23時の軽井沢#37
アルノの突然の登場にその場の空気は凍りついた。誰も言葉を発せずにいると、アルノが頬を膨らませながら口を開いた。
「みんな、こんなところに集まってるなんてズルいよ。私も誘ってよ〜」
和は困惑した顔でアルノを見つめ、「アルノさん…どうしてここに?」と訊ねる。
アルノはふわりと微笑み、「真相はもう全部、瑛紗から聞いたんでしょ?」
和は頷き、視線を逸らしながら「…はい」と答えた。すると○○が戸惑いながら訊いた。「僕が駅に着いたところから、ずっと尾行していたんですか?」
アルノは首を振って笑った。「まさか、車椅子でそんなことできるわけないじゃん(笑)。実はね、瑛紗と私、アプリでお互いの位置情報を共有してるの。だから瑛紗が○○の家で止まったのを見て、『もしかして』って思って来てみたの。そしたら和ちゃんも家に入っていくし、誰も出てこないから我慢できなくて(笑)」
その瞬間、和は感情が抑えきれず、涙を流しながらその場に土下座し、「アルノさん…本当にすみませんでした。謝っても許されることじゃないってわかってますが…」と声を震わせた。
だがアルノの顔は冷え冷えとした微笑みのまま。「泣きながら謝ったら許してもらえると思った?」
アルノは無言のままカバンから刃物を取り出し、和の首元に突き刺した。その場にいた全員が凍りつく。
「え!アルノ!どういうこと?傷つけたくないって言ってたじゃない!」瑛紗が叫ぶように言った。
「違うよ(笑)瑛紗は何もわかってない。本当は…この復讐だけは私が直接やりたかったの。」
その言葉と共に、アルノは和に向けて残酷な笑みを浮かべた。「これでやっと、私の復讐も完了だよ。首を刺したから、きっと和も私と同じ車椅子生活になるわね。どう?私と同じ下半身不随になれるなんて…ねえ、これって運命だと思わない?ははははは!」
○○が叫び声を上げ、「池田さん!早く救急車呼んで!」
瑛紗は震える手で携帯を取り出し、警察に通報し始める。
アルノは呆れたように○○を見つめ、「はぁ…やっぱり○○の心は最後まで和だけでいっぱいなんだね。」
○○は顔を歪めながら答えた。「ああ、やっぱり…俺は最後まであんたのこと好きになれなかったわ。」
その言葉にアルノの微笑みが消え、静かに涙が頬を伝った。