C’est très bon !#5
その日の夕方、夏鈴と別れた○○は、近くの牧場を訪れていた。ここは地元で有名な精肉店も併設しており、○○の家のレストランでも長年取引のある信頼の場所だった。店の入り口を開けると、奥から元気な声が聞こえてきた。
「は〜い!」
「あ!○○さん!いらっしゃい!」と顔を出したのは看板娘の愛季。○○より2歳下の彼女は、弟の世話をしながら家業を支える健気な子だ。○○とは幼い頃から顔なじみで、気軽に話せる仲だった。
「愛季!久しぶり。今日は肉買いに来たんだ。」
「何を探してるの?ジビエ?」
「いや、カルビだ。牛でいいやつない?」
「珍しいね〜焼肉でもするの?」愛季が興味津々に聞く。
「焼肉じゃないけど、何を作るかはこれから考えるよ。」
「じゃあ信州牛のいいカルビあるよ!何グラムいる?」
「とりあえず300グラムもらえる?」
愛季は手際よく肉を計量しながら言った。「お代はお店に請求でいい?」
「いや、今日はここで払う。」
「ふ〜ん。じゃあ新しいメニュー考えるわけじゃないんだね〜。何のために作るの?」
「なんでもいいだろ?」と○○は軽く誤魔化そうとするが、愛季は目を輝かせて詰め寄った。「ふ〜ん教えてくれたら割り引いてあげるのにな〜」
「夏鈴がコンクール前だから、そのために作るんだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、愛季はにやっと笑って値段を伝えた。「はい。4500円です!」
「高っ!いつもより高くない?」○○が笑いながら驚くと、愛季は悪戯っぽく答えた。
「へへへ。他の女の子のために作るんでしょ?その特別料金だよ!」
「まあいいや。とりあえずこれもらうね。これお金!」
「また来てよね〜!」
袋を受け取った○○は、急いで家へと帰り、カルビ料理の準備に取り掛かるのだった。