東証はTOPIXの銘柄数を現在の2140から2028年には約1200に絞り込む。
東証は、TOPIXの銘柄数を現在の2140から2028年には約1200に絞り込む予定である。しかし、この銘柄数の削減にはほとんど意味がない。過去10年間の株価上昇率(昨年末時点)を見てみると、TOPIXは81.7%、TOPIX500は80.9%、TOPIX100は82.1%と、これらはほぼ同じである。唯一、TOPIX Core30(30銘柄)が71.2%とやや低いが、全体的に大差はない。
TOPIXは1968年に株価動向を示す目的で作られたものであり、インデックスファンドの指標として作られたわけではない。そのため、銘柄数を減らすこと自体に大きな意義はない。もし銘柄数を減らしたいのであれば、TOPIX100をベンチマークとすれば十分である。
世界の株価指数算出事業は、MSCI、FTSE、S&Pの3社が寡占している。例えば、ダウ平均やS&P500はS&Pが算出している。GPIFなど公的年金は、外国株についてはMSCIをベンチマークにしているが、日本株についてはTOPIXをベンチマークとしている。理論的には、オール・カントリー・ワールド・インデックス(オルカン)と同じく、株式全体のベンチマークをMSCIにするべきだ。しかし、そうすると日本株の組入れ比率が5%に低下する(現在、GPIFの日本株比率は約50%)。また、東証の指数算出に関するライセンス収入も減る。こうした事情から、TOPIXの銘柄数削減という日本的な解決策が採用されたのである。
今朝の経済情報番組を見ていた際、識者が「銘柄数をもっと減らすべき」と言っていたが、何事も情報を鵜吞みにしないことが重要である。このような発言は、実際の市場動向や歴史的な経緯を踏まえた上での発言ではなく、単なる一意見に過ぎないことが多い。情報の受け取り方には注意が必要であり、特に投資に関わる決定をする際には、さまざまな視点から情報を吟味し、自分自身の判断を形成することが求められる。
TOPIXの銘柄数削減が本当に市場全体にどのような影響を与えるかを考える際には、単純に数値だけを見て判断するのではなく、その背景にある市場構造や投資家の行動、さらには国際的な投資動向などを総合的に考慮する必要がある。銘柄数を減らすことが投資家にとってどのようなメリットやデメリットをもたらすのか、またそれが長期的に見て日本市場にとってどのような影響を及ぼすのかを慎重に検討することが重要である。
さらに、銘柄数を削減することで期待される効果についても、具体的なデータやシミュレーションに基づいた検討が求められる。例えば、銘柄数が減少することで市場の流動性がどのように変化するのか、あるいは投資家の行動がどのように影響を受けるのかといった点について、詳しい分析が必要である。
日本市場がグローバルな投資環境の中で競争力を維持し、さらには強化していくためには、単なる数値の調整だけでなく、より本質的な改革や改善が求められる。これは、単にTOPIXの銘柄数を減らすことに留まらず、投資家にとって魅力的な市場環境を提供するための幅広い取り組みが必要であることを意味する。
また、東証の指数算出に関するライセンス収入の減少が懸念される中で、どのようにして新たな収益源を確保するのか、あるいは市場全体の発展に向けた持続可能なビジネスモデルを構築するのかといった視点も重要である。これらの課題に対して、具体的な戦略や施策を打ち出すことが、今後の日本市場の成長と発展にとって不可欠である。
総じて言えることは、TOPIXの銘柄数削減は一つの施策に過ぎず、それだけで市場の健全性や競争力を大きく改善することは難しいということである。むしろ、より広範な視点から市場の改革や改善を進めていくことが求められており、そのためには多くのステークホルダーが協力し合い、共通の目標に向かって努力することが必要である。