストレージ株式会社、加賀東芝エレクトロニクス株式会社が関与しており、事業総額は3,883億円に上ります。最大助成金額は1,294億円で、これは対象事業総額の1/3に相当します。生産場所はラピスセミコンダクタ宮崎第二工場(SiCパワー半導体、SiCウエハ)と加賀東芝エレクトロニクス(Siパワー半導体)です1。
この連携により、両社は国際的な競争力の向上を目指すとともに、国内サプライチェーンの強靭化に貢献することを目的としています。パワー半導体は、脱炭素社会やカーボンニュートラルの実現に向けて必要不可欠なデバイスであり、今後も継続的な需要拡大が見込まれているため、このような取り組みは非常に重要です

補足6)ラピダスプロジェクトは、日本政府が推進する半導体戦略の中心的な取り組みであり、2027年までに世界最先端の2ナノメートルのロジック半導体の量産を目指しています。このプロジェクトは、日本の半導体産業の復権と、国際競争力の回復を目的としており、以下のような特徴があります:
巨額の投資: 日本政府は約4兆円を半導体戦略に投じており、その一環としてラピダスプロジェクトが進行しています
先進技術の開発: 2ナノメートルプロセス技術は、現在の半導体技術の中でも最も先進的なものであり、AIやデータセンター、モバイルデバイスなど多くの分野での革新が期待されています
国内生産基盤の強化: 米中対立などの地政学的リスクを背景に、日本は国内での半導体製造基盤の強化を図っています。これにより、半導体の安定供給と経済安全保障が確保されることを目指しています
ラピダスプロジェクトは、北海道千歳市に工場を建設する計画であり、新千歳空港の近くに位置しています。この工場は、次世代半導体の量産を目指すラピダスの半導体工場の建設現場として選ばれました
このプロジェクトは、日本が半導体産業において再び世界の主要プレーヤーとなるための重要なステップです。国内外の技術パートナーシップを通じて、日本はグローバルな半導体供給網の中で重要な役割を果たすことを目指しています。また、半導体は安全保障にも直結する重要な戦略技術として位置づけられており、日本政府はこの分野における国際戦略を強化しています。ラピダスプロジェクトは、日本政府が4兆円を投じて進める野心的な半導体戦略の中核を成しており、2027年に世界最先端の2ナノメートルのロジック半導体の量産を目指しています。最新の情報によると、以下の進捗が報告されています:
ラピダスの半導体工場の建設は、北海道千歳市に位置しており、2023年9月に本格的な着工が始まりました
2024年5月時点で、工事は最盛期を迎えており、建築面積は約5万7000平方メートル、地上4階、高さ約31メートル、付属施設を含む延べ床面積は約19万8000平方メートルに及ぶ大規模なものです。
鹿島によると、2024年末には建物のほぼ半分が完成し、2025年11月には全工程を終える計画です。
このプロジェクトは、日本の半導体産業の再興と、国際競争力の回復を目指しており、米中対立という地政学的リスクの台頭を背景に、国内半導体製造基盤の強化が進められています。ラピダスの取り組みは、国が全面支援する国家プロジェクトであり、日本の半導体産業の逆転への起爆剤になると期待されています2。また、米IBMからの技術供与を受け、ラピダスのエンジニアたちはすでに技術を学んでいるとのことです
今後もラピダスプロジェクトの進捗には多くの注目が集まっており、日本の技術力と経済安全保障の要素を高めるための重要なステップとなっています。
補足7)インフィニオンは20億ユーロ以上を投じてワイドバンドギャップ半導体を強化し、マレーシアに新施設を建設する計画を進めており、これによりパワー半導体市場でのリーダーシップを加速 具体的に説明すると

インフィニオン・テクノロジーズは、ワイドバンドギャップ半導体の製造能力を増強し、パワー半導体市場でのリーダーシップを強化するために、マレーシアのクリムに新しい施設を建設する計画を進めています。この計画には20億ユーロ以上が投じられる予定です12。
計画の主要なポイント:
新施設は、SiC(炭化ケイ素)およびGaN(窒化ガリウム)をベースとした製品の製造に特化しています。
この拡張により、インフィニオンは年間20億ユーロの売上増を見込んでいます。
インフィニオンは、この新しい施設を通じて、自動車や産業用の約50億ユーロの新規案件の獲得を目指しています。
顧客からの約10億ユーロの前払いを含むコミットメントに支えられています。
この投資は、2030年までにSiCによる収益が年間約70億ユーロに上ると見込んでいます。
施設の特徴:
世界最大の200mm SiCパワーファブを建設することで、インフィニオンは30%のSiC市場シェア目標を支えます。
インフィニオンは、2025会計年度のSiCの売上高が目標の10億ユーロを上回ると確信しています。
自動車分野では、OEM6社を含む顧客にサービスを提供し、そのうち3社は中国企業です。
再生可能エネルギーの分野では、ソーラーエッジ社や中国の太陽光発電・蓄電システム大手3社などが顧客になっています。
この計画は、インフィニオンがパワー半導体市場でのリーダーシップを加速するための重要なステップであり、脱炭素化とデジタル化を推進する半導体ソリューションのグローバルリーダーとしての地位をさらに強化するものです

ワイドバンドギャップ半導体は、バンドギャップが広い半導体材料のことを指します。バンドギャップとは、価電子帯から伝導帯に電子が遷移するために必要なエネルギーのことで、この値が大きいほど、高温や高電圧での動作に優れ、高電力・高周波アプリケーションや高温環境での使用に適しています。
ワイドバンドギャップ半導体の特徴:
高い絶縁破壊電界強度: シリコン(Si)よりもはるかに高い耐圧が可能です。
高い熱伝導度: 効率的な熱管理が可能で、デバイスの冷却が容易になります。
高温での動作: 高温環境でも安定して動作することができます。
主な材料:
シリコンカーバイド(SiC): バンドギャップが3.26eVで、電子移動度や熱伝導度が高いです。
窒化ガリウム(GaN): バンドギャップが3.39eVで、高周波デバイスに適しています。
ダイヤモンド: バンドギャップが5.47eVで、最も高い絶縁破壊電界強度を持ちます。
これらの物性により、ワイドバンドギャップ半導体は、電気自動車(EV)の駆動系、太陽光発電のインバーター、高速充電器など、エネルギー効率が重要なアプリケーションで利用されています4。また、これらの半導体は、エネルギー損失の低減が急務であるため、今後の技術開発においても重要な役割を果たすと期待されています

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