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23時の軽井沢#20

瑛紗は静かに微笑みながら、ゆっくりと話を続けた。


「まだ証拠はないけどね、私、和が怪しいと思っているんだ。」


○○は驚き、眉をひそめた。「和が?!どうして? あいつは昨日、事件があった時もギャラリーにいたし、それを俺は見ている。アリバイがあるよ?」


瑛紗は冷静な口調で応じた。「今回の店長さんの事件は毒殺。現場にいなくても犯行は可能だよ? しかも、和の絵に犯行を匂わせるような書き込みがあったんでしょ?」


「犯行を匂わせる…?」○○は一瞬思い出し、和の絵に書かれていた「次はここ」という赤い文字が脳裏をよぎった。


瑛紗はさらに話を進めた。「あの時間にギャラリーにいたのは、○○君と和ちゃんだけよ。和が他人の犯行に見せかけるために、自分でその書き込みをしたって考えるのが自然じゃない?」


○○は少し戸惑いながら、「そうかもしれないけど…でもその理屈だと、俺も犯人候補にならないか?」と反論した。


「○○君は違うよ。普段は東京に住んでいて、昨日軽井沢に戻ってきたんでしょ? そんな状況で、こんな計画的な犯罪はできないはず。」


その時、瑛紗は○○の肩を軽く押し、窓の外を指差した。「ほら、窓から外の道路を見てみて。和があなたのことを見張っているわ。」


○○は驚いて窓の外を覗き込んだ。電柱の影に、確かに和が隠れているのが見える。「ほんとだ…あいつ、なんでここにいるんだよ?」


瑛紗は少し含み笑いを浮かべながら言った。「○○君が一番近くにいるから、○○君にバレないように監視してるんじゃない?」


○○は困惑しながら頭をかいた。「うーん…でも、もしそれが本当なら、わざわざ俺を家に帰らせるかな? 一緒に行動していた方が疑われにくいだろ?」


瑛紗は少し不機嫌そうな声で言った。「随分と和の肩を持つのね。」


その言葉の後、瑛紗は○○に近寄り、体をもたれかけるようにしてきた。○○は急に距離が近づいたことに戸惑いながら、「池田さん、近いよ」と軽く注意した。


しかし、瑛紗はそのまま低く囁くように言った。「○○君、信じて。犯人は和だよ。」


○○は眉をひそめながら、疑問が浮かんだ。「待って…池田さん、どうして和の絵に描かれたことを知ってるんだ? あの書き込みについて知っているのは、俺と和と婦警の掛橋さん、それから書き込んだ本人だけのはずだよ?」


その瞬間、部屋の空気が一気に張り詰めた。瑛紗の表情が微かに変わったが、すぐに元の笑みを浮かべた。


「それはね…」と瑛紗が何かを言おうとした瞬間、○○の心に警戒心が走った。

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