偏愛している自分が好き
偏愛は人生
偏愛の始まりはオタクの始まり
私は生粋のオタクだ。
オタクとして最古の記憶は小学校2年生。
【美少女戦士セーラームーン】にハマった記憶だ。
全女子が好きだったはずのセーラームーン。
セーラームーンごっこなる遊びをするとか、アニメを毎週観るとか。
普通のこどもならおもちゃを買ってもらうくらいで満足するだろう。
しかしオタクは録画したアニメを毎日観ていた。
覚えたセリフでアニメを忠実に再現する遊びでは飽き足らず……
アニメブックなるものを祖母に買ってもらって隅から隅まで熟読する日々。
巻末のアニメーターとディレクターの対談。
キャラクターデザインラフ画。
スタッフ・キャスト一覧。
読めない漢字は分厚い漢和辞典で調べて読み込む。
意味がわからないところは鈍器のような広辞苑で調べる。
そうまでしてセーラームーンのことが知りたかった。
オタクとして偏愛を楽しむ
幼い頃は比べる対象がいなかったからわからなかったが、大きくなるにつれ自分のハマり方が尋常ではないらしい、とぼんやり気づく。
中学生になるころには、自分の生き方・ハマり方そのものがオタクだと思い知る出来事が増えた。
どうやらふつうの人は好きなマンガと出会っても、キャラクターの年表を作らないし、キャラクターのセリフからプロフィール帳を作らないらしい。
他県に住んでいる文通相手とひとりのキャラクターを掘り下げて2時間も長電話をしないし、FAXに作品やキャラクターへの愛を託して送り合うこともないのだそうだ。
正直、愕然とした。
どうやら私は特殊なハマり方をしている。
級友はドン引きだ。
受験勉強しろよ。
そんな声が聞こえてくる中学3年生の夏。
ついに私はインターネットのチャットルームなるものを知る。
文通のようなタイムラグもなく、全国のオタクとリアルタイムで語り合えるツールを手に入れてしまった。
よし、楽しもう!
エピソードを掘り下げて、同志と語り合い、作品やキャラクターへの理解と愛を深めてやる。
もちろん受験どころではない。
引き返せない沼の連続
セーラームーンにハマった時代にはなかった【推し】【沼】という言葉が、常に私の隣りにいる。
オタクは一過性の病気ではない。
受験だろうが身内の不幸だろうが初恋だろうが、状況に全く左右されない。
揺るぎないオタクとは不治の病。
一生付き合うべき持病だ。
結婚しようが出産しようが変わらない。
沼はあちらから向かってくる。
私が望まなくとも……
予想もしない衝動に突然襲われるのだから避けようもない。
逃げてもダメ。
治そうとしてもムダ。
つまり沼と推しのある人生だけが私の人生。
オタクは続くよどこまでも
偏愛していない人生はない
アイドル
俳優
バンドマン
少年マンガのキャラクター
ユーチューバー
歌手
ダンサー
声優
マンガ家
作家
ドラマのキャラクター
映画
音楽家
映像ディレクター
特撮
絶えずなにかの沼に浸かってきた。
彼氏がいない期間はあっても推しのいない期間は1ミリもないのだ。
課金する対象がいる。
推す対象がいる。
ゆえに私は生きている。
哲学してるぜ……
推しは今日も元気です
今の推しは音楽家だ。
たまにテレビにも出ていて音楽の配信もある。
実に課金しやすい推しだ。
なかには推させてくれない推しが存在する。
グッズも映像作品も音楽配信もなにも販売していない、推し。
あるのは数冊の単行本だけ……
もっと推させてくれよおおおお
課金させてくれよおおおお
仕方なく私は少ない既刊を各5冊ずつ購入して友人に配った。
布教もまた、愛。
お金を使い、時間を使い、脳みそを使い、今日も私は推しを推す。
新たな沼にハマって沈むのを待っている。
沈んだって大丈夫。
命に関わることはなにもない。
沼の底には次の沼の入口があるんだから。
30年オタクをしていて気がついたことがある。
推しの友達はだいたい推し。
推しのライバルだってだいたい推し。
つまり、全部推し。
推しがいるだけでクソみたいな世界が少しだけキレイに見える。
推しの存在が、最低より少しマシな世界に私を連れてゆく。
オタクは続くよどこまでも。
沼だって推しだってどこまでも続く。
際限ない偏愛ワールド。
私は偏愛とともにある。
Discord名:綾瀬そら
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