童話:石の巨人と滅びの島
昔々、海の真ん中に浮かぶ小さな島に、美しい森と豊かな資源を持つ土地がありました。島の人々は、大地からの恵みを分かち合い、平和に暮らしていました。
あるとき、長老たちは言いました。 「神々への感謝を示すため、巨大な石像を作ろう。我らの信仰と力を世に知らしめるのだ。」
こうして、島中の人々が石像作りに取り掛かりました。しかし、石像を作るには大量の木材が必要で、島の森は次々と切り倒されました。
未来を見た男の悲劇
一人の男が石像作りの仕事を怠け始めました。彼は木陰に座り、石を運ぶ人々を眺めながら言いました。 「私は未来を見た。このままでは森が消え、土が乾き、我々は飢えて滅びるのだ。」
男の言葉は長老たちの怒りを買いました。 「怠け者の戯言を聞く必要はない! 神々を侮辱する罪は重い。」
男は見せしめとして処刑されました。広場に集められた人々の前で拷問を受け、最後の息を引き取る間際にこう言いました。 「未来はお前たちを裁くだろう。」
森が消え、争いと狂気が始まる
男の死後も石像作りは続きました。やがて森は完全に消え去り、土壌は乾き、作物は育たなくなり、漁業に必要な木材も尽きました。食糧が減少する中で、人々の間で争いが始まり、島は内戦状態に陥りました。
争いは長期化し、多くの命が失われました。そして、食糧が完全に尽きると、人々は追い詰められ、ついに禁忌を犯しました。飢えた者たちは死者の肉を食べ、生き延びようとしたのです。やがて、カニバリズムは島中に広がり、狂気が島を覆いました。
勝利の代償
王を支持する者たちが勝利を収めた後も、状況は改善しませんでした。食糧が尽き、土壌は荒廃し、漁業に使う木材もなくなっていたのです。生き残った者たちは次々と餓死していきました。
王は空腹に苦しみながら倒れる前に、崩れかけた最後の石像を見上げ、呟きました。 「これが我らの信仰の証だ。しかし、それが何の意味を持つのか、もう分からぬ……。」
教訓
自分の役割を全うするだけでは、全体の崩壊を防ぐことはできません。