🇯🇵 相場として生き残っているのは、小売りと銀行賃金上昇＆外国人観光客　→　小売り長短金利差の拡大　→　銀行アベノミクス以降のセクターの動向　📈

アベノミクス以降の日本経済の変遷と市場の特徴

2012年末に発足した安倍晋三政権は、金融緩和、財政出動、成長戦略の「三本の矢」を柱とした「アベノミクス」を掲げました。この政策により、株式市場は活性化し、景気回復の兆しが見られました。一方で、経済の実態として、企業収益は改善したものの、個人消費や賃金上昇の面では十分な成果が得られない時期が続きました。その中で、小売りと銀行は異なる側面で持続的に市場で存在感を示しています。

小売りセクター：消費者行動と観光産業の変化を背景に

1. 国内消費者行動の変化

アベノミクス期には、企業の収益改善に伴い、一部の正社員の賃金が上昇しましたが、全体としては緩やかで、非正規雇用者の比率増加が消費の制約要因となりました。それでも、小売りセクターは消費者行動の変化に敏感に対応し、生き残りを図りました。
• ドラッグストアやディスカウントストアの台頭
家計の可処分所得が増えない中で、価格志向の強い消費者をターゲットにした業態が成長。特にドラッグストアは医薬品に加えて日用品や食品を扱うことで、地域密着型の便利さを提供しました。
• Eコマースの急拡大
楽天やAmazonなどのオンライン小売業者が躍進し、実店舗との競争が激化しました。これに対応する形で、大手小売業者もオンラインサービスを強化し、オムニチャネル戦略を推進しました。

2. 外国人観光客の増加

インバウンド需要の増加は、小売りセクターを活性化させる一大要因となりました。
• 観光客消費の牽引
ビザの緩和や円安効果により、訪日外国人観光客数は2012年の約830万人から2019年には約3200万人へと急増しました。百貨店や家電量販店、地方の観光地に至るまで、訪日客の「爆買い」が地方経済も含めた幅広いセクターを支えました。
• ポスト爆買いの多様化対応
2020年以降のコロナ禍により訪日客が減少しましたが、2023年以降、観光需要が復活。中国市場依存から脱却し、欧米や東南アジアの観光客をターゲットとした多様な商品展開が進みました。

3. 賃金上昇の影響

近年の物価上昇や企業業績の改善を受けて、2024年現在、賃金は上昇傾向にあります。この流れは、購買力の底上げとなり、小売りセクターにとって追い風となっています。特に、中所得層以上を対象としたプレミアム商品や体験型消費（例：デパートでの高級食材販売）は成長の一因です。

銀行セクター：収益構造改革と金利差を背景に

1. 長短金利差の拡大と金融緩和政策

アベノミクス初期には、日銀の大規模な金融緩和により、金利が極端に低い水準で推移しました。この環境下で銀行は、預貸金利差が縮小し、伝統的な利ざや収益モデルが困難に。
• 日銀政策の影響
マイナス金利政策（2016年導入）は銀行の利ざや縮小を一層加速させました。しかし、近年ではインフレ率の上昇を受け、日銀の金融緩和縮小観測が強まり、長短金利差が拡大し始めています。これにより、銀行の収益力は徐々に回復の兆しを見せています。

2. 地域銀行と都市銀行の収益多角化

銀行業界は、収益源の多角化に向けた動きを加速させました。
• 地域銀行の挑戦
地域密着型のリレーションシップバンキングを強化し、地元企業や中小企業向けの融資を拡充しました。また、地銀の統合・再編が進み、効率性の向上が図られました。
• 都市銀行の成長分野進出
みずほや三菱UFJなどの大手都市銀行は、国内市場の低成長を背景に、海外展開を積極化。東南アジア市場における買収や事業投資を通じて、新たな収益源を獲得しました。

3. デジタル化とフィンテックの台頭

金融サービスのデジタル化が進む中、銀行もまた競争環境に適応しました。
• フィンテック企業との協業
クラウド型の会計ソフトやスマートフォンを活用した融資サービスなど、フィンテック企業と提携してサービスを拡充する動きが見られました。
• デジタルバンクへの進化
各行が専用のアプリやオンラインサービスを強化し、若年層や地方在住者にも利便性を提供しました。

生き残る理由：小売りと銀行の共通点

1. 市場環境の変化への適応

小売りと銀行は、それぞれの業界で顧客ニーズや環境変化に柔軟に対応することで、生存力を高めました。消費者志向の変化やデジタル化、政策変更などに対する迅速な対応が鍵です。

2. 競争の激化とコスト効率化

激化する市場競争の中で、両セクターともコスト効率化を進め、利益率を改善しました。銀行はデジタル化による運営コスト削減、小売りは在庫管理の最適化などで効率性を追求しました。

3. 国内外市場での多様化戦略

国内市場に留まらず、海外市場や新しいビジネスモデルへの進出も成長を支える重要な要因となっています。例えば、銀行は海外投資、小売りは観光客需要に応えたマーケティング戦略を展開しています。

結論：アベノミクス後の勝者としての小売りと銀行

アベノミクス以降の10年を振り返ると、小売りと銀行は、日本経済の変動と政策の中で持続的に成長を遂げた代表的なセクターと言えます。小売りは国内外の消費者ニーズに即した戦略を展開し、銀行は低金利環境を乗り越えた収益構造の改革に成功しました。両者の成功には、環境変化に対する柔軟な対応、効率化の追求、そして新市場の開拓という共通の要因がありました。

これらのセクターが示すのは、どの時代においても、変化に対応し持続可能なビジネスモデルを築ける企業が生き残るという普遍的な事実です。これを踏まえ、日本経済全体がさらなる変革を遂げる中で、これらのセクターが引き続き進化する姿を見守りたいところです。