二人の関係
気になっている人がいる。
モーニングの時間、オレンジママレードと砂糖を多めに注文する人。
注文を頼むとすぐにノートパソコンを開き、何やらぶつぶつ言いながらキーボードを軽快にたたく人。
1人納得した時の
「ふふふん」♪
と今にも鼻歌を歌いそうな表情がとても好きで
意気地のない私にしては珍しく
話しかけようとしている。
カランコロン♪
「いらっしゃいませ。……あ、マイトンさんですか」
反射的に挨拶をしたものの
マイトンさんの姿を見て、現実に引き戻された。
そうだった。
こんな気持ちで遊べる立場じゃない。
「不満そうだね?……まぁ、今回は悪かったよ。もう社内ではしないよ」
マイトンさんが珍しく素直に謝った。
けど私はそれに喜べる心理状況ではなく、
少し後ろめたかった。
どうして?
…………
無鉄砲にここへ向かうマイトンさんを見て、放っておけなかった。
止めるではなく、ついてきてしまった私も無鉄砲なのだろう。
マイトンさんと私は一蓮托生なのだ。
私の
「異常なし」は、マイトンさんの質問を受けてしか発動しない。
私だけいても意味がないし、
マイトンさんが発動出来るわけでもない。
このふたりの関係に名前はまだない。
名前を付けるには2人は……
意気地がなさすぎる。
カランコロン♪
再びドアベルが鳴った。
今日は来客が多い。
マイトンさんは勝手にいつものソファへ行ってしまった。
「いらっしゃいませ。1名様ですね。テーブル席にされますか?」
「い、いや、カウンターで……」
「かしこまりました」
「あら、蒼林さんじゃないですか。この時間は珍しいですね」
マスターの小花さんがすぐに相手をしてくれて助かった。
私とマイトンさんに繋がりがあると知っている相手に会うのは初めてだ。
おそらく、あの後上司からの話の末、マイトンさんへ謝罪か何かを言いに来たのだろう。
“異常なし”
マイトンさん か 私 の都合の悪い事をなかった事にする魔法の呪文。
『死体が会社にあるのはまずいので、ないという事になる』
あの時やろうとしていた事は
『蒼林が私達の会話を聞き、
私達の関係に感づき、知ったのはまずいので
私達の会話を聞いてなかった、
マイトンさんから聞いた事もなかった事になる』
だった。
……せずに終わったが。
他にもいっぱいやってきたが
今の所、後からマズイものが現れたり
記憶を取り戻したりという事は起こっていない。
ずっと
二人だけで行動してきた。
あの日のマイトンさんの言葉を思い出す。
くすぐったい感情が胸を支配するが
と結局いつもこう締めくくるので
私からはなんとなく聞けないでいる。
陰で控えてる私にも聞こえてるのに
正直、少し
疲れては来ている。
小花さんが聞きたそうな顔をしているのに気づいてはいるが、事情が事情だけに話せない。
ここで、生活に支障のない“推し”でもつくってその疲れを癒そうと思っていたのだが
「ごちそうさまでした」
パソコンをしまい、レジに来る。
声を聞けただけで舞い上がりそうになるとか、子供かよ。
という一人ツッコミをしながら、冷静に応対する。
「ありがとうございました。またご来店くださいませ」
精一杯の笑顔をつくる。
最近気になりだしたその人を
店のドア前で見送った後、
そっとため息をついた。
その瞬間
「へー」
マイトンさんが私の後ろにいた。
「……何が、“へー”なんです?」
「別に?」
平坦な口調でそう言ったマイトンさんは
店を出るでもなく、再びソファへ座った。
私はマイトンさんから目を逸らす為に
厨房でランチ用のデザートの準備をすることにした。
「意気地なし」
※この物語はフィクションです※
※ワールドブルー株式会社で働く人達と、その周辺の人達の物語をみんなが勝手に書いていく物語です。
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『喫茶 花』のマスター小花さん🌸
オールグリーンがそう使われるとは思わなかった!最高🤣
蒼・・アオバヤシ?を危機に陥れたのはこちらがきっかけ。
蒼林くんは助かったけど、私(筆者)はピンチに(笑)
それがまた、楽しいんだから困ったもんだ(苦笑)
なんとか、つながりましたか、ね?